連休や新型コロナへの対応変更、インバウンド需要などで観光需要好調……2023年5月度のコンビニ売上高は既存店が5.3%のプラス、15か月連続
2023/06/20 14:00
日本フランチャイズチェーン協会は2023年6月20日に、コンビニエンスストアの2023年5月度分統計調査月報を、同協会公式サイト上で公開した。その内容によると協会加盟コンビニの同月度の売上高は既存店前年同月比でプラス5.3%となり、15か月連続のプラスを示すこととなった。5月としては新型コロナウイルスの流行で実施されていた行動制限が4年ぶりになかったのに加え、新型コロナウイルスの取り扱いが5類に移行したこと、さらにインバウンドの増加もあり、観光需要が回復、おにぎり、カウンター商材、菓子、ソフトドリンク、アルコール飲料、アイスクリームなどが好調となった。結果として来店客数・客単価ともに底上げされた(【日本フランチャイズチェーン協会公式ページ】)。
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今調査の概要、調査対象企業などの詳細、分析記事のバックナンバーは、過去の記事をまとめたページ【コンビニエンスストア(日本フランチャイズチェーン協会発表)】上で解説済み。詳しくはそちらを参照のこと。
主要項目における前年同月比は次の通りとなる。
全店ベース……+5.4%
既存店ベース…+5.3%
●店舗数(前年同月比)
−0.3%
●来店客数:既存店は5か月連続のプラス、全店も5か月連続のプラス
全店ベース……+2.1%
既存店ベース…+1.9%
●平均客単価(税別):既存店は8か月連続のプラス、全店も8か月連続のプラス
全店ベース……+3.3%(713.2円)
既存店ベース…+3.3%(716.6円)
●商品構成別売上前年同月比(既存店ベース)
日配食品……+5.8%
加工食品……+9.3%
非食品………+2.2%
サービス……+1.8%
合計…………+5.3%
※既存店……1年以上営業中の店舗を指す(店舗増加による底上げでの数字上の誤差を防げる)
今回月は新型コロナウイルス感染症流行流行による外出忌避や在宅勤務傾向の高まりは継続しているものの、行動制限がなかったこと、感染症法における新型コロナウイルスの取り扱いをこれまでの新型インフルエンザなど感染症(2類相当)から5類に移行したこと、インバウンドが増加したことなどで人の流れが増え、インバウンドなども含めて観光需要が回復し、おにぎり、カウンター商材、菓子、ソフトドリンク、アルコール飲料、アイスクリームなどの外食・中食需要が拡大した。結果として、来店客数と客単価はともにプラス、当然売上高もプラスの結果に落ち着いた。
商品構成別ではすべてがプラスに。旅行関係の各種チケットや乗車券、航空券、宿泊券がかかわるサービスがプラスなのも納得ではある。
ここ数年来懸念されていた雑誌の売上の減退、集客力の縮小は継続中で、歩みを止めるようには見えない。もっとも最近では下落ぶりは小休止、あるいは底打ちの状況にあるようで、報告書の言及に雑誌の売上が著しく落ちたなどの文言は今回月も含め、ここしばらくは見られなくなっている。雑誌の売上の影響力そのものが、コンビニにおいては考慮に値しないほどの値にとどまっているのが現状かもしれない。どのみち新型コロナウイルスの流行で外出機会(他人との不用意な接触リスク)を控えるようにと諭されていることから、雑誌の見定めをするためだけにコンビニに足を運ぶ人も以前と比べれば減っているだろう。感染リスクを考慮すると立ち読みも敬遠されるに違いない(あるいは感染リスクを大義名分として立ち読み自身が禁止されている可能性もある)。
数年前まではコンビニの集客と客単価の主軸であった雑誌とたばこ。これらは時代の流れの中で、その勢いを確実に減じている。双方とも業界全体、商品そのものの特性や周辺環境の変化に伴う勢力の変化であり、今後復権の可能性も低い。
たばこと雑誌それぞれ単独の動向を知りたいところだが、日本フランチャイズチェーン協会の月次レポートではそれを推し量ることはできない。ただ今回月は前年同月のたばこ値上げ直後の買い控えとの比較となるので、プラスに動いたものと思われる。他方、年次ベースなら、紙巻たばこは大手コンビニが発表しているアニュアルレポート、雑誌ならば「出版物販売額の実態」を通して概況を推測することはできる(【コンビニの出版物販売額(全体編)(最新)】)。
