高齢者の運転免許の自主返納などの理由、トップは「自身の運転に自信がなくなった」
2021/11/24 03:10
高齢者の人口比率の増加や一人暮らし世帯数の増加などに伴い、高齢者による自動車の交通事故が社会問題化している。その対応策の一つとして、高齢者に運転免許の自主返納を勧める動きがあるが、どのような実情なのだろうか。内閣府が2021年3月に発表した調査結果【高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)】を基に、運転免許の自主返納などをした高齢者における、返納理由について確認していくことにする。
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今調査は2020年12月から2021年1月にかけて65歳以上の人に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1500人。免許保有者は832人、自主返納者などは668人。都市区分では都市部在住者416人・地方都市在住者416人・その他417人・過疎地251人。都市区分に関しては「都市部」は特別区や指定都市、「地方都市」は中核市や施行時特例市、「過疎地」は過疎地域自立促進特別措置法により過疎地域とされている市町村、「その他」は都市部・地方都市・過疎地以外の市町村。「自主返納者など」は運転免許の全部の自主返納者および一部の自主返納者、免許を更新せずに置いておき、そのまま自主的に失効させた人。
運転免許を自主返納などした人に対し、なぜそうしたのかを複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。もっとも多い理由は「自身の運転に自信がなくなった」からで29.6%を占めた。
↑ 運転免許を自主返納などした理由(自主返納者など限定、複数回答)(2020年度)
自信がなくなった理由までは明記されていないが、他の選択肢にあるような事柄を経験し、安全に運転を続けることが難しいという判断に至ったと解釈するのが妥当だろう。例えばいつも通っている道を間違えてしまうことが増えたりとか、停止線からはみ出て止まることが増えたとか、運転中にめまいを覚える機会が少なからずあったとか。
次に多いのは「高齢ドライバーによる重大な事故のニュースを見た」で22.5%。高齢者の無謀運転や、運転時の判断ミスによる交通事故のニュースは、それこそ毎日のように伝えられている。中には多数の犠牲者が生じてしまうものもある。交通事故そのものは高齢者によるものに限らず日々生じているのだが、年齢階層別人口構成比の増加もあり、高齢者の事故が目立ってしまう。それらのニュースを見て、自分も同じような事故を起こしてしまうかもしれないと考えるのは、当然の話ではある。
次いで多いのは「自身で運転するのが疲れるようになった」で13.2%。自動車を安全に運転するのには相応の集中力や体力が必要となる。老化で体力が減退し、安全運転による体力などの消耗に耐えられなくなるのは仕方がない。それが自覚できるだけ、むしろ評価すべきではある。
高齢者の運転免許問題でよく事例に挙げられる、他人からの自主返納の勧めとしては「家族など、周りの人に勧められた」が第4位に入っている。家族から勧められるケースは多々あれば、それが実際に自主返納に結び付くのはそれほど多くはないようだ。
自動車の運転が安全にできるような状態でないことは認識しているが、生活に必要だから半ば仕方なく運転を続けている高齢者もいる。そのような人には代替案の提示が欠かせないが、実際にそのような案が実現化したことで運転免許を自主返納などした人はあまり多くない。「駅やバス停が近くにできた」でも10.9%にとどまっている。「自動車で行っていたところに行く必要がなくなってきた」もほぼ同じ理由だが、こちらも11.7%と1割強。いわゆるシニアカーやタクシーチケットなどの普及が進めば、もう少し増えるのだろうか。
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