ツイッターのアクセス動向(2019年第1四半期まで)
2019/04/24 10:00
チャット形式のミニブログサービス「Twitter(ツイッター)」を提供しているツイッター社は2013年11月7日付でニューヨーク証券取引所に上場(コードはTWTR)、大型のインフラサービス系IT企業の上場として大いに市場の話題を集めることとなった。上場以降は基本方針・事業内容こそ変わらないものの、それまで以上に株主の視線を気にする、収益確保の姿勢をより強く示す動きを示している。今回はそのツイッター社の公開資料を基に、ツイッターのアクセス動向を確認していくことにする。
スポンサードリンク
ツイッターのアクティブユーザーは3億3000万人
データの取得手順は【アマゾンドットコムの売上推移など】で紹介したものとほぼ同じ。SECの【SEC Filings & Forms】から【Search for Company Filings】を経由し、【Boolean and advanced searching, including addresses】を選択。そして検索キーワードとして「twitter 10-k」を入力すれば年次会計報告書を取得できる。「twitter 10-q」ならば四半期単位の報告書。なおツイッター社では決算発表当日に同社公式サイトに概要的決算報告書を掲載し、それからしばらく経ってから詳細な報告書をSECに登録する。
今回はSEC上に発表される報告書を待たず、ツイッター社の財務会計関連の公式公知ページとなる【Financial information】上にて2019年4月23日付けで発表された、2019年第1四半期(Q1)=四半期会計報告書「Q1 2019 Earnings」の各種資料を確認する。
報告書は財務面のデータがメインだが、それを裏付けるための本業の動向、ツイッター社なら主事業のツイッターに関する成長性についての数字も記されている。それらを基に諸動向を確認するが、まずはツイッターの月次アクティブユーザー数(MAU。monthly active users。月一以上の利用者数)を見ていく。2010年3月時点では3000万人でしかなかったMAUだが、直近の2019年3月では3億3000万人。10倍強に成長している。
なおツイッターではアカウントを取得して各種機能を用いツイートを確認する方法の他に、アカウントを取得したくは無いが特定ユーザーのツイートを追いかけたい、つまりより一層RSSリーダーのような使い方をしたい人のために、SMSフォローと命名した使い方を利用手法の一つとして提唱している(【SMSフォロー(公式説明ページ)】)。この準利用者を除いたMAUを算出した値をかつては「MAUs excl. SMS Fast Followers: Worldwide」として併記していたが、2016年4月発表分からはこの値のみを公開値として掲載し、従来のSMSフォローによる利用者を含めた値は非公開となってしまった。
そこで次のグラフでは、新方式で取得可能な最古の値である2014年Q1以降の値は新方式、それ以前は旧方式の値を用いることとする。ちなみに新旧双方による値の差異は、可能な期間の範囲で計算した限りでは約1.1%から約4.7%となっている。直近に近づくに連れて誤差は拡大しており、この誤差の増加が新方式への移行の要因と考えられる。
↑ ツイッターの月次アクティブユーザー(MAU)(世界規模、2014年3月以降はカウント方法変更、億人)
グラフの形状を見れば分かる通り、2013年の夏あたりから成長率はやや鈍化しつつある。3か月単位での成長率は当初30%前後を維持してきたものの、2013年後半以降は6%前後、ここ数年では1%から2%程度に留まっている。直近四半期では前四半期比でマイナス1.5
%、前年比ではマイナス2.7%となっている。ここ数四半期において前四半期比がマイナスを計上しているのは、2018年7月に実施した健全性確保の一環としてのbotアカウントの大量削除によるものと考えられる。直近分の減少に関しては報告書では「サービスの健全性の優先(悪質なbotなどのアカウントの削除)、プッシュ通知の通知数の減少、一部地域における有料のSMS通信事業者との提携の解除、さらにEUのデータ保護規則(GDPR)に準拠するために行った決定が影響した」と説明している。
↑ ツイッターの月次アクティブユーザー(MAU)・成長率(世界規模)
