宅配ロッカーの利用者率は0.7%
2018/02/01 04:58
インターネット通販の普及に伴い宅配便の需要が加速度的に増加している。しかし体制の強化が追い付かずにオーバーワークな状態が続いているのは各報道や実体験ですでに承知の通り。その状態を改善させる方策の一つとして、駅やコンビニ、デパートなどの公共スペースに、誰もが利用できる宅配ロッカーを設置して、そこに荷物を配送してもらうとの手法がある。この宅配ロッカーについて、利用実情や宅配便を利用している人の考えを内閣府が2017年12月25日に発表した再配達問題に関する世論調査の結果を基に確認していく(【発表リリース:再配達問題に関する世論調査】)。
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今調査の調査要綱は先行記事【再配達はどれぐらいの割合で生じているのだろうか】を参照のこと。
宅配便がオーバーワーク状態な理由の一つとして挙げられるのが、再配達のケースが多いこと。荷物の受け渡し場所まで足を運んでも不在で受け渡しができなければ、再度訪問する必要があるため、言葉通り二度手間となる。本来ならば2件分の荷物を運べるリソースが1件分の荷物で費やされてしまう(再配達時に不在ならば、さらなるリソースの浪費が生じる)。
そこで受け取りを確実にするための手法の一つとして提案され、整備が進んでいるのが宅配ロッカー。コンセプトとしてはコインロッカーと同じようなもので、駅やコンビニ、デパートなどの公共施設に設置し、そこで荷物を受け取れるようにするもの。利用者は再配達や商品購入時に希望の場所の宅配ロッカーを選択すると、宅配業者はその宅配ロッカーに荷物を配送し、その荷物受け取り用のパスワードを利用者に送付する。利用者はそのパスワードを用いて宅配ロッカーから荷物を受け取る仕組み。もっとも、大型の荷物となると自宅に持ち帰るまでに苦労することになる、プライバシーや防犯面でのリスクが懸念されるなど、大型マンションでの設置以外に関しては、問題点も少なからずある。
この宅配ロッカーを利用したことがあるか否かについて尋ねたところ、利用経験者は0.7%に留まっていた。
↑ 宅配便の荷物を受け取るために宅配ロッカーを利用したことがあるか(2017年10月-11月)(「その他」「分からない」を除いて再計算)
家族従事者で2.8%、60代で1.5%とやや高めの値が出ているが、それでも全体から見ればごくわずかな値には違いない。利用できる場所が無いのも原因の一つだろうが、利用を推進している側としては物足りない結果ではある。
それでは現在利用経験が無い人は、自宅近所や職場周辺など利用できる範囲内に宅配ロッカーが設置された場合、利用したいと思っているだろうか。全体では4割強の人が利用したいと回答している。
↑ 自宅近所や職場周辺など利用できる範囲内に宅配ロッカーが設置された場合、利用したいと思うか(宅配ロッカーを利用したことが無い人限定)(2017年10月-11月)
意外にも東京都区部では利用希望者率が低い。それ以外は大よそ大都市圏ほど利用希望者率が高い傾向がある。また年齢階層別では若年層ほど、就業上の地位別や世帯構成別では自宅にいない時間が長い人ほど、利用希望者率が高い。需要を考えれば納得のできる結果ではある。
ではなぜ利用が容易な場所に宅配ロッカーが設置されても、利用したいとは思わないのだろうか。利用したいとは思わない人にその理由を尋ねたところ、もっとも多い意見は「常に1回で受け取っているから」だった。
↑ なぜ宅配ロッカーを利用したいと思わないのか(複数回答)(宅配ロッカーを利用したことが無く、利用したいと思わない人限定)(2017年10月-11月)
「常に1回で受け取っているから」は在宅勤務者や専業主婦がいる世帯など、自宅にいる時間が長い、不在リスクが低い人が主だが、他にも時間指定を欠かさずに行い確実に受け取れるように配慮している人も対象となり得る。自宅で受け取れるのにわざわざ宅配ロッカーで受け取るのは意味が無い。
「手間がかかる」は31.0%。事前登録やパスワードの取得、宅配ロッカーのある場所まで足を運ばねばならないなど、受け取り側の手間は増える。それらをしてまで再配達を避けたくは無いとの判断によるもの。さらに似たような発想として「再配達してもらえばいいから」も22.7%と高い値を示している。再配達を選択するのも受け取り側の自由ではあるが……。
「セキュリティに不安があるから」との意見も19.2%と高め。これはパスワードを盗取されて他人に荷物を取られてしまうのでは無く、宅配ロッカーで受け取った際に、あるいは受け取って自宅に戻るまでの間に奪われる可能性を懸念したものだろう。
自宅用に宅配ロッカーを設置している、自分で受け取りが容易にできる人ならまだしも、再配達を前提にしている人には、是非とも選択肢の一つとして宅配ロッカーを活用してほしいものではある。一つの手立てとして、再配達は料金加算、あるいは一度で受け取れれば何らかのメリットが得られる仕組みも考察されている。そのような仕組みが導入された場合、宅配ロッカーの利用希望状況はどのように変化するのか。気になる話ではある。
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