ソーシャルメディアでの情報発信によるトラブル経験、その国際比較(最新)
2018/09/05 04:37
ソーシャルメディアは個人による不特定多数への情報発信を容易にする画期的なツールではあるが、それは同時にその情報発信によるトラブルのリスクが高まることをも意味する。今回は総務省が2018年7月3日に公開した2018年版となる最新の【情報通信白書】にて行われている独自の調査の結果を基に、日本も含めた主要国における、ソーシャルメディアで情報発信をした人が遭遇した、その情報発信に関連するトラブルの実情を確認していくことにする。
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該当調査は「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」。調査要綱は先行記事の【日本や諸国のソーシャルメディア利用実情】を参照のこと。
次に示すのは日本、アメリカ合衆国、ドイツ、イギリスそれぞれの国でソーシャルメディア(狭義ではSNSに区分されるFacebookやTwitter、Instagramだけに留まらず、LINEやブログ、掲示板、YouTubeなども含む)で情報発信をしている人に限定し、その情報発信に関連してどのようなトラブルを経験したことがあるかを尋ねた結果。総括して何らかのトラブルに遭遇した経験があると自認している人は日本では23.2%だが、アメリカ合衆国では56.9%と過半数、ドイツでも50.0%と半数を計上している。
↑ ソーシャルメディアの情報発信者が経験したトラブル(複数回答、国別)(2018年)
具体的なトラブルの内容としてもっとも多いのは「誤解」、具体的には自分の発言が自分の意図とは異なる意味で他人に受け取られてしまったなどが挙げられており、日本では13.6%、アメリカ合衆国ではほぼ2倍の26.4%。大よそ文字でのやり取りとなるソーシャルメディアでは生じがちなトラブルだが(画像や動画でもリアルタイムでのやり取りではないため、発した意図とは異なる受け止められ方をする可能性はある)、この誤解がけんかや炎上などに連鎖する可能性もあり、困った話には違いない。
第2位は「けんか」、具体的にはネット上で他人と言い合いになったことがあるというもの。単純に自分か相手がけんかっ早い、元々考えが対立的な場にあって双方とも攻撃的だったなどのケースが考えられる。そして「不本意な他人中傷」、具体的には自分は軽い冗談のつもりで書き込んだが、他人を傷つけてしまったというもので、こちらも日本は低め、他の国では高め。ただしアメリカ合衆国が他国と比べて有意に高い値を示しているのが興味深い。
具体的項目の上位「誤解」「けんか」「不本意な他人中傷」はいずれも、発信者側の書き込みによる情報発信時の意図のすれ違いによるところが大きいもの。不思議なことにこの傾向はどの国でも共通している。この傾向について白書では次のように分析している。
相手の正体がはっきりとは分からない、場合によっては意図していない相手にすら到達してしまう、手探りの中でのコミュニケーションの難しさが、ソーシャルメディアにおける情報発信者のトラブルにつながるというものだが、説得力のある分析に違いない。
続く「暴露」、具体的には自分の意思とは関係なく、自分について(個人情報、写真など)他人に公開されてしまったとするもので、日本では4.8%、アメリカ合衆国では13.1%。似たような話として「特定」、具体的には自分は匿名のつもりで投稿したが、他人から自分の名前などを公開されてしまったなどが日本では2.4%、アメリカ合衆国では8.9%。続く「なりすまし」も含め、インターネット上のコミュニケーション特有のトラブルともいえるもので、コミュニケーション時のトラブルとしては新しいタイプに分類されると見てよいだろう。
回答率の差異こそあれど、ソーシャルメディアの情報発信者が経験するトラブルのたぐいは(今回取り上げられた国に限れば)各国共通のもので、傾向にも大きな違いは無い。それぞれの国における一般常識や社会通念の違いはあるものの、共通の問題として認識し、他国の対応策でよいものがあれば、大いに参考にすべきであると考えてもよいだろう。
なお日本のトラブル経験率が低い件に関して白書では「低い割合である」とのみあり、具体的な分析は無い。もっとも他項目で元々日本のソーシャルメディア利用者においては情報発信の積極性が低いとの結果が出ていることから、回答者自身が「積極的に情報を発信している」と認識していても、その実情は海外よりは緩やかなもので、結果として情報発信者自身における情報発信度合いは少なめとなり、トラブルに遭遇する割合が低くなるのかもしれない。
同時にこちらも他項目での話となるが、他国と比べて日本ではソーシャルメディアなどで知り合う人への信頼度合いが低く、疑り深い傾向がある。これもまた、トラブルを避ける一因となっているのだろう。
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