妥協すべきか自国の益を貫くべきか、アメリカ合衆国の同盟国との関係
2019/05/26 05:20
アメリカ合衆国は巨大な経済力と軍事力を持ち、多くの国と同盟関係を結んでいる。その同盟関係の中では一方的に同国の利益を主張し同盟国に押し付けるのではなく、時として自国に益をもたらさない内容でも妥協する必要が生じる場合がある。個々の案件の益を優先するのか、良好な同盟関係の維持による総合的な益を見極めるのか。アメリカ合衆国の国民自身はどのような考えをいだいているのだろうか。今回は同国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月2日に発表した、アメリカ合衆国における他国情勢への関与の是非やNATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)へ加盟していることの意義に関する調査報告書【Large Majorities in Both Parties Say NATO Is Good for the U.S.】を基に、その実情を確認していくことにする。
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今調査の調査要綱は先行記事【アメリカ合衆国の人達が考えるNATOの加盟意義】を参照のこと。
次に示すのはNATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)に限らずさまざまな同盟関係にある他国との間において、その同盟国との関係でいかなる態度を示すべきか、二者択一で選択してもらった結果。自国の個々の益を優先するか、(同盟関係維持のため)妥協してでも同盟国の利益を考慮すべきなのか。この類の話は得てしてケースバイケースだが、傾向としてどちら側を向くべきかとの意見を求めていると解釈すればいいだろう。
↑ アメリカ合衆国における同盟国との関係について(アメリカ合衆国)
調査の期間内においては一様に、同盟関係維持のために妥協は必要だとする意見が多数派となっている。2016年4月に両者の値の差が縮まる動きを示しているが、その後は2017年6月に大きく差が開く形となり、最近になってまた縮まる動き。もっとも妥協は必要との意見が半数割れを示したことは無い。
これを支持政党別に見たのが次のグラフ。
↑ アメリカ合衆国は同盟国と妥協してでも、同盟国の利益を考慮すべき(アメリカ合衆国、支持政党別)
他国との同盟関係の維持のため、アメリカ合衆国は妥協してでも同盟国の利益を考慮すべきであるとの考えは、民主党支持者の間では多数派。他方、共和党支持者の間では少数派となっている。元々両者の間には一定の格差があったものの、トランプ氏が大統領に就任した2017年1月以降は差が大きく開いた感はある。民主党支持者はさらに妥協すべしとの声が増え、民主党支持者は減っている。トランプ大統領の政策に合わせた動きなのだろうか。
直近の2019年3月分の調査結果を属性別に区分したのが次のグラフ。
↑ アメリカ合衆国における同盟国との関係について(アメリカ合衆国、属性別)(2019年3月)
同盟国との関係維持のためには妥協も必要との考えは若年層、高学歴に多い。人種による違いで学歴別の動きが影響するとの考えから白人限定の簡易な学歴別の値もあるが、その値でも高学歴の方が妥協が必要派の値が多数となっている。高齢者、低学歴の人ほど、短絡的な自己利益を優先すべきとの認識なのかもしれない。
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