マスク着用で変わる会話時の話し方や態度の実情
2021/10/17 03:22
新型コロナウイルスの流行により社会様式は大きな変化を余儀なくされている。人前でのマスク着用がよい例だが、それではマスクを着けた状態で会話をする時、マスクを着けていない時と比べて話し方や態度に変化は生じているのだろうか。文部科学省が2021年9月24日に発表した「国語に関する世論調査」の結果から確認する(【発表リリース:令和2年度「国語に関する世論調査」の結果について】)。
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今調査は2021年3月4日から29日にかけて全国16歳以上の個人を対象に郵送法によって行われたもので、有効回答数は3794人。
冒頭でも触れたように新型コロナウイルスの流行により、人前での会話はマスク着用が最低限のマナーとして認識されるようになった。一方マスクを着用した上での会話は、マスクを着用していない時と比べて口元が見えない、声が通りにくいなどの影響が生じる。それではマスク着用時の会話において、話し方や態度などに違いは生じているのだろうか。設問の文言は「回答者自身として」「世間一般的に」どちらとも解釈できる表現だが、前者と見て精査をしていく。
↑ マスクを着けると話し方や態度などが変わることがあると思う(年齢階層別)(2021年)
全体では62.4%の人が、マスクを着けると話し方や態度などが変わることがあると認識している。20代がもっとも多く73.7%、それ以降は年齢とともにおおよそ値は減っていき、70歳以上では半数を割ってしまう。70歳以上では半数以上が、マスクを着用しても会話の仕方は以前通りにしているということになる。
それでは具体的に、どのような変わり方が生じているのだろうか。マスクを着けると話し方や態度などが変わることがある人に、複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。
↑ マスクを着けると変わることがあると思う点(複数回答、マスクを着けると話し方や態度が変わることがあると思う人限定)(2021年)
もっとも多くの人が認識しているのは、「声の大きさに気を付ける」というものだった。74.1%が気をつけている。マスクの着用で声がさえぎられるのは当然なのだから、その分大きめにしないと、相手にまで声が届かない、あるいは届いても聞き取りづらい大きさとなってしまうかもしれない。第2位の「はっきりとした発音で話す」もまた、マスクを通しての会話は声がこもることもありうるので、必要になる心がけではある(単純に声がさえぎられるだけでなく、マスク着用により口の動きが鈍くなり、自然に発音が曖昧になってしまうという可能性もある)。
「相手との距離に気を付ける」は、飛沫リスクを考慮してのものなのか(一定距離を置く)、それとも声が通りにくくなるので距離を近づけることを意味するのか、文言だけでは判断が難しい。いずれにせよ、マスクを着用していない状態と比べて、相手との距離への配慮は必要だということは間違いない。
マスク着用による声の通りにくさだけでなく、口の動きや表情が相手に見えなくなる・見えにくくなることへの対応が「相手の表情や反応に気を付ける」。自分も相手も言葉そのもののやり取りからの情報の補完を、口の動きや表情で行うのが難しくなるため、より注意深く相手の表情や反応に注意する必要が生じるのだろう。代替の補完手段として「身ぶり手ぶりを多く使うように」があるものと考えられる。
正直なところマスク着用の上での会話は、面倒ではあるし声が話しづらく聞き取りにくいのは否めない。さらに表情がほぼ見えなくなるため、それこそ電話でのやり取りと同じレベルにまで、意思疎通のハードルが上がってしまう。これらの理由から、マスク着用による会話を嫌う人が多いのも理解できる。しかし社会の変化により、それが求められているのだから仕方がない。「マスクを着けると変わることがあると思う点」の選択肢を、マスク着用の上での会話で気を付けるべきことのチェックリストとして活用し、今後に活かすぐらいのポジティブさで考えていきたいものだ。
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