お年玉の実情を家計調査から推測してみる(最新)
2024/12/28 02:43


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自世帯の子供へと他世帯の子供へ、それぞれのお年玉
家計調査においてお年玉に相当すると思われる項目は、家計収支編における「他のこづかい」と「贈与金」。それぞれは【収支項目分類】によると次の通り。
(10.3.6)贈与金…一般社会の慣行による自発的現金支出。持参金など世帯への譲渡金も含む。ただし、仕送り金、慰謝料は除く。せん別、香典、見舞金、謝礼金、祝儀、持参金、結納金、財産分与金、遺産分与金。
期間を1月に限定することにより、「他のこづかい」は自世帯の子供への、「贈与金」は他世帯の子供へのお年玉と見なすことができる。無論実際には1月に限っても子供へのこづかいは発生するし、親族や知人へのせん別や香典、見舞金などを支払う可能性はある。しかしその区分は家計調査では行われていないため、あえて1月の金額はすべてお年玉と見なして精査を行う。1月分のデータを取得できる最新値は2024年1月分。
また、月単位での「他のこづかい」「贈与金」が確認できるのは二人以上世帯の品目分類のみ(品目分類については【中食系食品などの購入性向推移(家計調査報告(家計収支編))(最新)】を参照のこと。要は使用目的にかかわらず同じ商品・サービス・消費内容は同じ項目で分類する方法)。よってその条件での精査となる。単身世帯のお年玉事情も知りたいところだが。
まずは世帯主の年齢階層別に見た「他のこづかい」と「贈与金」。

↑ 「他のこづかい」と「贈与金」世帯主年齢階層別の支出額(二人以上世帯、円)(2024年1月)
二人以上世帯限定だが、全体では「他のこづかい」は1340円、「贈与金」は14225円。「贈与金」が多いように見えるが、これは複数世帯の子供へのお年玉の合算だからに他ならない。
年齢階層別では興味深い動きが見られる。「他のこづかい」では29歳以下では835円だが、年齢が上になるに連れて額面は増え、50代では最高額の2521円。それ以上は年齢とともに額は減っていく。これは自世帯への子供のこづかいであることから、子供のいる・いないに加え、子供の年齢によってお年玉の額が増えていくことを示唆している。60代以上は子供も家を出たり就職するなどしてお年玉を受け取らなくなるため、額も減っていく次第。
他方「贈与金」は年齢とともに増えていく傾向がある。70歳以上では21250円となる。これは正月休みなどで帰省した(他世帯の)子供や孫へお年玉を渡す機会が増えるからだと考えられる。
続いて「他のこづかい」と「贈与金」が個々の属性世帯における消費支出に占める比率を計算した結果が次のグラフ。消費支出とは世帯を維持していくために必要な支出なので、要は普段使いするお財布の中身のどれほどの割合なのかを示していることになる。

↑ 「他のこづかい」と「贈与金」支出全体に占める割合(二人以上世帯)(2024年1月)
実のところ二人以上世帯に限れば消費支出には大きな違いは無い。よって「他のこづかい」や「贈与金」の額そのもののと同じような形状のグラフができあがる。70歳以上の世帯では2024年1月に、他世帯へのお年玉として消費支出の1割近くを支出した計算になる。自分の子供へのお年玉は、年齢階層別でもっとも大きな値を示した50代でも0.7%。お年玉を渡すであろう人数の違いを想像すれば当然の結果ではあるのだが。
都道府県別の動向
余談な感はあるが、「他のこづかい」と「贈与金」それぞれについて都道府県別の動向を示しておく。繰り返しになるが、今件では一応お年玉と想定しているが、示された金額がすべてお年玉ではないことに留意をしてほしい。また年齢階層別の違いからも分かる通り、これらの値は地域における年齢階層別の世帯構成などにも大きく影響される。

↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」(都道府県別、円)(2024年1月)

↑ 二人以上世帯の「贈与金」(都道府県別、円)(2024年1月)
「他のこづかい」で最多額面を示したのは長野県の1万1531円。次いで福井県の8898円、山梨県の4331円。他方、もっとも少ない額は徳島県の235円。地域による法則性の類は見られない。単純に考えれば世帯あたりの子供の数が多い方が額も大きくなるのだが。
「贈与金」では最多額面は石川県の48322円、次いで秋田県の28415円、広島県の26631円などが上位につく。もっとも少ない額は愛媛県の6465円。他の世帯へのお年玉を意味することから、愛媛県などで低い値が出たのは、もともと子供や孫が少ないのか、帰省する機会が少ないのか。あるいはお年玉の相場観そのものが異なるのかもしれない。
「他のこづかい」「贈与金」双方ともお年玉っぽい、という程度のものでしかないが、色々とそれらしい動きが見られたのもまた事実。指摘されればその通りではあるのだが、それを統計の上で裏付けることができたのは、有意義な話に違いない。
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