当然、閲覧されるタイムライン数も成長している。テレビにおける視聴率のような意味合いを持つこの値は、ツイッターが広告宣伝媒体としても注目すべき対象であることを意味している…はずなのだが。
ツイッター社では2015年Q1会計報告書分から、このタイムライン数、そしてこの後に続くアクティブユーザー数あたりの閲覧数、そして1000ビューあたりの広告売上の公開を停止してしまった。停止した当時の説明によれば、これらの値はツイッターにおける正確な業務状況の推移やパフォーマンスの良し悪しを精査するには誤解を招きかねない、確からしさに欠ける指標であるため、公開を止めたとのこと。その方針は今なお続いている。まるで某日本国内大手ソーシャルメディアにおける情報公開の推移を見ているようでもあり、その公開性に対する姿勢の変化は残念でならないが、それが施策であるのならば仕方があるまい。
現状ではかろうじて追加的なアクセス動向を探る値として、mDAU(Monetizable Daily Active Users、公式サイトあるいはアプリケーションを通じて広告表示をした上でアクセスする、つまり収益に貢献する1日の利用者数)の「前年同期比における増減率」を提示している。その値について、直近四半期ではプラス11%となったことを開示している。要はそれだけより多くの人が高頻度にツイッターを利用するようになった、ということである。
また、理由はともあれMAUがここしばらくの間減少しているからか、今報告書からはmDAUの値そのものも公開を始めている。他の指標の公開動向から察するに、いつまた非公開になるかは不明だが、とりあえず現状では2017年Q4から2018年Q4の計5四半期分の取得が可能となっている。それによれば直近の2019年Q1においては、mDAUは1億3400万人。日々ツイッターにアクセスをしている活発な利用者がこれだけいることになる。
ともあれ、アクセス面におけるデータは2015年分以降、その開示領域を大幅に縮小している。今回分析にあたり、SECには報告されない、株主向けのプレゼンテーション用スライドショー資料も併せて精査したが、やはり各種アクセスデータの開示はこれまで通りのものだった。よってこれ以降は再度開示領域が拡大されるまでの間は、現時点で最後の情報公開となった2014年Q4分までの動向を記述するものとする。多分に記録保全のためであり、同時に今後再び開示方針へかじ取りを示すことを願ってのものでもある。
↑ ツイッターの月次タイムライン閲覧数(世界規模)(億)
上記のMAU動向と比べると、タイムライン閲覧数は上場前後に一度大きく減少し、その後再び増加率をそれ以前のものに戻している。一時的な減退について詳しい説明はないが、タイムライン閲覧数は指標の一つでしか無く、閲覧あたりの会話は増加しているなどの言及が、発表当時にツイッター社幹部からなされていることが確認されている。またこの前後にはAPIの制限に伴うサードパーティークライアントの、利用者におけるポジションシフト(APIバージョン1.0の提供が2013年6月11日付で終了し、上位バージョンの1.1に未対応のサードパーティークライアントがサービスを終了している。これに併せて公式クライアントへのシフト誘引も推し量った感は強い)もあり、それも減退の一因と考えられる。実際、後述するように、このタイミングに併せて各種広告システムにも動きがあったことも併せ、表示回数あたりの広告売上は大きく成長している。
2014年Q3からQ4への3か月の上昇率は1%。これは同時期のMAUの増加率2%と比べると大きな差異は無い。前四半期の4%と比べると大きなスピードダウンに違いない。ツイッター社側ではこの時の決算発表と前後して、ユーザー数の増加を促し離脱率を抑え込む施策として、グループチャット機能の導入や重要なツイート表示機能の実装などを実施しており、さらにGoogleとの間でリアルタイム検索に関する契約を締結したことが伝えられている(【ツイッターとグーグルが契約してリアルタイム検索が復活するかもという話】)。同社側でも危機感を覚えていたことは確かなようだ。
より濃く、より「貢献する」ユーザーに
ツイッターがより幅広い、影響力の大きなメディアに成長し、商業価値を高めるか否かの判断に役立つ指標としては、利用者の動向も挙げられる。MAUの成長は鈍化、直近四半期ではついに値を横ばいとしてしまったが、利用者のツイッター社への貢献度合いはより高いものとなっている。次に示すのはアクティブユーザー数の月次閲覧数(こちらも開示を止めた直前、最後のデータとなる2014年Q4までのもの)。
