中古本市場の実情(最新)

2019/09/30 05:09

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2019-0925出版物に出会う機会は書店や通販経由による購入ルート、図書館などによる借り入れルートに限らない。新古書や古書と呼ばれる中古本でも出版物との出会いを体験することはできる。今回は日販による「出版物販売額の実態」最新版(2019年版)をもとに、それら中古本を取り扱う新古書店や古書店の市場の実情を確認していくことにする。



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まずは世間一般で一番よく使われる「古本」との表現について、詳しく定義の確認をする。定義そのものは語られる場で微妙に違いがあるが、一般的には次の通り。出版物は新刊として書店やコンビニなどに配本されるが、一定期間が経つと返本されることになるものの、それらの本は新品と比べて紙質が劣化していたり汚れていたり破損している場合も多々あるため、そのまま再配本するのは難しい。また、旬を過ぎている以上、再配本してもセールスは見込めない。再販価格維持制度があるので値引きしての販売も不可能。

そこで返本された出版物を古書扱いの形で新古書としてリサイクルされるのが「新古書」。誰かの手に渡った上で買取店で引き取られ、古本として並べられるのが「古本」。絶版本や貴重な古本は「古書」。例えば東京の神保町に並ぶ、数十年も昔の絶版本や入手が困難な古本が売られている書店は「古本店(屋)」と呼ばれているが、定義的には「古書店」の方が近い。しかし一般には「新古書」「古本」「古書」すべてを一括して「古本」と呼んでいる。新刊で無ければすべて古本といった具合である。

「出版物販売額の実態」では「新本」ではない出版物を「中古本」とし(世間一般にいうところの「古本」)、「新古書」「古書」の区切りをして、それぞれを取り扱う店を「新古書店」「古書店」としている。具体的には

・新古書店……比較的発行の新しいリサイクル本を売る店

・古書……発行年数が古い本を売る店

となっている。「新古書店」は「新古書」「古本」を、「古書店」は「古書」を売る店となる。「新古書店」はブックオフのような店、「古書店」は絶版本などが並ぶ古書の宝庫的な専門店(昔ながらの「古本屋」)をイメージすれば間違いではない。

さてその中古本市場規模だが、「出版物販売額の実態」に掲載されている2014年度から2018年度の動向は次の通り。

↑ 中古本市場規模(億円)
↑ 中古本市場規模(億円)

↑ 中古本市場規模(前年度比)(2018年度)
↑ 中古本市場規模(前年度比)(2018年度)

直近の2018年度では新古書店が383.2億円、古書店が329.8億円、計713.0億円。古書店の市場規模が意外に大きいこと、新古書店が400億円近くの市場規模を有していることなど、色々と驚かされる。古書はともかく新古書に関しては新刊の販売を抑制しかねないとの批判があるが、この市場規模の大きさがその一因なのだろう。

もっとも、仮に新古書市場が無くなったとしても、その需要がすべて新刊に回るわけではない。また上記の説明の通り、返本された出版物が新古書として多分に出回っている以上、見方を変えれば再販価格維持制度が撤廃されて定価でなくとも販売できるようになれば、新古書店の市場の何割かは確保できるかもしれない。無論それを見越して定価の新刊がさらに売れなくなる可能性も否定はできないが。

ともあれ、中古本市場も緩やかな動きではあるが、縮小傾向にある。古書店はそれほどでもないが、新古書店の縮小度合いはやや大きめ。電子書籍の普及に伴い、新古書店の需要も供給も今後さらに少なくなることは容易に想像できるだけに、今後どのような変化を見せていくのか、注目したいところだ。


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