リモート接客導入48.4%、賃料減額受け入れ43.1%…新型コロナウイルス流行への賃貸住宅管理会社の対応実情(最新)
2021/08/09 03:17
現在もなお多方面に影響を与えている新型コロナウイルスの流行。その影響は当然賃貸住宅業界にも生じている。賃貸住宅管理会社側ではどのような対応をしているのだろうか。今回は賃貸住宅の管理会社で構成される協会「日本賃貸住宅管理協会」が半年ごとに同協会公式サイトにて発表している【賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)】を基に、その実情を確認していくことにする。
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各種調査要項などに関しては先行する記事【メディア別賃貸住宅業者への反応の変化をグラフ化してみる】にて記載済み。そちらで確認してほしい。
初めに示すのは該当期間(2020年下期、2020年10月-2021年3月)において、新型コロナウイルスの流行による経営・業務への影響に対し、講じた対策に関して尋ねた結果。あらかじめ用意されている選択肢で該当するものすべてに答えてもらう複数回答形式を採用している。
↑ 新型コロナウイルス流行による経営・業務への影響に関して講じた対策(複数回答)(2020年下期)
もっとも多かったのは「リモート接客導入」。店舗に来店するお客やオーナーとの接触による感染リスクを考慮したものだが、半数近くが導入している。感染リスクを考慮し、必要不可欠だと判断したところが多かったということだろう。
次いで多いのは「賃料減額受け入れ」で43.1%。これは賃貸住宅を借りている人が新型コロナウイルスの流行により経済的に困窮(会社の経営難、減給、解雇など)し、家賃を下げてもらわねば生活が難しいとして賃貸住宅管理会社にお願いをし、それを了承した事例がこれだけあったことを意味する(全賃貸住宅の43.1%ではなく、全賃貸住宅管理会社の43.1%でそのような事例があったことであることに注意)。なお前回の短観では今件に関して「民法改正による賃料減額請求も増加していると推測され」との言及があり、この43.1%すべてが純粋に新型コロナウイルスの流行によるものとは断言はできない。
次いで「オンライン内見導入」が42.0%、「店舗・事務所などのレイアウト変更」が22.9%と続く。「リモート接客導入」同様に、感染リスクを考慮した動きではある。
それに続いて「滞納督促強化」が21.8%。理由としては「賃料減額受け入れ」と似たようなもので、新型コロナウイルスの流行により経済的に困窮した借主が家賃を払えない事態が生じ、単に銀行口座に入金をし忘れたのか、あるいは本当に困窮しているのかなどの確認と督促を強化せざるを得ない状況となっているのだろう。短観でも「収入減により賃料減額後でも支払い困難な層も増加しており、滞納督促を強化せざるを得ない状況である」との説明がある。
さらに「問い合わせ対応要員強化」が18.6%で続く。これは単純に家賃の支払い関連だけではなく、むしろ在宅勤務者の増加を含め在宅時間が増えたことで、近隣住民とのいざこざ(中でも騒音に関するトラブル)の増加、賃貸住宅の設備の不備に対する問い合わせが増えたことへの対応と考えられる。賃貸住宅の入り口などで、在宅者増加による問題に関する注意書きを見たことがある人も多いのではないだろうか。
「全工事現場の優先順位付け」「工事資材の安定的確保」は新型コロナウイルスの流行に伴う資材生産の遅延や作業要員の確保が以前と比べて難しくなったことによるもの。
これを地域別に見たのが次のグラフ。
↑ 新型コロナウイルス流行による経営・業務への影響に関して講じた対策(複数回答、地域別)(2020年下期)
例えば「リモート接客導入」は関西圏で突出して多い、「賃料減額受け入れ」は関西圏では少なめ、「オンライン内見導入」は首都圏・関西圏以外では多めなどの動きが見受けられる。「リモート接客導入」の関西圏での多さは、大阪府などでの感染状況の悪化が影響しているのだろうか。
次回調査時までに新型コロナウイルスの流行が沈静化しているかどうかは不明。継続した状況であれば、今件調査項目も引き続き調査対象となることだろう。
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