「今の自国は景気良い?」諸外国の人に聞いた結果と日米欧の違い
2017/07/11 05:12
経済の良し悪しはさまざまな具体的指標の他に、国民の景況感によっても判断され、また左右される。実際に経済そのものの調子が良く好調な指標が出ていても、伝えられ方に問題があったり間違った解釈が報じられていれば、国民感情としての経済への認識は実経済との連動が薄れ、それが経済の本質に悪影響を及ぼすことになる。経済を動かしているのは一人一人の経済活動そのものであるからだ。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年6月5日に発表した公開調査報告書【Global Publics More Upbeat About the Economy】を基に、日米など主要国の景況感の実情などを確認していく。
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今調査は2017年春に91か国の18歳以上の該当国国民に対し行われたもので、有効回答数は各国約1000件ずつ。原則は電話によるインタビュー形式での調査方式だが、一部の国では対面方式で実施されている。各国の国情(年齢、性別、教育、地域)などに従ったウェイトバックが実施されている。
次に示すのはいくつかの国に対し、自国の経済状態がどのような状態だと思っているのかに関して、「とても良い」「良い」「悪い」「とても悪い」の4選択肢から選んでもらい(実際には無回答・回答拒否もいくぶんある)、そのうち「とても良い」「良い」の回答率を合算したもの。その国の自国民が経済状態をどのように認識しているのかが分かる結果となっている。
↑ 自国の現在の景況感(とても良い+良いの回答率、2017年)
アメリカ合衆国では過半数が「景気は良い」との認識。日本では4割強とやや少なめ。韓国では15%と相当な景況感の悪さが確認できる。ヨーロッパでは金融危機における債務問題で大きな景気後退を経験し、国レベルでの財政破綻懸念も伝えられたが、昨今では国による格差が生じているようだ。ドイツの景気の良さは伝えられている通りだが、イギリスではそこそこ、アメリカ合衆国と同程度。それに対しフランスでは2割強しか景況感の良さが認識されていない。
景気が良いとの認識の回答率を経年変化で見たのが次のグラフ。
↑ 自国の現在の景況感(とても良い+良いの回答率)
GDPや可処分所得のような具体的な値ではなく、回答者の心境を基にした数字であるため、各国国民の性質によるものも多分にあるが(例えば日本は景況感に関してネガティブな印象を示すことが多い)、2007年夏から顕著化した金融危機、そして2008年秋のリーマンショックにおいて、各国の景況感が大きく後退した実情がグラフに表れている。また日本は2011年から2012年にかけてさらに下落しているが、これは多分に東日本大震災とその後の歴史的円高によるところが大きい。
リーマンショック後は大よその国が経済の復興と共に景況感も回復に向かいつつある。特にドイツは金融危機以前の好景気を迎えていると国民自身が認識している。アメリカ合衆国は直近年でようやく金融危機前の状態にまで回復したようだ。日本の動向もほぼ同様。むしろこの数年では金融危機前より高い値を計上している。
他方、イギリスやフランス、韓国は金融危機前の状態への回復には至っていない。特にフランスはリーマンショックで下げた後、低迷が継続したままであり、直近年でようやく上向きを見せ始めた程度。ここ数年でようやく復調への値動きを示したイギリスとは対照的。昨今のフランスの政治情勢も、このような動向を受けたものとして見ると、理解ができる部分もあるだろう。
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