↑ ツイッターの月次アクティブユーザーあたりの閲覧数(世界規模)
利用者の中には退会してしまう人も少なく無いが、継続利用している人はフォロワー・フォローしている人も増え、利用時の取得情報も増えていく。より一層のめり込んで、タイムラインの取得を頻繁に行うようになる。そのような「濃い利用者」が増え、平均的な閲覧数も増えていく。
一方で上記でも触れている通り、上場前後に併せて行われた各種施策の変更に伴い、2013年の第4四半期に一度、大きな減退が生じている。しかしその後再び増加を示した……が、その後横ばい、やや漸減の動きすら示しているのが当時の状況。
漸減傾向は2014年Q2から継続するもので、Q3ではこの動きを受け、ツイッター社の株価は大きく急落した。ところがQ4では逆に大きな上昇を示している(※上記説明当時の動向)。
↑ ツイッター社の株価動向(MSNマネーから)。2015年初頭の動向。上昇したのはツイッター社から2014年Q4短信決算が発表された直後。SECに詳細データが掲載される一か月ほど前の話
この株価上昇の原因となったのが、一つは上記で挙げたGoogle社との契約。そしてもう一つが売上の大半を占める広告売上の収益率の改善。上場に併せて行われた、公式クライアント利用のための各種施策が大いに功を奏しており、公開された最後の四半期では1000ビューあたりの広告売上は2.37ドルに達している。前四半期比で34%の増加である。
↑ ツイッターの1000ビューあたりの広告売上(世界規模、ドル)
広告の展開方法の多様化やクライアントの質の向上、公式クライアント利用への誘引も小さからぬ要因だが、主な収益率向上の理由として、モバイル化が進んでいることが挙げられる。
話を「直近の」決算報告書の内容に戻す。報告書の中でツイッター社のCEO(最高経営責任者)のJack Dorsey氏は「ツイッターでは利用において被害を受ける人達の負担を軽減するにとどまらず、可能な場合は具体的な被害の報告が行われるような状態に陥る前に行動を起こしている。例えば問題のある個人情報の削除は2.5倍以上に増えているし(※いつとの比較は言及されていない)、虐待的な内容であるとして削除される案件の38%ほどが機械学習モデルによって検出されたものである。ツイッターでのやり取りをより素早く、流動的で、そして楽しく行うという目標を掲げ、より普通の会話のように利用できるアプリの作成も行っている」とし、CFO(最高財務責任者)のNed Segal氏も「広告収入は前年同期比でプラス18%と堅調。広告主に対する価値提案の観点でツイッターの独自性がより強くアピールできるようになった結果。これまでの方針の確からしさに自信を得ることができた」などと言及している。
InstagramやPinterestのようなビジュアル方面を重視した競合他サービスの動向が激しく動いていることや、ツイッターの内部的に細かい仕様変更が相次いでいることも併せ、今後も大小を問わず、利用者の環境や需要、そしてより効率的な収益を得るための変更が模索され、実行されるに違いない。またFacebookなども抱えているプライバシー問題などの対応がどこまで誠実に、確からしさの下で行われ、市場から判断されるのかも注目したいところだ。
なお前回の報告書ではmDAUについて「広告表示をしている収益に貢献する利用者であり、他のサービスの類似データとの単純比較は不可能。他サービスが開示しているそれらのデータは広告表示をしていない、収益に貢献しない対象もカウントしている」とした上で、「ツイッターではアクティブユーザーを公開することを目標とはしていない。利益関係者に有益な情報を開示するための指標が必要であり、今回はより有益なmDAUの開示に踏み切った」としていた。その上で今報告書ではmDAUを公開の主要指標とするとともに、MAUの開示を今回で取りやめることを明らかにしている。
mDAUの開示データは過去までさかのぼっても数四半期分しか公開されていない。今記事においても、次四半期以降はさらに更新データが狭まりそうではある。
■関連記事:
【ツイッターの「公式」データを書き起こしてみる】
【ツイッターの利用状況を詳しく(最新)】
スポンサードリンク