報道の政治的中立性への評価、イギリスでは37%…西欧諸国でのニュースメディアへの評価の違い
2018/11/27 05:22
ニュースメディアは国家社会を構成する個人を相手に、個人では取得が難しい領域や社会全体の出来事を分かりやすく、そしてもちろん正しく知らしめて、個人が的確な判断をできるような環境づくりをする存在意義がある。しかしながらその存在意義がどれほどまで果たされているか疑わしいのが実情ではある。このニュースメディアへの複数の視点からの西欧諸国における評価について、アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月14日に発表した調査【「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」】の報告書を基に確認していく。
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ニュースメディアを評価する5つの視点
今調査の調査要綱は先行記事【西ヨーロッパ諸国でニュースの情報源としてもっとも使われているのはテレビ、デンマークやスウェーデンではオンラインが最多】を参照のこと。
次に示すのはそれぞれの視点に関してニュースメディアの仕事ぶりにおいて「大変よくやっている」「それなりによくやっている」「あまりよくやっていない」「まったく駄目」の4選択肢のうち1つを選んでもらい、そのうち肯定派に当たる「大変よくやっている」「それなりによくやっている」を合算した値。要は該当視点においてニュースメディアを評価する人の割合となる。
↑ 次の観点に関してニュースメディアは「大変よくやっている」「それなりによくやっている」(2017年10-12月)
国別動向としてはイギリスは元々ニュースメディアへの信用度合いが低いこともあり、評価そのものも他国と比べると低めに出ている。他方、スウェーデンやデンマーク、オランダなど位置的に北側にある国の値は高め。
国によって評価の違いはあるが、おおよそどの国でも「日々の重要な話の把握」への評価は高く、「政府の動向確認」「事実の正確な把握」「企業の影響力からの独立性」「報道の政治的中立性」となるに連れて評価は落ちていく。他方、ドイツやイタリアでは「日々の重要な話の把握」が一段と高くその他の視点への評価は低い、デンマークやオランダでは大きな違いが出ていないなど、国によってニュースメディアへの評価の違いが大きく出ているのは興味深い。
「報道の政治的中立性」はどの国でも評価の度合いは低い。特にイタリアやイギリスでは4割を切っている。5割を超えているのはデンマークとスウェーデンのみ。もっともその2国でも評価できる人は半数程度しかいないとの解釈も可能だ。
ポピュリストはニュースメディアを評価しない
今件につき、最近特に問題視されているポピュリストか否かに区分した上で、2つほど視点を挙げて評価の違いを確認していく。今調査におけるポピュリストの定義などは【ニュースメディアは国家社会を機能させるのに重要か否か、西ヨーロッパ諸国の実情】を参照のこと。
まずは「事実の正確な把握」における評価。
↑ 次の観点に関してニュースメディアは「大変よくやっている」「それなりによくやっている」(事実の正確な把握、ポピュリスト・非ポピュリスト別)(2017年10-12月)
事実に関して正確に把握をすることはニュースメディアにおいては必要不可欠な機能ですらあるのだが、一様にポピュリストの方が非ポピュリストと比べると肯定派は低い。これはポピュリストには元々現在の国家社会には問題がある、否定すべきだの認識が多少なりとも存在し、そう思わせる状況の一因としてニュースメディアが期待している機能を果たしていないと考えている人がいるからだろうと思われる。つまりニュースメディアが責任を果たしていないから現状のような社会となっており、そのような状況に追いやったニュースメディアを評価できるはずは無いとするもの。
イタリアやフランスでは両派の差はさほどないが、ドイツやスペイン、スウェーデン、イギリスでは大きめの差が出ている。特にドイツでは32%ポイントもの差が生じており、同国におけるニュースメディアが伝える内容への嫌疑の度合いが両派で大きく分かれていることがうかがえる。
もう一つは「報道の政治的中立性」。ニュースメディアが機関紙化してしまっては、公共の利益には貢献しないことになるので、受け手側としては事は重大なのだが。
↑ 次の観点に関してニュースメディアは「大変よくやっている」「それなりによくやっている」(報道の政治的中立性、ポピュリスト・非ポピュリスト別)(2017年10-12月)
やはりこの視点でも、一様に一様にポピュリストの方が非ポピュリストと比べると肯定派は低い。理由もまた「事実の正確な把握」と同じと見てよいだろう。
両派間ではイタリアとイギリスはさほど差は無いものの、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデンと多くの国では大きな差が出ている。特にフランス、ドイツ、スウェーデンでは際立った差異が確認できる。暴走感の強いリベラリズムの台頭や移民問題でよく名前が見聞きされる国が並んでいるだけに、色々と考えさせられる結果には違いない。
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