新型コロナでの減少からの反動でプラス、サービスは厳しさ続く…コンビニエンスストアの商品構成別売上推移

2022/05/10 02:00

このエントリーをはてなブックマークに追加
地域分散と多機能化で社会生活に一層深く浸透し、多くの人にとって欠かせない存在となりつつあるコンビニエンスストア(コンビニ)。トレンドを常に追いかけ、世の中の消費性向を知るアンテナ的な役割も果たしている。一方、このコンビニのフライヤーによる揚げ物や、プライベートブランドで展開される惣菜の充実ぶりが、豊かな食生活を提供する中食として人々のライフスタイルと出費事情を大きく変容させ、重要な位置づけを占めるようになっているとの指摘があり、実際に関連方面でそれを裏付ける動きが確認されている。そこで今回はそれらの話の補完材料を得る意味も含め、経済産業省が公開しているコンビニ関連の業績データなどを基に、コンビニにおける商品販売動向の推移を確認することにした。

スポンサードリンク


伸びる売上だがその勢いは


今回用いるデータは【経済産業省の商業動態統計調査】のもの。ここから【統計表一覧】を選び、コンビニ販売額について、現時点で最新のデータとなる2021年2月分(確定報)まで時系列・確報データを抽出し、それを利用する。

なお商業動態統計調査ではコンビニ関係の値に関して、2015年7月分から既存店(1年前にも存在していた店舗。前年同月比換算の際に店舗の増減で誤差が生じないための算出方法)の調査・公開を中止している。そのため、それらの値を用いる際は、2015年(7月)分以降のものは公開資料内で指定されている通り、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会のコンビニエンスストア統計調査の値を流用する。ただし対象範囲が微妙に異なるため、厳密には連続性は無いことをあらかじめ書き記しておく。

まずは年次データ。全店(既存店では取得できないデータ項目がある)の売上動向に関して、データが公開されている1999年以降のものをグラフ化する。なおこのグラフは年ベースのもののため、現時点では2021年が最新のものとなる。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年比)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年比)

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年比)(2021年)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年比)(2021年)

2008年は「タスポ効果」(利用に手間がかかるタスポが自販機のたばこ購入時のシステムとして導入され、タスポ無しに購入できるコンビニでのたばこ購入者が急増した)で、たばこが含まれる「非食品」が大きく売上を伸ばしている。他項目も、ついで買いの効果を受けてプラス化。

2009年も前半期ではその効果が継続しており、プラスの値を見せる。しかし他にプラスを維持できたのは「サービス」のみで、「日配食品など」「加工食品」はマイナス(両者が同じ値のため重なって見えている)、そして「合計」はギリギリでプラスのところまで落ちている。

2010年に入るとタスポ効果も終息。10月のたばこ値上げ直前による駆け込み需要も値上げ後の反動による下落で吸収され、年ベースでは2009年よりもさらに「非食品」の伸び率は低下。「加工食品」「日配食品」の健闘のおかげでどうにか「合計」も伸び率の上ではプラスを維持できたが、動きとしてはさえない。一方2011年はその「さえない」動きを見せた2010年の反動(「前年」比で計算されるから)に加え、震災起因による一部商品の特需が発生し、特に「非食品」(乾電池や懐中電灯なども含む各種雑貨もこの項目)が大きく伸びることとなった。

2012年はたばこの売上はいまいちで「非食品」も低迷。一方で「日配食品など」の伸びは堅調で、2010年以降3年連続して前年比プラスかつ伸び率をかさ上げしている。

2013年に入るとたばこの勢いはさらに落ちて「非食品」の上げ幅も低下。一方で「日配食品など」「サービス」は大きく伸び、これらが貢献する形で全体もわずかながら上昇幅を拡大する。

2014年では「サービス」がやや伸び率が後退しているものの堅調な上昇率に違いなく、これはコンビニの機能多様化や情報端末の活躍による所が大きい。他の部門も伸び率に差異はあれど前年と比べてすべて上昇率を底上げしており、景況感の回復や機能集約化に伴う集客をはじめとした相乗効果が出ているものと思われる。

なお2014年4月からは消費税率が引き上げられたため、その影響が生じている可能性もあるが(販売額には消費税分を含んでいる)、実取引単価の上昇に伴い販売個数の減少も同時に推定されるため、大勢に影響は無いものと思われる。また「日配食品」の大きな上昇率は、後述するように惣菜の充実やカウンターコーヒーによるところが大きいと考えられる。

2015年も状況はさほど変わりない。店舗数そのものは増加しているので、その分底上げがされていることを考慮すると、雑誌やたばこなどが含まれる「非食品」はイマイチ、食事系の「日配食品」「加工食品」などはおおむね堅調、情報端末やプリペイドカードなどの売上も含まれる「サービス」がさらなる伸びを示していると読める。

直近の2021年は日配食品などがプラスマイナスゼロ、非食品が大幅なプラス、加工食品とサービスがマイナス、全体ではプラス。比較対象となる2020年は新型コロナウイルスの流行によりすべての商品種類で大きな売上減少が生じており、それとの比較となることから、下げたものも大人しい下げ幅にとどまる形となった。非食品が大きなプラスを示したのは、マスクや消毒用薬品などの新型コロナウイルス関連商品がよく売れているからに違いない。他方、サービスが前年比でもマイナスとなっているのは、来店客数の減少に加え、屋外イベントなどの中止でチケットなどの販売事業そのものが落ち込んだからだろうが、そのような現象が生じている2020年と比べてもさらにマイナスとなったのは、ある意味衝撃的ではある。回復の兆しすら見られないということだからだ。

次のグラフは既存店のみの売上の前年比推移。1999年以降は「1999年」と「タスポ効果が明らかな2008年」以外はすべてマイナスとなっていた。そして2011年は「たばこ値上げ騒動の反動」と「震災特需」で大きくプラスに転じたのが確認できる。しかしそれらの影響も翌年になると薄れ、再びマイナス圏に逆戻りしてしまう。2013年では下げ幅をさらに拡大するが、2014年以降はおおよそプラスを示している。

↑ コンビニエンスストア売上(既存店、前年比)
↑ コンビニエンスストア売上(既存店、前年比)

コンビニ業界では2008年(タスポ)、2011年(震災)における特殊事例のような状況をのぞけば「新展開の店舗の売上の積み増しで、全体の売上額のアップを支えている」と表現できた。よく言えば「常に前進する」「店舗数レベルでの拡大政策」、見方を変えれば「止まったらしぼむ」「走り続けていないと衰退してしまう」と表現できよう。

あるいは店舗数による商用領域の拡大により、一層の汎用化・普及化・地域浸透を促進することで、類似競合他業種の客(の消費)をシフトさせる、刈り取る施策を無意識のうちに行っているのかもしれない。いわゆる「囲い込み戦略」と呼ばれているもの。日常における行動範囲・距離が短めとなる中年層以降、特にシニア層の需要をつかむには、莫大なるリソースが必要となるが、シンプルで確実な方法ではある。【コンビニエンスストアの経済・社会的役割を経産省がまとめたよ】で紹介した、経産省のレポートがその裏付け・論理的補完材料にもなる。冒頭でも触れたが商圏内の住民に与えた食生活上での変化も、その方針の結果の一つといえよう。

ただし2019年に入ってからはコンビニの店舗数の伸び率は低迷する。商圏などの観点で飽和状態になったことから、各社が成長戦略を止め、効率化を伴う整理統合の動きに転じたのが原因。他方2020年では記録のある1999年以降最大の下げ幅を示しているが、これは言うまでもなく新型コロナウイルス流行の影響によるもの。

ちなみに直近年の2021年ではコンビニの総売上11兆7600億8900万円のうち、日配食品などは4兆3005億2000万円、加工食品は3兆0765億0600万円。合わせて総売上の約63%を占めている計算になる。

月次推移で詳細を確認する


続いて月次データでグラフを作成する。取り扱い期間を2007年1月以降にしたグラフをベースとし、さらにはたばこの値上げ絡みの動きや震災の影響がより分かりやすいよう、2010年以降に限ったグラフも併記する。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年同月比)(2007年以降)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年同月比)(2007年以降)

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年同月比)(2010年以降)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、前年同月比)(2010年以降)

「タスポ効果」によりもたらされた2008年5月以降の「非食品」の急激な伸びが一目で分かる。合計売上も大きく伸びており、他の分野でも一部プラスを見せていることから、「ついで買い」による相乗効果も合わせてコンビニの業績に大きく貢献している。一方で2009年後半以降は反動で、「非食品」が前年同月比でマイナスに転じ、他の項目もそれにつられる形でマイナスとなり、あるいはマイナス幅を大きくしているのが確認できる。

また、「タスポ効果」以前に「非食品」の大きな上下が起きているが、これはグラフ中に記したように、2007年6月は1年前のたばこ値上げ直前の駆け込み需要の反動によるマイナス、2007年7月はたばこ値上げ後の買い控えの反動によるプラス。これと似たような動きがさらに大規模に、2010年10月のたばこ値上げに伴い発生している。具体的には2010年9月に大幅増・10月に大幅減、その反動が2011年9月(大幅減)・10月(大幅増)といった次第である。

2011年はやや状況が複雑で、「2010年のタスポ効果反動」の反動による底上げでややプラスへ、2011年3月の東日本大地震・震災以降は特需発生によるプラス化・「サービス」の自粛行動によるマイナス化、そして2011年9月以降は「2010年10月のたばこ値上げに伴う乱高下」の反動による大きな振れが生じている。「非食品」の動きだけを見ても、「震災起因の需要増加(電池など普段在庫的に置かれてい商品の需要急増)も小さからぬ影響を与えているが、それにも増して2010年10月のたばこ値上げの影響は大きく、持続性は低いものの2008年のタスポ効果すら上回っていた」のが改めて実感できる。

2012年2月には「サービス」が大きく伸び、その翌年2013年2月には大きな下げが見受けられる。これは2012年2月に宝くじ売り場だけでなくローソンでも発売された「復興支援宝くじ」によるところが大きい(【寒さでホット商品が売れる・復興宝くじもプラスに働く…2012年2月度コンビニ売上高は4.8%のプラス】)。

2013年に入ってからは「日配食品など」と「サービス」が堅調に推移し、それらが全体を支える形となっている。これは前者は後述するようにカウンターコーヒー、惣菜やファストフードの健闘、後者はプリペイドカードの伸長や情報端末経由による各種予約サービスの利用に伴うものである。幅広い商品の取り扱い、サービスの展開が利用され、売上に貢献する形となっている。

そして2014年では4月1日からの消費税率改定に伴い、駆け込み需要とその反動が生じている。しかし上昇幅が小幅であったところから、特需と反動も小規模なものに留まっている状況が確認でき、興味深い。非食品も導入前後、そしてその1年後に反動の形で大きな凸凹が生じているが、2010年10月のたばこ値上げや震災などの影響と比べれば微々たるものである。

2015年以降もおおよそ堅調に推移している。「サービス」の起伏がやや大きいが、だいたい全項目がプラス圏を維持。「非食品」で2018年9月に大きな上昇、10月に下落が生じているのは、たばこの主要銘柄が2018年10月から値上げされたことに伴う駆け込み需要と買い控えが原因。

店舗数そのものの増大も多分な影響はあるものの、コンビニ全体としては売上を順調に拡大している状況がつかみ取れる。ただし2016年からはプラス幅が縮小する動きを見せているのが気になる。前年の大きな上昇の反動の部分もあるが、今後の動向には今まで以上に注意を払いたいところ。店舗数による拡大戦略が天井に近づいてきたのかもしれない。実際、2019年後半以降、大手コンビニ3社のうちセブン-イレブンとローソンでは店舗数の前月比における減少が確認されている。

そして2020年に入ってからだが、新型コロナウイルス流行による売上への影響は、コンビニにも極めて大きなものであることが確認できる。特にサービスの売上に与えた影響は絶望的なまでのもの。売る対象が無くなっているのだから仕方がないのだが。2020年10月の突出した値はGo To キャンペーンの影響によるものだが、これもキャンペーンそのものの停止により同年12月には失速してしまっている。2021年に入ってからの大きな動きは、全年からの反動によるものでしかない。

日配食品にスポットライトを当てて


コンビニで販売されている商品の中でも注目を集めている「日配食品など」だが、たばこ購入者の来店による「ついで買い」で発生する底上げ効果を考えれば、2012年中盤以降は低迷しても不思議ではないが、引き続きおおよそ前年同月比でプラスを維持している。振れ幅こそ違えども2010年6月以降プラス値は継続しており、たばこが主要商品の「非食品」との連動性は薄れている(グラフは絶対値ではなく前年同月比であり、プラス領域ならば増えていることに注意)。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、日配食品と非食品、前年同月比)(2010年以降)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、日配食品と非食品、前年同月比)(2010年以降)

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、日配食品など、前年同月比)(2010年以降)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上(全店、日配食品など、前年同月比)(2010年以降)

