米国の子供達のデジタル格差の実情
2018/11/06 05:02
情報取得のツールとして、今では日常生活において欠かせない存在となったインターネット。気軽さや機動力の観点ではスマートフォンがもっとも優れているが、本格的な調べものをする時や情報の精査の上では、パソコンの方が使いやすいことは否定できない。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerによる調査結果を基に、同国の子供達におけるインターネット接続やパソコンの利用環境の実情を確認していくことにする(【Nearly one-in-five teens can’t always finish their homework because of the digital divide】)。
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今調査の調査要綱は先行記事【デジタル格差は米国の子供達の間にも生じている】を参照のこと。
その先行記事でも記している通り、自宅も含めてパソコンやインターネットへの接続環境が満足に得られず、調べごとが思うがままにできないため、宿題を終わらせることに難儀しているという子供が少なからずいる。そしてそれは多分に、世帯年収が低い子供ほど多い。
↑ パソコンやインターネットへの接続環境が満足に得られないので宿題を終わらせることができないことがしばしば・時々ある(アメリカ合衆国、13-17歳)(2018年3-4月)(再録)
それでは子供達の自宅におけるインターネット環境はどのような実情なのだろうか。まずは自宅にインターネット接続ができるパソコンが無い子供の実情。
↑ 自宅にインターネット接続ができるパソコンが無い(アメリカ合衆国、13-17歳)(2018年3-4月)
全体では12%の子供が、自宅にはインターネット接続ができるパソコンが無いと回答している。見方を変えると88%があることになる。ただしパソコンが旧式だったり、インターネットの接続速度が低速の場合もある。それでもパソコンでインターネットが接続可能なのには違いないのだが。
人種別ではややヒスパニックが高めで18%、世帯年収別では明確な形で低年収の方が高率を計上している。3万ドル未満では実に1/4の子供が自宅にインターネット接続可能なパソコンが無い状態。無論、パソコンが無くてもスマートフォンなどを使う、公共の接続環境を借りるなどをすればインターネットへの接続は可能だが、自宅にパソコンがある人と比べると、利用時のハードルが高いことに違いは無い。
現状では事実上インターネットへの接続はブロードバンドで無いと使い物にならないことから、ブロードバンド環境が使えるか否かの点で、もう少し詳しく見ていくことにする。次以降に示すのは【使い始めると沼的存在になりそう...公開データベースIPUMSとは】でも解説している、アメリカ合衆国のミネソタ大学人口研究所による多角的データベースIPUMS(Integrated Public Use Microdata Series)を一次データとしているもの。6-17歳の子供がいる世帯のうち、ブロードバンド環境が自宅に無い世帯の割合を記したもので、全体では15%となっている。
↑ ブロードバンド環境が自宅に無い(アメリカ合衆国、IPUMS、6-17歳の子供がいる世帯限定、世帯主人種別)(2015年)
世帯主の人種別では白人が低く、黒人とヒスパニックが高い。アジア系は意外にも今区切りではもっとも低い値。ただし今件が人種間の傾向というよりは、人種に連なる世帯年収に連動する影響が大きいことは先の記事で記したとおりであり、また今調査の報告書にも記されている。
しかしながら厳密に、世帯年収だけに限った話でも無いことは、次のグラフから見て取れる。
↑ ブロードバンド環境が自宅に無い(アメリカ合衆国、IPUMS、6-17歳の子供がいる世帯限定、世帯主人種別・世帯年収別)(2015年)
同じ世帯主人種間ならば明確に低年収の方がブロードバンド環境を持つ世帯比率が低いことが明らかにされているが、同時に同じ年収区分でも人種によって誤差を超えた差異が生じていることが分かる。全体値同様、アジア系はとても低く、白人は中庸、そして黒人とヒスパニックは高め。世帯年収が7.5万ドル以上の世帯でも、アジア系は2%、白人は4%しかないにもかかわらず、黒人・ヒスパニックは9%の世帯が該当することになる。
この人種間の際について報告書では特に解説は無い。代わりに、子供におけるデジタル技術の環境の差異が、そのまま学力の差異につながる可能性を示唆している。実際に、自宅にパソコンへアクセスできる環境を持つ子供の方が、そうで無い子供と比べ、高校を卒業できる可能性が高いとの調査結果もあるとのこと。色々と考えさせられる結果ではあり、日本の実情も思い返される次第ではある。
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