スペインでは45%…西欧諸国のポピュリストの比率
2018/11/29 05:02
現在欧米で注目されている、あるいは問題視されているとも表現できる主義主張の一つに「ポピュリズム」がある。現状における社会体制を否定し、打破を掲げる政治思想であり、その思惑の遂行や喧伝活動の際に一般市民の権利や利益、思惑をことさらに提示したり、不安などを悪用して扇動する方法が用いられる。大衆主義、大衆迎合主義とも表現されるもので、そのような考え方を持つ人のことを「ポピュリスト」と呼んでいる。そのポピュリズムが台頭しつつあるとも指摘されている西欧諸国では、どれほどの人がポピュリストと判断される状況なのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月14日に発表した調査【「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」】の報告書を基に確認していく。
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今調査の調査要綱は先行記事【西ヨーロッパ諸国でニュースの情報源としてもっとも使われているのはテレビ、デンマークやスウェーデンではオンラインが最多】を参照のこと。
次に示すのは調査対象国において、調査対象母集団がポピュリストか非ポピュリストか、いずれにも該当しない中庸と判断される人なのか、その割合を示したもの。自称・自認ではこの類の判断は難しいことから、今調査では2つの設問「国全体の問題を解決する場合、一般の人は選挙で選ばれた人よりもよい成果を出すか否か」「選挙で選ばれた公務員は回答者自身のような一般の人の考えを気にするか否か」への回答を基に、回答者がポピュリストか非ポピュリストかを属性付けている(回答者自身はその結果を知ることは無い)。「一般の人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にしない」との回答ならポピュリストの属性に区分され、「選挙で選ばれた人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にする」ならば非ポピュリスト、いずれか・双方の設問で回答をしなかった人などは中庸的立場と区分される。
↑ ポピュリストか非ポピュリストか(2017年10-12月)
一番ポピュリストが多いのはスペインで45%、次いでイタリアの43%、フランスの40%。非ポピュリストの方が多い国はオランダ、デンマーク、スウェーデンの3か国に留まっている。スペインは中庸派の割合すらも超え、この区切りの限りでは最大の値を示していることになる。
単純にポピュリズムを標榜するポピュリストといっても中身は多様だが、昨今ではそれを党是に掲げて支持を求める政党も多数出ている。グラフ化は略するが報告書でも諸国の主要なポピュリズムを党是に持つ政党への支持度合いが調査対象となっており、明らかにポピュリストにおける支持率が高いものとなっている(例えばスウェーデンのSweden Democrats党への支持率は、非ポピュリストが10%、中庸派が20%なのに対し、ポピュリストからの支持は38%にも達している)。
単に民衆への聞こえがよい話ばかりを並べ立て、要望をストレートにかなえさせるというのがポピュリズムの本髄だが、世の中の実情はそれができるほど甘いものでは無い。それができるほどのリソースがあるのなら、そもそもポピュリズムの考えが生じるような状況になっているはずも無い。また容易にファシズムや反社会的策動に流用される危険性もある。
今件結果に関して傾向としては、政情不安定な国ほどポピュリストの比率が高いのでは無く、南部の国ほど高め、北部ほど低めのように見受けられる。民族性が少なからぬ影響を及ぼしているのかもしれない。
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