20歳未満は7%・50歳以上は37%…コンビニ来訪客の年齢階層別分布
2022/07/12 02:00
少子化と高齢化の人口構成の変化、さらに昨今では大量の団塊世代の定年退職に伴い、小売業界各方面でも商品やサービスの高齢層への注力度の引き上げの動きが見られるようになった。小売店舗でも高齢者の買物風景を見る機会が増えたと実感する人は多いはず。今回はセブン&アイホールディングスが毎年6月から7月にかけて最新版の公開を行う、同グループ企業各社の動向をまとめた【コーポレートアウトライン】の最新版(2021年度版)などを用い、セブン-イレブンを具体例としてコンビニ来訪客の年齢階層別分布について確認をしていくことにする。
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セブンイレブンではPOSシステムのデータを活用し、「来店客調査」などの情報を逐次収集し蓄積している(【セブン銀行とは?>お客さまの声から生まれた銀行(セブン銀行の言及ページ)】)。しかしこれは当然のことながら内部データのため一般公開はされておらず、大本のデータを取得することは不可能。だがそのごく一部はコーポレートアウトラインで公開され、その内容を知ることができる。先日発表された2022年2月期(2021年度)版のをはじめ、各年の資料を用いて取得可能な限り過去の値を逐次収集し、作成したのが次のグラフ。同時に総務省統計局の【人口推計】を基に、該当年分などの日本の総人口の年齢階層別人数比率を加え、まとめている。
↑ 来客の年齢階層別構成比(セブン-イレブン)
セブン-イレブンの非公開な内部データではもっと具体的な値があるに違いない。しかし公開データを調べた限りでは「年度の歯欠け」「年度によって%の表記が整数値まで」(今件グラフでは表示を統一するために、すべて整数化している)と、かなり精度の荒いものとなってしまった(直近でも2010年度以降2年おきの値が非公開、さらに2020年度以降は非公開が続いているため飛んでいる)。しかし状況は十分につかみとれる。
状況をざっと箇条書きにすると次の通りとなる。
(1店舗あたりの総来客数は漸増から横ばいの状態なので、高齢者は全体に占める比率・店舗あたり人数ともに増加)。
・人口構成比と比較するとコンビニの来客は20-40代の比率が大きく、20歳未満と50歳以上が小さい。コンビニは主に成人若年層から中年層が多用している実態が浮かび上がる。
・コンビニ来客の高齢層の増加傾向は人口そのもののの高齢層化、比率の変化と比較すると、増加する動きそのものは似ている。ただしこの数年に限るとコンビニ来客の高齢層費比率では加速感がある。
・20代までの「コンビニ離れ」傾向が顕著化している。
・20歳未満は2007年度を底に、わずかずつだが再び増加の気配があったが、2013年度以降は急速に減少している
・公開されている範囲での直近となる2019年度では50歳以上は最大値となる37%。コンビニに3人来客があれば1人以上は50歳以上。また前回年度の2017年度と比べると20歳未満と20代の割合が増えているが、一時的なイレギュラーによるものか、新型コロナウイルスの流行が少なからず影響している可能性はある(2019年度は2019年3月-2020年2月が対象期間)。
若年層のコンビニ離れ傾向は顕著で、年齢階層別構成比で見ると、20歳未満と20代の構成比を合わせても、この30年で4割足らずとなっている。長きにわたりリピーターとなりうる新しい若年層の利用がやせ細っているのは懸念材料には違いない。【スーパーの圧倒感、高齢者も少しずつコンビニを…単身世帯の過去25年間にわたる食料買い入れ先の移り変わり(最新)】などを見ると、若年単身者の食料品購入先としてのコンビニは、支出額構成比率が今世紀に入ってから減少する傾向があり、関連性が浮かび上がる。
他方40代以上の区切りで見ると、この層の割合は着実に増加(直近年度はわずかに減ったが)。【100円ショップ来訪客の世代】で紹介した100円ショップの「高齢者の来客頻度の高さ」と比べるとまだまだ割合は小さめだが(100円ショップでは40代以降で約6割を占めている)、今後人口構成比の変化とともに、確実に人数・客総数に占める比率双方とも増えていくものと想像できる。
