総額1880万円、金利低下で定期が減り普通預貯金が増える…貯蓄の種類別現在高

2022/06/03 02:00

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お金がさまざまな物品やサービスを代替しうる、しかも場所をほとんど取らずに時を越えて蓄積できる存在であることから、蓄財は将来(のアクシデント)に備えた保険的な役割をも果たしていることになる。単純に現金をそのまま手元に置くのが一番と考える人もいるが、現在では多様な手段による貯蓄ができるようになっている。今回は2022年5月10日付で2021年分の速報値が発表された総務省統計局の家計調査における「貯蓄・負債編」の公開値などを基に、各家計(二人以上世帯)における、さまざまな種類別の貯蓄額の推移を通じ、貯蓄スタイルの現状や過去からの流れを確認していくことにする(【家計調査報告(貯蓄・負債編)-年平均結果速報-(二人以上の世帯)】)。

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増える預貯金、有価証券も価額は上昇したが


今記事における世帯種類区分で「勤労者世帯」は世帯主が勤労者の世帯を意味する。また「貯蓄」は貯蓄額のみで負債の足し引きはしない。例えば貯金が100万円、借金が1億円あったとしても、その世帯の貯蓄額はプラス100万円で、9900万円のマイナスではない。

最初に示すのは、二人以上世帯における貯蓄の内情(家計調査の貯蓄・負債編は二人以上世帯のみで、単身世帯は調査対象外)。各年の貯蓄現在高積み上げグラフ、そして各項目の金額推移を折れ線グラフで示す。

なお2021年分から普通銀行とゆうちょ銀行の区分がなくなり、「普通銀行など」と「郵便貯金銀行」が「通貨性預貯金」に、「定期性預貯金(普通銀行など)」と「定期性預貯金(郵便貯金銀行)」が「定期性預貯金」として公開される形となってしまっている。今グラフでは2021年分においては「普通銀行など」は「普通銀行など」と「郵便貯金銀行」の合算値、「定期性預貯金(普通銀行など)」は「定期性預貯金(普通銀行など)」と「定期性預貯金(郵便貯金銀行)」の合算値を反映させている。「普通銀行など」「定期性預貯金(普通銀行など)」が2021年に急激に値を増やしたわけではない。

↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯、万円)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯、万円)(積み上げグラフ)

↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯、万円)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯、万円)(各種類別折れ線グラフ)

・「保険見直し」の流行や運用利回りの低迷を背景に「生命保険など」は漸減継続。

・「貯蓄から投資へ」の動きで2007年までは「有価証券」が増加した。しかし2007年に勃発した金融危機による株価低迷で大きな評価減が発生したこと、リスク資産からの逃避も拍車をかけ、大幅に減少継続。2013年以降はようやく株価の復調に伴い評価額が上昇したことを受け、増加に。しかし2017年以降は株価低迷とともに減少へ。2020年でようやく回復か。

・「定期性預貯金」は低利回りから漸減傾向にあった。しかし低リスクさが評価され、金融危機ぼっ発の2007年以降は漸増。普通銀行への預金も増えていた。一方普通銀行預金をはじめとした手堅い種類の貯蓄増加は、全体に占める高齢者(=低リスク志向)の比率が増加しているのも一因。昨今ではさらなる低金利化で流動性上の弱点との引き換えによる利息のメリットがほぼ無くなったことから、「定期性預貯金」は減り、「普通銀行など」の普通預貯金がさらに増加している。

直近の2021年では「有価証券」は前年比で増加、「普通銀行など」(合算値)は増加。「定期性預貯金」も増加している。合算値となったため前年との単純比較は難しいが、種類を問わず貯蓄は増えたようだ。

勤労者世帯に限定すると


これを勤労者世帯(就業者が世帯主。役員や年金生活者など大きめの資産を持つ人が世帯主の世帯は除く)に限定し、再構築したのが次のグラフ。積み上げグラフでは縦軸はあえて上記グラフと同じとして、比較しやすいようにした(折れ線グラフは読みにくくなるので、縦軸の区切りは最適化している)。

↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)(積み上げグラフ)

↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)(項目別・折れ線グラフ)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄額(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)(項目別・折れ線グラフ)(各種類別折れ線グラフ)

・「保険見直し」、運用利回りの低迷を背景に「生命保険など」は漸減継続
・2007年までは「有価証券」が増加。しかし2007年の金融危機で株価低迷がきっかけで、以降は大幅に減少継続。ただし2013年以降は持ち直す。もっとも額面は二人以上世帯全体と比べれば少なく、半分程度に留まっている。そして2017年以降は株価低迷で下落。2019年以降は持ち直しか。

・「定期性預貯金(郵便貯金銀行)」は低利回りが原因と思われる漸減傾向。

・「普通銀行など」「郵便貯金銀行」は増加継続。

貯蓄額総額(積み上げグラフの赤文字部分数字)が「二人以上世帯全体」と比べて少ないのは、現役勤労世代で構成されているため。退職金の取得はまだ先の話で、経年による積立がさほど無い世帯もいる。そして住宅ローン返済中の世帯も多い(直接貯蓄からはマイナスされないが、貯蓄に回せる余剰資金は当然少なくなる)。その上、貯蓄額をかさ上げする定年退職者・役員が含まれていない(ただし定年退職後に再就職した事例は該当する)。これだけ要素がそろえば、金額が小さくなるのも当然。

総額が小さいこともあり、二人以上世帯全体と比較すると、各項目の変動が大きい感はある。同じ定期性預貯金でも、普通銀行のものはほぼ横ばいだが、郵便貯金銀行では減少していたのが興味深い。



かつては「有価証券」は減少傾向にあった。これは単なる株価低迷以外に、投資からの忌避的な動きによるところとも考えられる。2013年以降の有価証券額の増加は、二人以上世帯全体なら2008年、勤労世帯に限れば2007年以来のことで、景況感・投資市場動向がいかに長期間にわたって低迷していたかを推し量ることができる。2017年以降において減少の動きがあるのは、株価の低迷が要因なのだろう。2019年以降、上向きに動きを変えたのは注目に値する。

現在進行中の2022年では、これら有価証券の動向がいかなる方向に流れていくのか、「投資から貯蓄へ」の動きを押し留めることはできたのか。来年発表の値が非常に気になるところではある。


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