TCA発表値ベースだと153.6%…複数データを基にした携帯電話の普及率推移

2022/06/28 03:00

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今や生活必需品とすら定義されても何ら違和感を覚えない携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォン双方を合わせて。以下同)。その急速な性能の向上と普及率の上昇ぶりは、多様な周辺環境、状況の変化を連鎖反応的に引き起こしている。ソーシャルメディアの普及、音楽や映像などマルチメディア系エンターテインメントの消費性向の変化、いわゆる「歩きスマホ」問題など、数え上げればきりが無い。今回は社会にも大きな影響を与えるこの携帯電話の普及状況について、先日総務省が発表した【電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和3年度第4四半期(3月末)) 】や、以前内閣府発表の【消費動向調査】における最新公開値を反映させた【携帯電話の普及率現状(最新)】などを合わせ、携帯電話の普及率推移を複数の視点・調査結果から集約していくことにする。

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TCA発表値ベースでは153.6%


まずは別記事で毎月、2014年4月からは四半期間隔で状況の変化について確認中の、電気通信事業者協会(TCA)の契約数推移を用いて普及率を算出する。この値を日本の総人口で除算すれば、単純な「契約数上の」普及率は算出できる。日本の総人口は【総務省統計局内の「人口推計」】から該当する年の年末確定値を取得し、計算したのが次の図。ちなみにこの場合、老若男女すべてが計算対象となる。

↑ 携帯電話・自動車電話契約数と契約数を用いた普及率(毎年年末時点)
↑ 携帯電話・自動車電話契約数と契約数を用いた普及率(毎年年末時点)

年次ベースでグラフ化したが、今世紀に入ってからはいくぶん伸び率が低下していた。もっとも今件は、一様に右肩上がりの状況にあることに違いはない。自動車電話も含み、さらに用いている値が「契約数」で「保有・利用数」ではないこと(一人、あるいは1グループ、企業単位で複数保有している場合なども想定される)も考えると、普及率としてはあまり正確とはいえない。参考値程度に考えた方が無難だろう。

また、2011年以降をよく見ると、上昇カーブの勾配が再び大きくなる、つまり伸び率が増加している。これはひとえにスマートフォンの浸透によるもの。スマートフォンに買い替えをしても、従来型携帯電話と併用する人も少なくないため、契約数は単純利用人口以上になる。また各携帯電話会社がサービスとして提供している「親子割」「家族割」の浸透、さらにはスマートフォンへの買い替えの際に古い従来型携帯電話の契約を家族に引き継がせるサービスなども多分に貢献している。その上、TCAの契約数には携帯電話とは言い難い契約数(通信モジュールなど)も含まれるため、その値による底上げもある。

消費動向調査では単身92.0%・二人以上96.2%(世帯ベース)


続いて政府関連機関のデータをベースにしたグラフを作成し状況を確認する。まずは【内閣府の消費動向調査】の結果を用いたもの。2002年以降の年次(3月末)データではあるが、携帯電話の普及率が掲載されている(「主要耐久消費財等の長期時系列表(EXCEL形式で掲載)」から)。

↑ 携帯電話世帯普及率(消費動向調査、世帯種類別)
↑ 携帯電話世帯普及率(消費動向調査、世帯種類別)

縦軸の最下方が0%ではなく60%であることに注意。また「単身世帯」は2005年分からのデータ公開となっている。その上で確認すると、2004年から2005年にかけて(「二人以上世帯」では)3%ポイントほどの減少が見られる。この大きな減少の原因は不明。

可能性としては内閣府の消費動向調査では項目名が単純に「携帯電話」とのみ記されており、PHSの項目そのものが見当たらないことから、統計の上でPHSが含まれている可能性がある。この減少時期は、PHSの主力メーカーであるアステルの支部が次々にサービスを停止した時期とちょうど一致するからだ。

最新となる2022年3月のデータでは二人以上世帯が96.2%・単身世帯が92.0%。二人以上世帯では95%が事実上の天井という動きをしていたが、2016年に軽く超えた後、2021年以降は超える動きが続いている。もう少し伸びしろがあるようだ。他方、単身世帯も2021年以降は前年比で大きく底上げされる流れで、直近の2022年では90%を超える形となった。

総務省「電気通信サービスの契約数-」では160.9%


もう少し以前、具体的にはNTTドコモによる携帯電話市場の独占状態が崩れた1980年後半からのデータが欲しいところ。そこで総務省の「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」を基にしたグラフ…だが、これはすでに【携帯・PHSなど合わせて224.3%の普及率…総務省、2022年3月末時点の電話通信サービスの状況を発表(最新)】で作成済みなので、そのまま引用する。こちらは老若男女すべてを対象とし、携帯電話「のみ(PHSなど含まず)」のものである。

↑ 携帯電話人口普及率(PHSやBWA除く)(再録)
↑ 携帯電話人口普及率(PHSやBWA除く)(再録)

1995年まではほぼゼロに等しい値だった普及率も、それ以降は急速な上昇カーブを示し、10年後の2005年には約20倍の68.1%にまで上昇。中でも1999年前後以降の伸びが著しいが、この時期には「インターネット接続サービスの開始」「カメラ付携帯電話の登場」など、携帯電話の魅力的な機能が相次いで導入されている。これらが大きな成長の支えとなったことは疑う余地がない。

そして最新データ(2022年3月末時点)では160.9%。これは乳幼児からお年寄りまで全部を計算に含めた値である。



複数の携帯電話テレビの普及率はほぼ100%に達している。それと比べれば、一部調査結果ではまだ今件の数字は劣るものの、携帯電話の普及状況は、事実上「ほぼ全員」と見なしてもよい値に違いない。

携帯電話を利用する際の技術的なハードルは、テレビと比べれば高い。しかし普及率を見る限り「携帯電話保有者を対象にしているから、この結果は特異な事例であり一般には当てはまらない」との主張は、今や時代遅れとなりつつある。もっとも高齢層の保有率がまだ低めなのは事実。この点は引き続き問題視していく必要がある。

ただし、例えば市場調査において「携帯電話経由だから、高齢層のデータが反映されにくいので参考にならない」との主張は、筋が通らないものとなりつつある。固定電話やテレビにおいては、若年層で似たような現象(年齢階層間の格差)が生じているのは否めないが、それらの弊害は個々世代の普及率などを元にウェイトバックを行えば、ある程度解消される。それと同じ手法を用いればよいまでの話でしかない。


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