この数年の動きとして「20歳未満層の漸増から急減」が目にとまる。比率の上では2007年度から2011年度にかけてゆるやかな増加にあり、「若年層のコンビニ離れ」との言葉が当てはまらない状況だった。理由としては「若年層向けのスイーツや食玩系アイテムの多数展開」「IT系サービスの導入」などいくつかの要因が考えられる。
ところが2013年度以降はその期待の星的存在の20歳未満の構成比率が減るトレンドに転じ、特に2015年度は前回分2013年度比で4%ポイントも低下する結果が出てしまった。直近の2019年度では20歳未満はプラス3%ポイント、20代もプラス1%ポイントと、流れに反して増えているが、上記にある通り単なるイレギュラーか、新型コロナウイルス流行による変化の可能性がある。もっとも今やコンビニに14人の来客があった場合、20歳未満はそのうち1人でしかない。
高齢者の比率増加の動きは、団塊世代の定年退職に伴うプライベート時間の増加によるコンビニ利用機会の増加、「買い物困難者」対策の意味合いも持つ(高齢者の人口比率が高い)地方へのコンビニの積極進出、各種サービスの多様化など、色々と(後付ながらも)説明ができる。しかしながら20歳未満の急速な減り方は(単純な人口構成比と比較しても)理由付けを探すのは難しい。カウンターコーヒー、そしてそれに連動する形によるドーナツなどの洋風粉菓子の積極的な導入、子供向けの商品(カードゲーム用カードや特典系景品)の展開で、子供のみ、あるいは親子連れの形で20歳未満の来客増加の機会は色々と整備されているのだが。
2022年公開分の2021年度版コーポレートアウトラインでは、残念ながら来客の年齢階層別構成比の開示はなかった。2023年公開分で新しいデータが出てくるものと思われるが、新型コロナウイルスの流行という社会様式を大きく変えた出来事によって、コンビニへの来客層がどのような変化を見せたのか、大いに気になるところではある。
今回データを精査するにあたり、併記されている数字を基に二次的な値を算出したのが次のグラフ。各階年齢層ごとに「全体比」ではなく具体的な人数を算出したもの。年度によって取得できる比率が整数までのために「ぶれ」が生じてしまうのは否めないが、そしてデータが一部欠けているために横軸の「年度」が等間隔ではないが、大まかな動きはつかみ取れる(2017年度分以降は平均来客数が非公開のため、公開されている年度をベースに概算で算出している)。
↑ セブン-イレブンにおける年齢階層別来客数(1日1店舗あたり、概算、人)
元々コンビニの主力客だった20歳未満と20代だが、前世紀末から漸次来客数を減らしていく。その年齢階層の人口そのものの減少も一因だが、それ以上に「コンビニ離れ」も少なからぬ要因と考えられる(同層の単純人口はこれほど急激には減っていない)。一方で30代以降は少しずつ数を増やし、特に50歳以上の伸びは急上昇のカーブを描く。そして2008年度には他の年齢階層を抜き、「50歳以上の来客数が一番多い」状態になる。
公開範囲における直近の2019年度分においては、前回の2017年度分と比べると20歳未満・20代は増え、30代以降が減っている。ここ数年の傾向とは反する動きのようで、興味深い。
コーポレートアウトラインの最新版でデータが行進されていた、来店頻度の実情は次の通り。
↑ 来店頻度(セブン-イレブン)(2021年度)
毎日足を運ぶ人が15%、週4-5日が18%、週2-3回が33%。週1以上では84%となる。コンビニでは単に商品を購入するだけでなく、ATMで入出金をしたり、公共料金の支払い手続きをしたり、チケットの購入・予約をしたり、さらに最近では多機能化が進んでいるマルチコピー機でコピーやファックスを使うなど、多様なサービスを利用することもあるため、来店頻度は高くなるのだろう。
コンビニ(今件はセブン‐イレブンを対象としているが、他のコンビニも大きな違いは無いだろう)はすでに40代以降が主役となっているのが実情。そして人口構成比を見れば、今後も40代以降、特に50歳以上の来客比率が増加するのは容易に想像ができる。昨今のコンビニにおける数々の商品展開、例えば和菓子系食品の積極開発、おつまみ系食材の提供開始、宅配サービスのスタートなどの動きを見ると、「常に目の前の、そしてこれからのお客を見ている」との点で、納得も行く次第ではある。
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