通勤の友の実情(最新)

2018/05/16 05:17

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018-0112自宅と職場との行き来を通勤と呼ぶが、その移動手段としてはバスや鉄道のような公共交通機関によるところが多い。それらを利用する場合、移動中の時間を用いて新聞を読んだりスマートフォンを使うなど、ある程度自由な行動の中で時間を過ごすことができる。この通勤における同時行動の実態について、総務省統計局が2017年7月14日以降順次結果を発表している2016年社会生活基本調査の結果を用い、複数の視点で確認していく(【平成28年社会生活基本調査】)。



スポンサードリンク


通勤の友はスマートフォン


今調査の調査要綱は先行記事【ボランティア活動の実態】を参照のこと。

まず最初に示すのは通勤時に同時行動(いわゆる「ながら行動」)として何をしているかについて、代表的な行動内容をいくつか挙げ、その行動者率を確認したもの。通勤をしている人に対する割合となる。また冒頭で触れたバスや鉄道のような公共交通機関の利用以外に、徒歩や自転車、バイクや自動車などによる通勤のスタイルもあることに留意をしておく必要がある(例えば自動車通勤ならばスマートフォンの操作や新聞・雑誌の閲読は不可能)。なお「コンピューターの使用」とはパソコンだけで無くスマートフォンや従来型携帯電話、タブレット型端末などを用いたインターネットの使用も含まれている。

↑ 通勤時の同時行動者率(2016年、15歳以上全体、平日)
↑ 通勤時の同時行動者率(2016年、15歳以上全体、平日)

「コンピューターの使用」がもっとも多く、男性では6.7%、女性は3.7%。似たような行動の「電子メールなどによる交際・付き合い」も合せればそれぞれ6.9%、4.1%となる。「新聞・雑誌」は男性0.8%、女性0.1%。想像以上に少ないかもしれないが、これは前述の通り鉄道やバスに限らず、全通勤者を対象としたものであるのが原因(鉄道やバスの通勤者に限ったデータは無い)。

また男性と比べて女性の値が低めなのは、女性の就業形態としては自宅近所の職場でのパートやアルバイトが多く、公共交通機関を使って通勤する人の割合が低いからだと考えられる。

ともあれ現状では通勤の友的な存在は、新聞や雑誌、書籍よりもコンピューター、多分にスマートフォンであることが改めて確認できる。

これを年齢階層別に見たのが次のグラフ。まずは男性。

↑ 通勤時の同時行動者率(2016年、年齢階層別、男性、平日)
↑ 通勤時の同時行動者率(2016年、年齢階層別、男性、平日)

まず男性だが、20代後半は「コンピューターの使用」が33.6%とずば抜けて高い値を示している。20代後半の約1/3は通勤時にスマートフォンなどを使用している計算になる。30代から40代までは1割前後、50代でも4%前後が使っている。「新聞・雑誌」は30代後半でやや伸びるが、あとは50代前半で最大値の3.1%を示す程度。

次いで女性。

↑ 通勤時の同時行動者率(2016年、年齢階層別、女性、平日)
↑ 通勤時の同時行動者率(2016年、年齢階層別、女性、平日)

男性と比べて値そのものは低いが、「コンピューターの使用」が若年層全般にわたって一定の値を計上している。20代から30代は通勤者の1割前後が、通勤時にスマートフォンなどを使っていることになる。他方、「CD・音声ファイル」も若年層を中心によく使われている。

「新聞・雑誌」は押しなべて低め。「読書」も男性と比べると低い。通勤スタイルそのものの違いが反映されている。

通勤の友の昔と今と


続いて経年変化を確認する…のだが、社会生活基本調査では同時行動の調査は2006年以降のみの実施で、「コンピューターの使用」の選択肢は2011年以降のみ、さらに「CD・音声ファイル」は2006年時点では「CD・カセットテープ」となっている。連続性の上でやや問題があるが、この際妥協する。

↑ 通勤時の同時行動者率(男性、平日、15歳以上)
↑ 通勤時の同時行動者率(男性、平日、15歳以上)

↑ 通勤時の同時行動者率(女性、平日、15歳以上)
↑ 通勤時の同時行動者率(女性、平日、15歳以上)

男女差が生じるのは昔も今も変わらず。他方、男女ともに2011年から2016年にかけて「コンピューターの使用」が大きく伸びたことが分かる。5年の間に通勤者の間で大きなポジションを一気に獲得した形だ。

一方で意外にも、男性では「読書」「新聞・雑誌」、男女ともに「CD・音声ファイル」の行動者率もわずかずつだが増加しているのが確認できる。女性は逆に「読書」で減り、「新聞・雑誌」は誤差範囲内での動きに留まっているなど、興味深い動きも見受けられる。

ともあれ、男女を問わずに通勤の友が、2011年から2016年の間に、一気に交代したことには違いない。

年齢階層別でもデータを取得することは可能だが、誤差が多分にあり傾向だったものは確認できなかったので、今回は省略する。ただ「コンピューターの使用」では興味深い動きがあったので、これは提示しておこう。

↑ 通勤時の同時行動者率(男性、平日、15歳以上、年齢階層別、「コンピューターの使用」)
↑ 通勤時の同時行動者率(男性、平日、15歳以上、年齢階層別、「コンピューターの使用」)

↑ 通勤時の同時行動者率(女性、平日、15歳以上、年齢階層別、「コンピューターの使用」)
↑ 通勤時の同時行動者率(女性、平日、15歳以上、年齢階層別、「コンピューターの使用」)

男女とも2011年時点では中堅層の方が行動者率は高かった。ところが直近の2016年では若年層の方が高い値を計上している。デジタル機器では特に見られる傾向だが、まず先進技術に強い関心を抱き金銭的にも余裕がある中堅層が手に取り利用し、普及するに連れて若年層が市場のリーダーシップを取るようになる。その動きが通勤時の利用という観点で、きれいに表れている次第である。


■関連記事:
【7割は「スマートフォンに買い替えて利用時間が増えた」・1割近くは一日3時間を超えた利用も】
【7つのクリエイティブな通勤時間の過ごし方】
【通勤時間の平均は往復1時間19分、大都市圏勤めほど長い傾向(2016年)(最新)】



スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS