高齢者が自動車を運転する理由、トップは「買い物などお店にいくため」
2021/11/27 03:06
高齢者の人口比率の増加や一人暮らし世帯数の増加などを主な原因とし、高齢者による自動車の交通事故が社会問題化している。その対応策の一環として進められているのが、高齢者に運転免許の自主返納などを勧める動き。その動きがある中で、運転免許を保有し続け、自動車を運転する高齢者はたくさんいる。それではそのような高齢者は、なぜ自動車を運転しているのだろうか。その実情を内閣府が2021年3月に発表した調査結果【高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)】を基に確認していく。
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今調査の調査要綱は先行記事【高齢者の運転免許の自主返納などの理由、トップは「自身の運転に自信がなくなった」】を参照のこと。
体力などの身体能力や判断力が低下し、安全運転に自信が無くなっても、自動車の運転を続ける高齢者は少なくないものと考えられる。あるいは実際に能力が低下しても、それに気が付かない場合もあるだろうが。自分では危ないだろうと認識している人も含め、なぜ自動車の運転を続けるのか、調査対象母集団のうち免許保有者に限定して尋ねた結果が次のグラフ。最上位の理由についたのは、「買い物などお店に行くため」で82.0%の人が同意を示した。
↑ 自動車を運転する理由(免許保有者限定、複数回答)(2020年度)
お店に行くのに自動車が必要な理由は細かく分類するといくつかあり、単純にお店が自宅から遠いため歩きなどでは難しい場合に加え、お店で買った商品を自宅まで持ち帰るのに歩きや自転車では不可能な場合が挙げられる。例えばディスカウントストアでミネラルウォーターやビールをケースで買っても、自宅まで歩いて持ち帰るのは不可能だろう。第4位の「荷物を運ぶのに困らないようにするため」も一部はこれに該当する。
続いて「趣味で外出するため」の51.0%。電車など他の移動手段ではなく、あくまでも自動車を運転して遠出をしたり、さらには宿泊も含めた旅行をするのが好きな人が多々いるということになる。
一方で自宅の近場に通院している病院がないために自動車が必要だとする「通院のため」が46.3%。都市圏ならともかく、地方などでは自分の通う科がある病院は自宅から距離が離れていることも多々ある。自動車を安全に運転できるような病気・けがでの通院なら、自動車の運転で通いたくなるのも道理ではある。
41.3%の「荷物を運ぶのに困らないようにするため」は、トップの「買い物などお店に行くため」と重なるような「お店で買った商品を自宅に持ち運ぶ」意味合いだけでなく、例えば仕事の荷物を自宅から現場に持ち出すとか、畑仕事に必要な肥料や道具を自宅から畑まで持っていく時などが考えられる。手持ちや自転車では不可能な量の荷物を、楽に目的地まで移動させる手段として、自動車を利用している次第。24.3%の「仕事に必要だから」もこれと被る部分が多い(無論、営業などで本人自身の移動手段として使う場合も多々ある)。
17.7%の「運転することが楽しいから」は「趣味で外出するため」に近いが、「趣味で外出するため」はあくまでも自動車の運転が手段にとどまっているのに対し、「運転することが楽しいから」は運転そのものが目的となっている。両方が被っている人もそれなりにいるような感はある。
8.3%の「(あまり)運転しない」が気になる人もいるかもしれない。これは、今件設問があくまでも免許保有者を対象としたものであり、すべてが自動車を運転している人とは限らないことに由来する。高齢者が免許を手放し、自動車の運転を止める方法には、単純に運転免許を返納するだけでなく、運転免許を手元に残しておくが運転はせずに、そのまま放置して更新手続きを取らず、自主的に失効させるパターンもある。このような形で免許を失効させた、事実上の免許返上者を自主失効者と呼んでいるが、「(あまり)運転しない」はその多くが、この自主失効者になるのを待っている状態だと思われる。無論、自動車の運転は元々していないが、身分証明の代わりに運転免許を保有し続ける人もいるだろうが。
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