昼食代削減33.2%、水筒持参22.7%…サラリーマンのこづかい防衛作戦
2022/07/04 02:00
多くのサラリーマンにとってこづかいはもっとも身近で、自分自身に大きな直接的影響を与える金銭問題となる。そのこづかいが自分の望む額でない場合(大抵の場合願望は満たされることはなく、そして人の欲望は天井知らずである)、多様な工夫を凝らし、節約をすることになる。今回は新生銀行が毎年発表している、サラリーマンのこづかい事情を調査した定点観測の報告書の最新版にあたる「2022年サラリーマンのお小遣い調査」などを基に、サラリーマンにおけるこづかいの防衛作戦の実態を見ていくことにする(【発表リリース:男性会社員のお小遣い額は昨年比微減の38642円、女性会社員は減少の33278円-「2022年会社員のお小遣い調査」結果について】)。
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節約方法は「昼食代を削る」「飲む回数を減らす」「水筒を持参する」
今調査の調査要件などは先行解説記事【前年比68円減の3万8642円…2022年のサラリーマンこづかい事情(最新)】にあるので、そちらで確認のこと。
さて今報告書に関する先行記事にある通り、サラリーマンの直近2022年における平均こづかい額は3万8642円(月額)となり、昨年と比べて減少してしまった。
↑ サラリーマンの平均こづかい額(月額、年齢階層別、円)(再録)
個々の金銭感覚や消費実情はそれぞれだが、この額では不足する人もかなりいる。必要経費に近い昼食代、携帯電話料金などを差し引くと、自分の自由意思をある程度以上反映できる余剰資金にどれだけ残せるかを考えれば、誰もが納得できるはず。
「こづかいが足りない、首が回らない」。その際、どのような工夫・節約で「こづかい防衛」を果たしているのだろうか。やりくりをしている人は全体で7割強となった。
↑ こづかい面で最近やりくりをしていることがある人(サラリーマン)(2022年)
そこでやりくりをしている人に限定し、上位項目について年齢階層別に区分し、グラフ化したのが次の図。全体、そして各階層でも「昼食代(を削る)」がもっとも多く、3割台の結果が出た。
↑ こづかい面における自衛策(やりくりをしているサラリーマン限定、複数回答、対処する項目、一部、年齢階層別)(2022年)
30代の昼食代節約率は36.1%、50代は37.7%と、他の年齢階層より高め。出費が何かとかさむため、日々使うことになる昼食代へ注意を払う人が多いということか。
「飲む回数(を減らす)」は全体で24.9%。サラリーマンにとっては昼食同様、数少ない憩いの場、息抜きの時間であることから、それを減らさねばならないのはよほどの苦痛に違いない。40-50代で高い値が出ているが、付き合いなどで飲む回数が多い年齢階層であろうことから、それを減らすのは苦渋の決断に違いない。
続く回答は「水筒持参」で全体では22.7%。20-40代が低く、50代は高い値。同じ持参の「弁当持参」よりも値が高めなのは(30代ではむしろ「弁当持参」の方が高いが)、弁当を作る・作ってもらうよりも気軽に用意できるからだろう。その「弁当持参」では20代が一番高い値を示しているのは意外ではある。既婚率が高く子供がいる可能性も高い、つまり子供の弁当作りの際に一緒に作ってもらえる機会が多いであろう30-40代で高い値が出るのなら、すぐに事情は理解できるのだが。
「衝動買い(を)避ける」は全体で21.4%だが、50代は高めの24.6%。ちょっとしたもののはずみ、勢いに任せてサービスを受けたり商品を購入してしまう行動を、できるだけセーブする心がけ。普段衝動買いの機会が多い人ほど、それをひかえる・止めることでこづかい防衛の効果が出ることを考えれば、効果がある手段として多くの人が選択しているのも道理は通る。20-30代の値が低めなのは、衝動買いは仕方がないとあきらめているのかもしれない。
「少しでも歩く」「安物買い」は全体で1割台。特に「安物買い」は年齢階層別では50代がもっとも高い値を示しており、40代とともに「少しでも歩く」より高い。「衝動買い(を)避ける」でも50代は年齢階層別では一番高い値を示しており、買うものの値段へのこだわりが強いのかもしれない。他方「少しでも歩く」は年齢階層別では20-30代が最も高い値を示している。差し迫った状況下になければ、少しぐらい時間をかけても交通費を使わずに徒歩で行き来した方が、節約につながるとの考え方なのだろう。例えば電車通勤の人は最寄駅ではなく、少々離れた駅まで歩いて利用するなどが想定できる。健康増進の観点でこの選択を行う人も多いはずだ。
節約してても足りない、その時は
出費がかさむ、あるいは支出したいものがある、しかし節約しただけではどうしても足りない。その場合、どのようにしてその資金をねん出するのか。サラリーマン諸氏におけるもっとも多くの人が同意した回答は、「使わずに我慢」だった。6割台後半の人が「こづかいが足りない時は我慢して使わない」と答えている。
↑ サラリーマンにおけるこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、一部、年齢階層別)(2022年)
後述するが「使わずに我慢」は数年ほど前の景況感の悪化時には、増加の傾向を示していた。こづかい面では「サラリーマン」ならぬ「ガマ(ン)リーマン」的な状況だったといえる。もっと、減少に転じた昨今でも他の項目と比べれば、群を抜いて高い値を示していることに違いはない。そしてこの数年では再び増加の気配がある。
次いで多いのは「預貯金取り崩し」「家計からねん出」。不足理由次第だが、一時的な出費、突発事項による不足の場合(例えば友達の結婚式へのお呼ばれ)ならば、それも仕方あるまい。
2013年調査分から項目に加わった「副収入」(ポイントサイト、株式投資、FXやネットオークションなど)は7.3%。ねん出できる点で、意外に多いものだと感心させられる。これらの手段は必ずしも「収入」が手に入るとは限らないからだ。むしろさらにこづかいが減る可能性も十分にある。
このねん出方法の上位陣、気になる項目につき、経年変化を見たのが次のグラフ。
↑ サラリーマンのこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、注目項目)
「預貯金取り崩し」「家計からねん出」「クレカ利用」のような、他方面から融通する方法は中期的に減少している。他方「使わずに我慢」は2011年から2012年にかけて大きく増加した後はおおよそ高止まりにある。この上昇が始まった2011年は、こづかい額が大きく減少した2010年の翌年にあたり、こづかい実額の大削減を受けて、サラリーマンにおいて心境の大きな変化が生じたことを示している。具体的には「やりくりしてもどうにかなる額ではないので、あきらめよう」といったところか。またこの数年は増加の動きにあるのが気になるところ。消費税率引き上げや新型コロナウイルスの流行がこづかい不足につながり、しかし手の打ちようがないために我慢するケースが増えているのかもしれない。
出費上の我慢は浪費を防げるとの考え方もできるが、同時にストレスは溜まる。浪費を奨励するわけではないが、2/3強が「足りなかったら我慢する」との状況は、健全か否かについて判断に苦しむレベルである。見方を変えればこの値が、2010年当時の50%台にまで低下すれば、サラリーマンのこづかい事情も改善の兆しが見えてくると考えればよいのだろうか。あるいはサラリーマンの心情そのものに大きな変化が生じ、この値はこの水準のまま半固定されてしまうかもしれないが。
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