眼鏡とコンタクトレンズの普及傾向を世帯単位で検証(最新)
2024/10/05 02:31
眼鏡やコンタクトレンズのような視力補正ツールの利用実情は、子供ならば【子供達の視力の推移】にある通り、文部科学省の学校保健統計調査で把握ができるが、大人については公的機関による継続的な調査は見当たらない。眼鏡やコンタクトレンズの利用者が増えていると思われる昨今においては、実情の把握は必要不可欠と思われるだけに、残念な話には違いない。今回は疑似的な方法ではあるが、総務省統計局が継続調査を行っている【家計調査(家計収支編)】の結果を基に、世帯単位での眼鏡やコンタクトレンズの普及実情、そして過去からの推移を確認していくことにする。
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単身世帯ではコンタクトレンズの普及が見える結果
家計調査では世帯ベースにおける、眼鏡やコンタクトレンズの年間購入頻度や支出金額を確認できる。購入個数や単価は分からないが、実情を推し量る指標を得ることは可能だ。
まずは世帯種類別に区分した上で、単身世帯を確認する。全部の世帯となる総世帯での精査を行わないのは、今世紀に入ってから単身世帯の世帯数・全世帯に対する比率が増加しており、単純比較をしたのでは世帯種類別構成比率の変化が大きく影響を与えてしまうため。なお単身世帯のデータは2002年の値が最古となっている。
まずは世帯購入頻度。1度に2個以上購入した場合も、頻度としては1回とカウントされる。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズの世帯購入頻度(単身世帯、100世帯あたり)
コンタクトレンズは2002年から2006年にかけて、そして2014年以降において、眼鏡は2014年以降、世帯購入頻度がおおよそ増加している。特にコンタクトレンズの2015年以降の増加は著しく、2017年では眼鏡と同じく100世帯あたり年25回の購入が確認できる。直近の2023年では同年の眼鏡より1回少なく24回。元々コンタクトレンズは眼鏡と比べると買い替え頻度は高かったが、利用者が少なかったために100世帯あたりの世帯購入頻度は低い値に抑えられていたものの、利用者の増加に加え、衛生面の観点から短期で交換する使い捨てタイプが普及しつつあるのが、世帯購入頻度の上昇の原因と考えられる。
支出金額では大きな変化は無いように見える。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズへの支出金額(単身世帯、円)
あえて言えばコンタクトレンズの支出金額が漸増しているように見える程度。また眼鏡は2018年以降、減少の動きを見せているように感じられる。コンタクトレンズにおいて世帯購入頻度が増えているのに支出金額に大きな変化が生じていないのも不思議に思えるが、単価下落に加え、単身世帯における高齢者(=利用しない人が多い)比率の増加が大きく影響しているものと考えられる。一方、眼鏡も世帯購入頻度が増加しているのに支出金額に大きな変化がないのは、単純に単価の下落によるものと考えられる。この数年では下落しているのは、世帯購入頻度の増加の勢い以上に、眼鏡の単価が下落しているのだろうか。
実際、最古の値となる2002年分と直近の2023年において、世帯主年齢階層別(=本人の年齢階層別)の支出金額を見ると、この20年強でコンタクトレンズ利用者が増え、年齢階層別においては59歳までに浸透した実情がうかがい知れる。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズへの支出金額(単身世帯、世帯主年齢階層別、円)(2023年)
↑ 眼鏡とコンタクトレンズへの支出金額(単身世帯、世帯主年齢階層別、円)(2002年)
しかしながら眼鏡主流派となる60歳以上(コンタクトレンズの使用はほとんど無い)の世帯比率が増加しているため、全体としては支出金額の増加は非常にゆるやかになっているという次第である。購入世帯数が調査対象項目となっていれば、もう少し詳しく実情を確認できるのだが、残念ながら単身世帯ではその項目は調査対象外となっている。
二人以上世帯では明らかな増加
続いて二人以上世帯。世帯主だけでなく世帯構成員のいずれかにおいて購入行動をすれば、該当することに注意。二人以上世帯においては最古の値は2000年分となっている。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズの世帯購入頻度(二人以上世帯、100世帯あたり)
眼鏡はゆるやかに、コンタクトレンズは大きな傾斜を示す形で増加している。2013年から数年間は横ばい、減少の気配が見られるが、それも一時的なもの。2008年を分岐点として、世帯購入頻度の観点では眼鏡とコンタクトレンズの立ち位置がほぼ逆転してしまっている。もっとも、これは単にコンタクトレンズの普及が進んだだけでなく、上記で説明している通り、衛生面の観点から短期で交換する使い捨てタイプが普及しつつあるのも大きな要因だろう。なお2020年で両方とも前年比で下落したのは、新型コロナウイルス流行による外出忌避が影響している可能性がある。
支出金額は興味深い動きを示している。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズへの支出金額(二人以上世帯、円)
眼鏡はおおよそ減少(2016年以降は横ばいに転じたような雰囲気もある)、コンタクトレンズは緩やかながらも増加の傾向にある。眼鏡、コンタクトレンズともに単価は減少していることは容易に想像できるが、一方で眼鏡は利用者数がさほど増えるほどではなく、さらに品質の向上で買い替え機会が減っている可能性もある。コンタクトレンズの利用者数は増加、さらには上記の通り世帯購入頻度の上昇に伴い、支出金額が増加する形となったのだろう。
コンタクトレンズの利用者が増えているであろうことは、単身世帯では調査項目とならなかった購入世帯数の動向からも明らか。なお今値は、年間に世帯構成員の誰か一人でも購入すれば該当したことになる。また何回購入しても1世帯は1世帯のまま。延べ世帯数としてのカウントではない。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズの購入世帯数(二人以上世帯、1万世帯あたり)
平均世帯構成員数は減少の傾向にあるため、他条件がそのまま維持されていれば、値は漸減するはず。しかしながらコンタクトレンズの購入世帯数は明らかに増加し、眼鏡も緩やかながら増加の傾向を示している。視力補正者率が上昇し、その中でコンタクトレンズが大いに普及しつつあると見てよいだろう。
二人以上世帯では年齢階層別の値に関して取得可能な最古の年は2002年なので、その値と直近の2023年分について、年間支出金額を比較すると次の通りとなる(比較しやすいよう両グラフで縦軸は揃えている)。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズへの年間支出金額(二人以上世帯、世帯主年齢階層別、円)(2022年)
↑ 眼鏡とコンタクトレンズへの年間支出金額(二人以上世帯、世帯主年齢階層別、円)(2002年)
眼鏡の購入金額が大きく減り、その分、コンタクトレンズが増えている。眼鏡の単価減少と耐久性の向上、コンタクトレンズの50代までの浸透ぶりが改めて確認できる。60代以降もコンタクトレンズ派はそれなりに確認できるが、それでもまだ眼鏡派が圧倒的。もっとも60代以降の場合、白内障の手術により眼鏡が不要になるケースも増えているのかもしれない。
視力補正をする人が増えていること、その中でコンタクトレンズの利用者が中年層までの間で大きく増加しているであろうことは、世帯購入頻度を見ればさらによく分かる。
↑ 眼鏡とコンタクトレンズの世帯購入頻度(二人以上世帯、100世帯あたり、世帯主年齢階層別)(2022年)
↑ 眼鏡とコンタクトレンズの世帯購入頻度(二人以上世帯、100世帯あたり、世帯主年齢階層別)(2002年)
眼鏡も多少は増えているが、コンタクトレンズの伸び方が著しい。無論、利用スタイルの変化も一因ではあるのだが。
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