デジタル格差は米国の子供達の間にも生じている
2018/11/05 05:15
今では子供達の勉強スタイルにおいても、インターネットを辞書や先生の代わりに用いて勉強をするのが当たり前になっている。しかしそれは見方を変えれば、インターネットが使える人と使えない人との間では、子供達の間においてもデジタル格差が勉強面で生じていることになる。実際にはどの程度の格差が生じているのか、インターネット関連の教育では先進的なイメージの強い、アメリカ合衆国の事例を確認してみることにする(【Nearly one-in-five teens can’t always finish their homework because of the digital divide】)。
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今調査は2018年3月7日から4月10日にかけてアメリカ合衆国に住む13-17歳の子供に対して電話による通話とオンラインによって行われたもので、有効回答数は743人。白人は355人・黒人は129人・ヒスパニックは202人(合計が743人にならないが、報告書ではアジア系は回答数が少ないため人種別精査時には除外したとの説明がある)。世帯年収比率は3万ドル未満が199人・3万-7.5万ドル未満が266人・7.5万ドル以上が278人。
まず最初に示すのは携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォン双方。インターネットへの接続ができることが前提)を使って、宿題をすることがしばしば、あるいは時々ある人の割合。学校で利用を禁止しているか否かの問題もあるが、全体では35%が使っていると回答している。
↑ しばしば・時々自分の宿題をする時に携帯電話を使う(アメリカ合衆国、13-17歳)(2018年3-4月)
人種別では黒人がやや少なく、ヒスパニックが多い。他方世帯年収別では明確に低年収の方が高い値を示している。単純に低年収の方が携帯電話を利用している率が高いのではなく、宿題のサポートとしてはもっと使いやすいであろうパソコンを利用する環境が無いため、代替手段として携帯電話を使っていることが推測できる。
それを裏付けるのが次の設問。パソコンやインターネットへの接続環境を得られないため、宿題が満足にできないことがしばしば・時々あるとの設問に、全体では17%が同意を示しているが、世帯年収別では低年収ほど高い値が計上されている。
↑ パソコンやインターネットへの接続環境が満足に得られないので宿題を終わらせることができないことがしばしば・時々ある(アメリカ合衆国、13-17歳)(2018年3-4月)
人種別では黒人においてもっとも高い値を示しており、黒人における低年収世帯の比率が高いことをうかがわせる値となっている。
自宅にインターネット環境が満足に整備されていない、携帯電話を持っているが通信料金を考えると自由に使えないなどの事情から、公共のWi-Fiを使うという選択肢を選ぶ場合もあるだろう。この回答率もやはり低年収世帯、黒人の値が高いものとなっている。
↑ 自宅にインターネット接続環境が無いので公共Wi-Fiを使って宿題をやることがしばしば・時々ある(アメリカ合衆国、13-17歳)(2018年3-4月)
全体では12%に留まっているが、3万ドル未満の世帯では21%、黒人では21%となっている。自宅に十分なブロードバンド環境が整備されている、あるいは携帯電話を用いるにしても通信料金をあまり気にすることが無ければ、わざわざ公共Wi-Fiを使う必要は無い。
インターネットを使って宿題ができない状況は、例えば外国語を学習する際にその言語の辞書が使えない、自宅に保有しておらず図書館まで足を運ばないと利用できないようなもの。宿題が満足にできる・できないの環境の差は、当然勉強そのものの環境のよし悪しとなり、子供の学力向上の上での格差につながっていく。デジタル格差は多分にお金の問題によるものだが、それが子供の学力の差にもつながる可能性を示唆する結果には違いない。
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