たばこは機会があるたびに税負担の上乗せが論議され、実施されており、それに伴いたばこ自身の価格も引き上げられている。健康志向による忌避圧力も勢いを増すばかりとなり、今後も縮退する方向性に変化はない。ただし加熱式たばこが現時点ではその減少分を補っており、今後の動向の見通しはつきにくい。
一方雑誌に関しては価値観の多様化や電子雑誌の進出、すき間時間の活用の仕方の変化を受け、やはり規模の縮小は避けられそうにないが、コンビニにおける同じ出版物として今件月次報告書では取り上げられることはまずなかった書籍に関して、一部チェーン店で新しい動きが生じている。
詳しくは【コンビニの出版物販売額(前編:各社編)(2016年)(最新)】で説明しているが、スリーエフで書籍を中心としたミニ書店化形態が売上・集客の点で成果が出たことから、今後さらにそのスタイルの拡大が明言されている。またローソンでも【ローソンの書籍棚設置店舗が4000店舗にまで拡大していた件】にある通り専用の書籍棚を設置する店舗が4000店を超えたと公式に発表され、それなりの成果を示していることが確認できる。
一時期は総撤退の気配すら見受けられたコンビニの雑誌群も、一部で戻し、再配置の気配もあり、コンビニ側も手探りの状態であることがうかがえる。駅の売店がコンビニ化(コンビニチェーンによる運営店舗の展開)するに伴い、鉄道利用者による雑誌へのアプローチの仕方も変化を遂げており、今後の動向に注目が集まっている。セブン-イレブンが継続的に「街の本屋さん」を自称し、ネット経由で書籍の調達をする受け皿を推進し続けているのも注目に値する。
他方、【セブンとローソンが「成人向け雑誌」の取り扱いを中止するとの話について】にもある通り、大手コンビニが相次ぎ「成人向け雑誌」と自己定義する領域の雑誌の取り扱い中止を表明しており、今後この動きが雑誌の売上、さらには客数や他の商品の売上にどのような影響をおよぼすことになるのかが気がかりではある。恐らくはすでに少なからぬ直接、さらには集客力という観点での間接的なマイナスの影響が出ているはずだが。
各種サービス(情報端末やカウンター経由)の提供や、カウンターで提供されるいれたてコーヒーをはじめとする新鮮味あふれる日配食品は順調に成長を続けているが、今なおあくなき探求は続けられている。昨今の報告書におけるコメントでも好調さに関する言及が常連化しているように、中食に関する需要はこの数年大きく増加しており、それが具体的な形で小売各方面に現れるようになっている。高齢化や少数世帯化による需要の増加、技術進歩などによる提供商品種類の多様化が相乗効果を示し、ポジティブな意味でのスパイラル現象を引き起こしている。時間や手間を簡略化し、より楽しい食生活を受給する対価としてコンビニやスーパーの食品を選択するという、新しいライフスタイルの浸透といえる。エンゲル係数の上昇は、この要因が大きい。
一方で昨今では24時間営業をはじめとしたコンビニのこれまでの基本方針・施策に疑問符が投げかけられるようになった。特に運用する従業員の労働負担の大きさや金銭的な負荷で問題視される事例が見受けられる。状況改善の施策の一例として挙げられている、営業時間の変化が生じれば、当然売上はその分減ることになる。またレジの自動化の話もあり、実証実験も積極的に進められている。売上には影響が生じるだろうか。
今回月は新型コロナウイルスの5類移行などで客単価が底上げされ、来店客数も増え、結果として売上がプラスを示す形となった。来月発表分の2023年6月では東日本などで平年より暑さを覚える気候となっているが、一方で降水量はほぼ全国で平年と比べて多いため、天候における影響は相殺されてさほどのものではない模様。どのような結果となるだろうか。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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