日本在住の外国人に災害や行政情報を伝えるために必要な取り組みとは(最新)

2020/09/29 05:28

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2020-0927文化庁は2020年9月25日、令和元年度版の「国語に関する世論調査」の結果概要を発表した。今回はその内容を基に、日本に住む外国人に対して、災害や行政の情報など平穏な日常生活を営むのには欠かせない情報を、どのようにして正しく、適切に、そして効率的に伝えていくべきか、求められている取り組みについて確認していく(【発表リリース:令和元年度「国語に関する世論調査」の結果について】)。


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今調査は16歳以上の男女に対して個別面接調査方式で行われたもので、調査の有効回答数は1994人。有効回答の属性別構成比は非公開。

大きな災害やその予兆があるたびに問題視される日本在住の外国人に対する問題の一つとして、災害や行政の情報など、平穏な日常生活を営むのには欠かせない情報を、どのようにして正しく、適切に、そして効率的に伝えていくべきかというのがある。外国人の少なからずは日本語の読み書きや会話が困難であり、ある程度の理解はあっても日本語独特の言い回しや慣用句の類までは知らないことが多い。例えば「余震」という言葉の意味をどれほどの日本在住の外国人は理解し、対応できるだろうか。

そこで、日本在住の外国人に対して災害や行政の情報などを伝えるためにどのような取り組みが必要だと思うかについて複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 日本在住の外国人に対して災害や行政の情報などを伝えるためにどのような取り組みが必要だと思うか(複数回答)(2020年)
↑ 日本在住の外国人に対して災害や行政の情報などを伝えるためにどのような取り組みが必要だと思うか(複数回答)(2020年)

もっとも多くの同意を得られた選択肢は「さまざまな国の言葉で情報提供をする」で58.1%。交通標識や自動販売機ではお馴染みのスタイルで、日本語以外に英語、中国語、韓国語などが併記されていることが多い。一番手っ取り早く技術もさほど必要としない手法だが、用いた言語の分だけ表示時間や掲載場所を取ることになり、一つの言語の認識機会が減ってしまうという弱点がある。例えば切替式で日本語・英語・中国語・韓国語を用いて案内掲示をした場合、日本語による表示は1分間のうち15秒に過ぎなくなる。一度見逃すと45秒は待たされることになる。

次いで多いのは「やさしい日本語で分かりやすく伝える」で46.3%。どのような手段で伝えるかの指定が無いので口頭によるものか文章や放送で伝えるものかは定められていないが、いずれの手段にせよ内容が把握できない言葉ならばいくら上手く受け止めても意味がない。先の「余震」が好例だが、テレビや行政放送で「余震に備えましょう」と言われても、「余震」の意味が分からなければ何に備える必要があるのか理解ができない。

「外国人が日本語能力を身に付けるための学習環境を整える」「外国人が自主的に日本語を学ぶことが必要」は外国人自身が日本語を習得してもらうとの観点では同じだが、行政などが環境を整備するのか、自主的に行動してもらうのかに違いがある。今回の調査の限りでは、学びやすい環境を整備して習得のハードルを低くするべきだとの意見の方が多いようだ。



今件の要望は具体的には行政や企業に対するものとなるが、どの選択肢がベストなのかはケースバイケース。多言語による切替表示における特定言語表示時間の減少の例にもあるように、改善をした結果既存のサービスが大きな影響を受けてしまうこともある。バランス調整が必要なだけに、難しい問題には違いない。


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