日本は34.1%…国民負担率の国際比較(最新)
2024/02/01 02:34
消費税や社会保険料の料率や金額の動向が定期的に話題に上るが、これは生活に直結するお金関連の話だからに他ならない。これらの国、社会全体のための個人や組織の金銭的負担は、他国と比べてどのような水準にあるのだろうか。今回はOECD(経済協力開発機構)の公開データベース【OECD.Stat】の「Public Sector, Taxation and Market Regulation」内「Taxation」にある【「Revenue Statistics - OECD Member Countries」】の公開値を基に、OECD加盟国における実情を確認していくことにする。
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まずは言葉の定義。国に対する金銭的な負担(国民負担)は大きく租税と社会保障に分けられる。図式としては国民負担=租税負担+社会保障負担(【財務省の「国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD加盟36カ国)」】の用語を適用)。OECDでは社会保障負担に関して【Social security contributions】で定義をしているが、それによれば将来における何らかの不利益に対して国から便益(社会給付)を受ける資格を得るために必要な強制的支払いであると定義している。具体的には事故や障害、病気に対するサポート、老化や障害などに対する年金支払い、医療費などへの対応などが該当する。日本ならば健康保険料や年金保険料が該当する。会社組織の場合、従業員が支払う額に加え、会社側が負担する額も含まれる。社会保障や租税の仕組みは国々で異なるため、個々の値を単純比較するのは問題が生じるが、OECD側では極力同一の基準で合算し、比較ができるような値として公開している。また、租税負担には法人税や、間接税となる消費税なども含まれている。
最初に示すのは租税負担と社会保障負担を合わせた国民負担。単純な金額ではなく、それぞれの国の対GDP比率で算出している。要は国内で新たに生み出された商品やサービスの付加価値のうち、どれほどが国全体を支えるために徴収されているかを示したもの。直近値は2022年分だが、一部の国ではそれ以前の値までしか公開されていないため、その場合は一番新しい値を適用している。
↑ 国民負担率の国際比較(OECD加盟国、対GDP比)(2022年あるいは最新年)
国により社会保障制度には違いがあるため、同一基準で値を抽出すると社会保障負担率がゼロ、あるいはそれに近い値となる国がある。その国は社会保障が行われていないのではなく、租税からまかなわれているまでの話。
全体的な国民負担率で見ると、もっとも高負担なのはフランスの46.1%、次いでノルウェーの44.3%。さらにオーストリアの43.1%と続く。OECD平均では34.0%。おおよそGDPの1/3が国全体を支えるために徴収されていることになる。
日本はといえば国民負担率は34.1%。OECD加盟国の中では日本は国民負担率は高い部類に入る。
続いて租税負担と社会保障負担を分けて順序立てする。まずは租税負担。
↑ 租税負担率の国際比較(OECD加盟国、対GDP比)(2022年あるいは最新年)
社会保障負担が実質的に租税負担と合算されているデンマークが飛びぬけて高い値を示している。他方、同様の社会システムを採用しているニュージーランドやオーストラリアも高めだが、デンマークほどではない。OECD平均は25.3%。
日本はといえば20.8%で、OECD加盟国では下から9番目の低さ。消費税などの間接税を加えても、日本では租税負担は低いことが分かる。
他方、社会保障負担ではどうだろうか。
↑ 社会保障負担率の国際比較(OECD加盟国、対GDP比)(2022年あるいは最新年)
OECDの平均は8.8%。最大値を示すのはスロベニアの16.0%、次いでチェコの15.8%、フランスの15.0%と続く。日本は13.3%でOECD平均よりも高い値。
実質的な社会保障への資金の投入に関しては国ごとに仕組みが異なるため、単純な金額だけでの比較はリスクを伴うものになる(その発想ではニュージーランドやオーストラリア、デンマークは社会保障をしていないことになるが、それは間違いでしかない)。他方、他国との比較の限りでは、日本は国民負担はどちらかといえば高めのレベルで、租税負担は相当低い状態にあるのが現状ではある。
政府のそろばん勘定の上では、歳入が少ない以上、歳出も相応のものにする必要がある。詳しくは別途検証するが、足りない分を国債の発行などで補っているとはいえ、日本は実質的に「小さい政府」状態にある(むしろ逆で、歳入が少ないからこそ国債発行額が増えているとも表現できる)。国に何らかの施策上の改善を求めるとすれば、税率の引き上げや経済そのものの拡大による歳入の増加を推し進める必要があるかもしれない(GDPそのものが増加すれば、対GDP比はそのままでも金額は増えることになる)。
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