2023年7月度外食産業売上プラス14.2%…20か月連続の前年比プラス

2023/08/26 10:00

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日本フードサービス協会は2023年8月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2023年7月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス14.2%を示した。新型コロナウイルスの5類移行やマスク緩和などによる人の流れの増加と、インバウンドの回復傾向、好天で高気温が原因(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。

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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が226、店舗数は3万6584店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は減少、店舗数は増加している。

全業態すべてを合わせた2023年7月度売上状況は、前年同月比で114.2%となり、14.2%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で20か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日・土曜日は変わらずで、売上の観点ではプラスマイナイナスゼロ。気象環境では雨天日は東京・大阪ともに少なく、平均気温は東京・大阪ともに高く、客足への影響判断はプラスと判断できる。

新型コロナウイルス流行に関しての5類移行を見据えた動きや3月13日からのマスク着用の個人判断化、そしてインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これが売上増につながっている。さらに観光需要や好天や高気温も大きな底上げ要因に。結果として客数は全体では前年同月比でプラス6.6%を示した。一方で客単価はプラス7.2%となり、結果として総合売上はプラス14.2%に。

業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で29か月連続のプラス(プラス7.3%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「季節メニューや新商品、コールドドリンクが好調」と説明されている。

なおマクドナルド単体の2023年7月における営業成績はプラス6.6%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はマイナス2.2%、客単価はプラス9.0%と堅調な伸び。

牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス9.3%、客単価はプラス5.0%となり、売上はプラス14.8%。麺類は客数プラス8.9%、客単価はプラス9.5%となり、売上はプラス19.2%。麺類は「冷たい新商品が若年層や女性を中心に好評」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス8.3%。「「回転寿司」が都心部でのインバウンド回復」とある。

ファミリーレストラン部門は客数ではプラス11.5%、客単価はプラス5.4%、売上はプラス17.5%。新型コロナウイルス流行前との比較となる4年前同月比でも増加を示している(売上プラス4.2%)。

パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス36.0%、居酒屋の売上はプラス26.1%。部門全体では売上はプラス29.5%を示した。「気温上昇に伴う夏季キャンペーンもあり、ビール販売が好調。人流回復やインバウンド客の増加」「依然として店舗減少が影響し」とある。

ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス16.2%、客単価はプラス4.3%で売上はプラス12.1%を示した。「気温上昇に伴い、SCなど商業施設立地の店舗は好調も、一部の路面店では猛暑日など気温の高い日中に客足が鈍りがち」との説明がある。

今回月で77回目となるプレミアムフライデーの影響だが、解説コメントでは一切そのフレーズは確認できなかった。新型コロナウイルスの流行でそれどころではない、そもそも在宅勤務が増えているため実施する機会もないのが実情だろう。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年7月分)
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年7月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年7月)
↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年7月)

↑ 外食産業売上4年前同月比(業態別)(2023年7月)
↑ 外食産業売上4年前同月比(業態別)(2023年7月)

各種制限無く
5類移行などが
行楽・宴会需要を後押し。
好天・高気温が
季節メニューを底上げ。
2014年4月の消費税率改定に伴う消費性向の減退影響も直接的にはあまり生じなかった外食産業だが(今件各種公開値は税抜比較で行っているため、消費税率引き上げに伴う「税込の」売上上昇は、公開される業績動向には直接は影響を与えない)、2014年夏における天候の悪化、そして中国産鶏肉食材問題と2つのイレギュラー的なマイナス要素が足を引っ張り、むしろ状況は2014年夏以降は低迷感をぬぐえない状態が続いていた。特に後者は食材問題自身の影響に加え、それをきっかけとして業界の一部部門(ファストフード・洋食)における根本的な問題が露呈する形となった。大きな社会問題化した異物混入事件まで加わり、2014年夏以降大きなシェアを有するマクドナルドに相次いでいる状況に、ファストフード部門、さらには外食産業全体が多分に振り回されている感はあった。

2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比1割前後のアップを示している。

ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。

ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとは異なる様相が見えつつある。中食に多分に客を奪われている感はあるが、もう少し状況を眺めたいところ。客数の伸び悩みが顕著ではある。報告書でも「客足が伸びない最近の傾向」との表記があるほど。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。

吉呑み現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が展開している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

テーブルにもソーシャルディスタンス新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。

特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の3年前同月比では燦燦たる状況である。特にここ数か月の報告書でははっきりとした形で、人々の生活習慣が変わり夜間の外食忌避傾向や法人の居酒屋離れが強いままとなっている、と表記されているのは注目すべきところだ(今回月でようやく一部の戻りが確認されたようだが)。また宴会需要は中小規模のものは戻りを見せているが、店舗そのものの整理統合が進んでしまっているとのこと。実際、居酒屋は4年前同月比で店舗数がおよそ2/3にまで減ってしまっている。

次回月の2023年8月分では、今回月に続き行動制限などは無く、例年と比べても北海道や東北地方を中心に暑い日が続いており、客足の戻りは期待できる。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、売上そのものはともかく、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。




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