消費支出の4.24%・じわりと増加する携帯電話代負担…電話料金と家計支出に占める割合

2022/06/23 02:00

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携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォンの双方。以下同)が人々の生活において欠かせぬ存在となり、利用層がますます広域化し、それこそ老若男女を問わずに利用されるようになるに連れ、その携帯電話の利用によって生じる金銭的負担は当然増加する。昨今では従来型携帯電話から、より負担が大きいスマートフォンへの世代シフトも起き、それも負担増の一端として影響を与えている。それでは実態としてどれほどの金額が使われ、家計にどの程度の負担・影響を与えているのだろうか。その点について総務省が2022年5月27日に発表した「通信利用動向調査」の公開値などを用い、検証していくことにする(【発表ページ:通信利用動向調査】)。

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今調査の調査要項は先行記事【光回線は58.2%、携帯電話回線は56.2%…自宅パソコンのインターネット接続回線の種類(最新)】で解説済み。必要な場合はそちらを参考のこと。…とはいえ今件では「通信利用動向調査」はあくまでもきっかけにすぎず、実内容としては【総務省の家計調査(総世帯データ)】を用いている。このデータより電話通信料と世帯消費支出を抽出した上で、各種値を当方で自己算出し、検証を行う。なお「世帯消費支出」とは税金や社会保険料を除外した、「世帯維持に必要な支出」を意味している。

まずは電話通信料の推移。固定電話(据置型の電話。IP電話なども含む)通信料は毎年減少している。携帯電話の利用が増え、固定電話の利用者そのものが減少しているのに加え、IP電話やCATVサービスによる電話の普及で、利用料金が抑えられているのも理由の一つ。最近では固定電話そのものが無い世帯も増えており、それも固定電話料金平均額減少の一因となる。

一方移動電話通信料は利便性の向上などを受けて携帯電話の普及率が底上げされ、その分増加を示している。また、冒頭で触れている通り単体の通信料も、従来型携帯電話からスマートフォンへと利用端末機種のメインがシフトするに連れ、増額に拍車がかかることになる。

今件グラフのカバー範囲、2003年以降では、2005年にイレギュラーがあったものの、概して通信料総額は漸増、そしてその中でも移動電話通信料が額・比率ともに増加傾向にある。ただし2008年以降は伸びが緩やかになり、2010年は(リーマンショックの影響もあるのだろう)わずかながら総額、そして移動電話通信料単体額も前年比からマイナスを示す場面を見せている。

もっとも2014年以降はスマートフォンの普及に伴い、移動電話通信料は大きく増加の一途をたどっており、それに伴い電話通信料総額も上乗せされている。ただし直近数年に限れば移動電話通信料の増加分以上に、固定電話通信量の減少分が大きく、電通通信料総額はほぼ横ばいを示す形となっている。

↑ 電話通信料(総世帯、年間、円)
↑ 電話通信料(総世帯、年間、円)

他方、世帯消費支出は収入・可処分所得の漸減(【直近では実収入52万2572円…収入と税金の変化(家計調査報告(家計収支編))(最新)】で解説済み。社会保険料の増大が大きな要因だが、同時に高齢者世帯の構成比率増加も小さからぬ要因)などを受け、微減を続けている。電話通信料は漸増、世帯消費支出は漸減となれば、当然「世帯消費支出に占める電話通信料の比率」は少しずつ増加の傾向を示すことになる。

直近の2021年においては世帯消費支出は前年比で増加、そして電話通信料は減少し、比率は4.24%となり、前年比で0.11%ポイント減となった。新型コロナウイルスの流行により外出などの大型支出機会が減ったため世帯消費支出が大きく減った2020年と比べ、少しではあるが世帯消費支出は増加の動きを示している。

↑ 世帯消費支出および世帯消費支出に占める電話通信料の割合(総世帯、年間、円・%)
↑ 世帯消費支出および世帯消費支出に占める電話通信料の割合(総世帯、年間、円・%)

電話通信料の金額、消費支出に対する比率、さらには家計への精神的な負担のプレッシャーがともに上昇傾向にあることに違いはなく、自分自身の利用はもちろん、保護者が子供に携帯電話を持たせる際にも、料金関連でより厳しい目を向けるのも当然となる。何しろ子供の大半は、子供自身が使った携帯電話の料金を自分のこづかいからは支払わず、保護者任せにしているのだから。

↑ 自分のおこづかいで携帯電話(スマートフォン含む)の使用料を支払っているか(2015年、無回答を除いて再計算)(おこづかいをもらっている人限定)
↑ 自分のおこづかいで携帯電話(スマートフォン含む)の使用料を支払っているか(2015年、無回答を除いて再計算)(おこづかいをもらっている人限定)(【携帯電話料金とおこづかいの関係を探る】から再録)

もちろん携帯電話会社各社でも、定額制の利用を勧めるなど、対応策を講じている。

↑ 5Gギガホ プレミアの事例(NTTドコモ)
↑ 5Gギガホ プレミアの事例(NTTドコモ)

上記はNTTドコモによる定額サービスの一つ「5Gギガホ プレミア」の料金体系事例(【料金プランについて 5Gギガホ プレミア】)。月額定額料5200円でスマートフォンの定額通信が使い放題になるパケット定額サービスてある。

この類の定額制度は頻繁に内容が改編、追加されるため、利用者本人が気が付かないうちにその制度が旧態化し、より便利でお値打ちな制度が施行されている事例は多々ある。より効率的、負担が軽い料金体系を利用し続けるため、逐次利用プランの見直しは必要だろう。

また昨今ではいわゆる「格安スマホ」(MVNO(仮装移動体通信業者)が提供しているSIMカード(格安SIM)を用いたスマートフォン)も急速に普及しはじめている。スマートフォンを使いたいが料金体系を考えると躊躇していた人の新規調達、通常のスマートフォンの利用料金で頭を抱えていた人などが乗り換えるケースなど、状況はさまざま。今後さらに普及が進むであろうことは容易に想像ができよう。



多機能性を誇るスマートフォンの普及に伴い、携帯電話はこれまで以上に便利なツールとして、日常生活においては必要不可欠な存在となりつつある。これは平時はもちろん非常時でも変わらず、その重要性は先の震災でも実体験した人も多いはず。それだけに、一度使い始めたらその利用を止めるのは難しい。上記のような料金体系を巧みに使い、少しでも負担を減らしたいものである。

一方で、インターネットにアクセスできる機動性の高い携帯電話の有意義性は十分以上に認識しながら、スマートフォンクラスの充実した機能を求めない層も一定率存在するのは事実。コストパフォーマンスでそろばん勘定をした場合、従来型携帯電話クラスの機能の方が割が合うと判断する次第である。これらの層の需要に応え、かつ今後部品不足が深刻化する従来型携帯電話の代わりとして、OSなどはスマートフォンのものを用い、形状や機能は極力従来型携帯電話を踏襲し、料金体系も従来型のものをそのまま使える、あるいはそれに近いプランを用意する、「ガラホ」なるものが複数社から展開を始められている。また上記で説明した「格安スマホ」も今後大きな勢力となることだろう。

なお今件に関する検証は、より詳しい区分をした上での精査を【電話料金と家計支出に占める割合を詳しく(最新)】にて行っている。併せてご覧いただければ幸いではある。


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