「公共の場で自分の考えを表現する権利は守られている」主要国では62%が肯定
2019/05/31 04:52
民主主義という国家体制、政治的な仕組みは多くの国で実行されているが、その実益を該当国の国民が完璧な形で受けているとは限らない。実際には恩恵を受けていてもそれに気が付かない、実感していないことも多々ある。民主主義国家の国民は、自国の民主主義体制の実益に関して、どのような認識をしているのか。アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月29日に発表した、民主主義諸国における民主主義の浸透度合い、国民の認識に関する調査結果【Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working】の内容を基に、その実情を確認する。
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今調査の調査要綱は先行記事【「自国の民主主義の実情に満足している」全体では45%】を参照のこと。その記事にもあるが、今調査対象母集団では全体として自国の民主主義の実情に満足している人は45%、不満足な人は51%となっている。南米では低め、アジアでは高めの値が出ている。欧米では国によって大きな差が生じている。
↑ 自国における民主主義の実情に満足しているか(2018年春)(再録)
それでは具体的に民主主義体制において、各国の国民はどのような認識を示しているのだろうか。まずはポジティブな観点からの同意率を確認する。
↑ 自国における実情(ポジティブ方面)(2018年春)
「公共の場で自分の考えを表現する権利は守られている」、つまり言論の自由に該当する項目は、全体では62%の人が同意を示している。もちろんこの権利は同時に、表現した内容について本人がその責を持つ義務が生じていることは言うまでもない(義務や責任の無い自由は単なる自由奔放でしかない)。
おおよその国では半数以上が同意を示しているが、欧州の一部、ハンガリーやスペイン、イタリアや南米のアルゼンチン、ブラジルでは4割台に留まっている。ちなみにロシアでは57%が同意。
他方「多くの人が自身の生活水準を向上させる機会を持つ」、つまり経済上の改善機会の平等性に関しては57%が同意を示している。こちらは「公共の場で自分の考えを表現する権利は守られている」とは異なり、国によって差異が大きいのが目立つ。例えば欧州ではオランダやスウェーデンが8割前後の値なのに対し、ギリシャやスペイン、イタリアでは2割台しか同意者がいない。
印象的には現在の経済状態に加え、将来的な経済上の発展可能性が見えているか否か、国民が認識できているか否かで大きな差が生じており、不調な国ほど同意率も低いように見える。経済面で自分自身の現状も将来も希望が見えなければ、国全体の様式にも否定的になるのは必然といえよう。
続いてネガティブな観点からの同意率。
↑ 自国における実情(ネガティブ方面)(2018年春)
「誰が選挙で勝っても世の中はさほど変わらない」、半ば民主主義の否定のような諦め的意見だが、この同意率は全体で60%と半数を超えている。特に欧州ではこの値は高めで、ギリシャでは82%と8割を超えている。ロシアでも72%。他方、同じように政情不安定さが伝えられる国でもスペインでは42%、イタリアでは57%と低めの値が出ているのは興味深い。体制の転換による期待が持てるか否か、最近の自国の実情に合わせた値ということだろうか。
あるいは逆で、体制の転換で世の中が変わる、よりよい方向に進むと信じる人の多い少ないが今値(の逆値)なのかもしれない。その観点では日本の62%、アメリカ合衆国の54%という値は色々と考えさせられる。
「ほとんどの政治家は腐敗している」は全体では54%。欧州ではおおよそポジティブ方面で高い値を示している国ほど低い値が示されている、つまり政治家への信頼が高い状態なのが分かる。ギリシャでは実に89%もの人が政治家の腐敗を確信している。ロシアは82%。
興味深いのは民主主義体制への肯定感がさほど高くない南米諸国において、比較的低い値が出ていること。メキシコではわずか27%に留まっている。
ちなみに報告書では具体的な値は例示していないものの、概して回答者が支持する政党が政権を担っていた場合、ポジティブ方面では高い値を、ネガティブ方面では低い値を示す傾向があると指摘している。要は自分の望みの方向性を持つ政権による治世ならば、民主主義は正しく守られ、生活もよいものであると認識できてしまうということになる。よし悪しの判断基準が絶対的なものでは無く、政治的信奉に影響されるのはどの国でも変わらないということだろうか。
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