支持政党が政権を担っていないと自国の民主主義への満足度は低くなる
2019/05/31 04:51
民主主義は多くの国にとって、政治的な運営主体が国を担う上で欠かせない政治的な仕組みだが、その履行度合いや実情への満足感は国により、さらには国民一人一人の立場によってさまざま。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月29日に発表した、民主主義諸国における民主主義の浸透度合い、国民の認識に関する調査結果【Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working】の内容を基に、諸国における民主主義への満足度と支持政党が政権を担っているか否かとの関連について確認していくことにする。
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今調査の調査要綱は先行記事【「自国の民主主義の実情に満足している」全体では45%】を参照のこと。その記事にもあるが、今調査対象母集団では全体として自国の民主主義の実情に満足している人は45%、不満足な人は51%となっている。南米では低め、アジアでは高めの値が出ている。欧米では国によって大きな差が生じている。
↑ 自国における民主主義の実情に満足しているか(2018年春)(再録)
それではこの民主主義の実情への満足度合いは、個々の国の政権が自分の支持する政党か否かで違いがあるのだろうか。政権与党を支持するか否か別に、自国における民主主義の実情に満足していない人の割合を示したのが次のグラフ。
↑ 自国における民主主義の実情に満足していない人の割合(自国の政権与党への支持・不支持別)(2018年春)
元々の国全体としての民主主義への実情へ満足していない人の割合の違いがあるため、国ごとに違いは生じているものの、ほぼすべての国で政権与党を支持している人の方が、自国における民主主義の実情に満足していない人の割合は低くなっている。フランスでは政権政党を支持するか否か別で3倍以上もの差が出ている。ポーランドでは2.7倍、インドでは2.6倍、スウェーデンでも2.3倍。
報告書では数字のみを挙げて、この傾向が生じる原因については言及していない。しかしながら「自分の支持する政党が政権についていないのは、民主主義が上手く働いていないからだ。だから民主主義の実情には満足できるはずがない」と考える人が多数に及んでいると見れば道理は通る。
要は自分の思惑通りの政党による政権ならば民主主義は上手く行っている、満足している。思惑とは違う政党による政権ならば民主主義は上手くいっていない、満足できないということになる。実に分かり易い理屈ではある。先の大統領選挙でリベラルと保守が二分する形となったと表現してもあながち間違いないアメリカ合衆国でも、支持と不支持との間では2倍近い差が生じているのが印象的。
唯一イタリアは逆転現象、政権政党を支持している人の方が、自国における民主主義の実情に満足していない人の割合は高くなっている。この現象について報告書では「唯一の例外は二つのポピュリズム政党が連合しているイタリア。北部同盟(現在はレーガと呼ばれる)と五ツ星運動支持者ではともに77%、非支持者では66%が不満と答えている」と説明している。大規模な政変が影響しているようだ。あるいはナショナリズムを支持する人にとっては、民主主義の実情に満足していないからこそ、現在の政権政党を支持したという意味なのかもしれない。
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