「日配食品など」は震災後においては、商品の入荷困難などを原因としてやや凹んでいるものの、それでも前年同月比でプラスを維持。その後も順調に伸び続け、2012年に入ってからも5%強の伸びを示し続けている。特需やイベントなどのプラス的な影響は表れにくいが、地道に、そして確実に成長を続けている。特に2013年以降は順調な成長ぶりを示しているように見受けられる。フライヤーによる各種揚げ物系食品に加え、【コーヒー飲料の購入動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))】でも解説の通り、家計単位での消費動向にも数字として表れている、カウンターコーヒーの堅調ぶりがこの数字の動きからも改めて認識できるというものだ。

ただし2016年以降は伸び率が落ちている感は否めない。プラス圏にある以上、成長していることに変わりはないのだが。この動きが継続するのか、あるいは反転して再び伸び率を増やしていくのか、注意深く見守る必要があろう。なお2017年10月に久々のマイナス値(マイナス0.2%)を示しているが、これは季節外れの大型台風が2週連続にわたり週末にかけて日本を縦断し大きな被害をもたらしたことを起因とするもの。イレギュラー的な結果と見てよいだろう。同じような理由で2018年9月のマイナス0.1%も、この月に日本に上陸して大きな被害をもたらした台風21号と24号によるところが大きい。さらに2019年7月のマイナス1.4%も梅雨前線の影響で生じた大雨や台風5号・6号の被害によるところが大きい。

そして2020年に入ってからの新型コロナウイルス流行により、日配食品や非食品が大きな売上減少を示してしまっていることが分かる。中食の浸透、外出機会を減らすためのまとめ買い行動などで客単価は伸びているが、来店客数の減少が大きく影響し、売上が急減してしまっている次第ではある。2021年には前年比で戻しの動きを見せるが、これはいうまでもなく2020年の反動でしかない。そしてその反動の勢いもすぐに失速しており、売上の減少ぶりが深刻な状況であることがうかがい知れるものとなっている。



グラフの形で売上推移を見ると、「タスポ効果」「大幅値上げ前後の動き」だけでなく、コンビニの売上が「たばこ」(や【「タスポ効果」が一目瞭然・コンビニエンスストアの商品構成別売上推移】で解説した「ハイウェイカード」)に代表される、「世の中の仕組みの変更」で左右される場合が多い実態が分かる。

一方、今回スポットライトを当てた「日配食品など」は、世の中の仕組みの変化にとらわれず、むしろ自ら流れを創る形で確実に成長を続けている。ローソンの「プレミアムロールケーキ」に始まるプライベートブランドでのスイーツ開発・展開競争や、スタンドコーヒーとそれにマッチさせる形でのドーナツ販売がよい例である。ただし新型コロナウイルス流行というイレギュラーな事案には劣勢を強いられてしまっているのもまた事実(来店客数が減ってしまっているのだから仕方がないのだが)。

また昨今では高齢者の利用増加に注目し、和菓子にスポットライトを当てて独自ブランドを展開して高級感を演出するとともに積極展開したり、主婦が気軽に買い物できるよう、レジ前のフライ系惣菜を充実させ、さらには自前の畑や近隣の農家から仕入れた野菜を店頭販売しはじめるなど、幅広く、そして手堅い手法で日配食品を中心にお客の取り込みを図っている。その上、以前から注目を集めていたプライベートブランド、さらには一部店舗では調理場を新設した上での手作りによる総菜やお弁当の提供も行い始め、食品スーパー顔負けの充実さを見せている。

コンビニはますます食品コンビニ(食材コンビニではない)の様相を強め、人々に中食への傾注を深めさせている。震災以降、地域社会の生活拠点的な存在意義を強くしたコンビニだが、それも食の提供へのウェイトを高めさせ、コンビニなりの結論として中食の充実を提案し、それに従う形でお客が利用するようになっているのだろう。新型コロナウイルスの流行はその方向性を一段と強いものにしている感はある。

今後も定期的に同じスタイルで実績値にチェックを入れ、コンビニ自身だけでなく、周辺業界の動向を推し量りたい。


■関連記事:
【コンビニ来訪客の世代分布をグラフ化してみる】
【コンビニコーヒーのリピート率8割超え】
【コンビニ利用者約9割、利用時間帯は早朝と夕方がピーク】
【コンビニでの「1店舗あたりの」たばこ販売動向をグラフ化してみる(最新)】
【コンビニ四天王の売上高などをグラフ化してみる】
【ファミリーマートとユニーグループの経営統合、ようやく詳細確定・決着】
【中食系食品などの購入動向推移をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))】

スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|X(旧Twitter)|FacebookPage|Mail|RSS