メールにチャットにソーシャルメディア…小中高校生のコミュニケーションツールの利用状況
2022/06/07 02:00
不特定多数と容易に意思疎通ができるインフラとなるインターネットと、そのインターネットにいつでもどこからでもアクセス可能な携帯電話、中でも機能が充実したスマートフォンの浸透により、未成年者の間でもインターネットによるコミュニケーションは急速に普及しつつある。その利用状況について、今回は内閣府が2022年3月31日付で報告書を発表した、【令和3年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果】の公開値から、現状を確認していくことにする。
スポンサードリンク
今調査に関する調査要項は先行記事の【インターネット利用端末は小学生では家庭用ゲーム機、中高生ではスマートフォン(最新)】を参考のこと。また本来今記事は2014年に掲載した、「青少年のインターネット利用環境実態調査」を元にした電子メールを中心に利用状況を確認する【やりとりは携帯電話メインで…小中高校生のメール利用状況をグラフ化してみる(2014年)】の更新版となるはずであった。しかし2014年調査実施・2015年掲載分の調査以降は各ツール、端末の利用状況に対応する形で調査様式が大きく変更され、コミュニケーション系サービスの詳細区分が無くなり、電子メールやメッセンジャー、チャット、ソーシャルメディア(Facebook、ツイッター、mixiなど)などの意思疎通サービスをすべてまとめて「コミュニケーション」との区分で取り扱う形となった(さらに2021年調査実施・2022年掲載分以降は「投稿やメッセージ交換をする(メールやチャットを含む)」と簡易表現化されている)。そこで今回はその「コミュニケーション」ツールの利用状況を見ていくことにする。
次に示すのは小中高校生が主に使っている、インターネットへのアクセス機器となるスマートフォン、従来型携帯電話、自宅用のパソコンやタブレット型端末、家庭用ゲーム機を利用している人における、コミュニケーションツールを利用している人の割合。例えば全体でスマートフォンの値は76.0%とあるので、小中高校生合わせてスマートフォンでインターネットを使っている人のうち76.0%は、その端末でメールやソーシャルメディアなどを使っていると回答したことになる。頻度は問われておらず、回答者の認識で「使っている」と判断したものであることに注意。
なお従来型携帯電話を用いてインターネットを利用している人はごく少数で、統計の上でぶれが生じやすくなっているので注意が必要。例えば高校生ならば男子が3人、女子は5人でしかない。
↑ コミュニケーションツールの利用状況(該当端末でインターネット利用者限定、機種別)(2021年)
該当端末でインターネットを利用している人におけるツール利用率であることから、端末そのものの利用率は影響を与えないものの、自宅用のパソコンやタブレット型端末ではおおよそ高学年の方が高い値を示している。パソコンは保護者の監視の下で使われているか、保護者と共有のものを利用しており、コミュニケーション系のツールは使いにくい実態が表れている。年上になると自前で調達している場合や、子供のプライバシーに配慮する保護者の事例が出てくると考えると道理は通る。
従来型携帯電話は小中学生では男子よりも女子の方が値は高い(高校生は統計上のぶれの結果だろう)。元々従来型携帯電話がスマートフォンと比べて機能が限られており、コミュニケーションツール利用の専用機的な使われ方をされているのに加え、防犯用として保護者との連絡ツールとして用いられ、電子メールなどを使っているからだと考えられる。女子の値が高いのは、その防犯用の使われ方をしているであろうことを想起させるものではある。
スマートフォンは小学生では保護者からコミュニケーションツールの利用を差し止められている場合もあってか、値は低めで、従来型携帯電話よりも低い。しかし中学生となると8割前後に跳ね上がり、高校生では8-9割台となる。具体的にどのようなツールが使われているか確認したいところだが、2013年分までのような電子メール、ソーシャルメディア、チャット系サービスとの区分は無く、確認は不可能。
これについて各端末そのものの利用率を考慮し、各属性全体に占める比率を算出したのが次のグラフ。例えば小学生全体のスマートフォンは17.9%とあるので、小学生全体において17.9%はスマートフォンでコミュニケーションツールを利用していることになる。
↑ コミュニケーションツールの利用状況(各属性全体比、機種別)(2021年)
元々自宅用のパソコンやタブレット型端末はインターネット利用者内でも利用率が低かったが、加えて端末そのものの利用率が低いので、全体に占める利用状況はさらに低いものとなる。高校生でも自宅用のパソコンやタブレット型端末でコミュニケーションをしている人は1割に満たない(男子に限れば12.2%と1割台になるが)。
従来型携帯電話は小学生では1割前後だが、中学生以降は数%にとどまってしまう。端末そのものの利用が少ないのが大きな要因。他方スマートフォンは中学生ですでに5-6割台、高校生になると8-9割台に達する。スマートフォン利用者限定ではなく、高校生全体で83.9%、女子高生に限れば88.4%が、スマートフォンでコミュニケーションをしている現状は、ほんの2、3年前まではとても考えられなかった図式に違いない。無論、従来型携帯電話による電子メールからのシフトとの形になるのだが。
またインターネットにおける各種サービスの中でも、コミュニケーションツールは利用頻度が高い。そのツールにおいて利用端末のほとんどがスマートフォンであり、自宅用のパソコンやタブレット型端末があまり使われていない実情は、「若年層のパソコン、キーボード離れ」を印象付けさせる一つの結果ともいえよう。
やはり気になるのは「コミュニケーションツール」の具体的なサービス毎の利用状況だが、残念ながら「青少年のインターネット利用環境実態調査」ではその詳細を確認できない。同じような特性を持つ調査としては総務省情報通信政策研究所が毎年実施している複数の調査において、比較的利用されているサービスを具体的に挙げてチェックを実施している。
今件は「各端末で小中高校生がどの程度意思疎通をしているのか」の状況把握ができればよしとし、具体的なサービス利用状況は他の調査に任せるのがよさそうだ。
■関連記事:
【LINE、Twitter、Facebook…小中高校生における携帯での3大ソーシャルメディア類の利用状況】
【「あなたはLINEを使っていない、なぜだ!?」「不要だからさ」なLINE未使用事情】
【パソコンと携帯電話、どちらでソーシャルメディアを使ってる?(2015年)(最新)】
スポンサードリンク