正規か派遣かパートかそれとも役員か…学歴別の就業状態(最新)
2022/06/17 02:38
総務省統計局が2022年5月27日に発表した、5年に一度実施する国勢調査の最新版となる2020年国勢調査における就業状態等基本集計の確定報では、日本の現状を就業の観点から推し量れるデータが多方面の切り口で公開されている。今回はその最新値を基に過去の国勢調査の公開値も合わせ、学歴別に見た就業様式の現状を確認していくことにする(【令和2年国勢調査】)。
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高学歴ほど正社員率は高い
国勢調査は1920年に開始されて以降原則5年おきに実施され(1945年分は終戦関連で延期され1947年に臨時調査が代替実施)、2020年調査分で21回目となる継続調査。また10年おきの調査は大規模調査として、より詳細な項目の調査がなされるようになっている。
大規模調査では調査年の15歳以上の人における最終学歴なども問われ、その結果もさまざまな切り口によって公開されている。そこで大規模調査の直近分となる2020年の結果につき、学歴別に現在どのような就業様式の職についているかを確認したのが次のグラフ。学歴に関して不詳、在学中の人、また完全失業者や非労働力人口に該当する人は除外して計算してある。要は学歴で職の様式にどのような違いが生じているのかを確認する次第。
↑ 労働力状態別15歳以上人口の割合(各属性における不詳除く、卒業者の最終卒業学校種類別)(2020年)
就業している人に限った話だが、概して高学歴の方が正規職員・従業員や役員の比率は高く、派遣社員やパート・アルバイトなどの非正規率は低くなる。大卒者では7割強が正規職員・従業員として働いているが、高卒者では5割でしかない。また低学歴では非正規社員の他に業主(自営業や自由業など)の比率も高いが、短大・高専卒者よりも大学・大学院卒者の方が高い値を示すようになる。短大・高専で役員や業主の比率が落ちるのは、女性の比率が高いからだろう。
これを男女別で確認したのが次のグラフ。
↑ 労働力状態別15歳以上人口の割合(各属性における不詳除く、男性、卒業者の最終卒業学校種類別)(2020年)
↑ 労働力状態別15歳以上人口の割合(各属性における不詳除く、女性、卒業者の最終卒業学校種類別)(2020年)
男性と比べ女性は正規職員・従業員や役員の比率が低く、パート・アルバイトがきわめて高い値を示している。また派遣社員も比率そのものは小さいが、男性と比べると女性の方が高い。例えば女性の場合は結婚後に兼業主婦としてパートに勤める人が多いなど、男女間の生活様式の違いが表れている。
女性で家族従業者(農家、商工業などの自営業者を営む家族の一員で、その事業に従事している人)の比率が極めて高く、特に小中卒者では1割を超えている。これは多分に歳を召した世帯における自営業世帯でのケースが該当している。
30代前半にスポットライト
上記の動向は全体における比率。在学者の多い年齢階層や、高齢で非労働人口に該当する年齢階層も含んでおり、それらの属性は除いて計算されているため、実情が把握しにくいかもしれない。そこで在学者はほとんどおらず、定年退職者も居ない年齢階層として働き盛りとなる30-34歳層を選び、同じように就業様式の状況を確認する。
まずは全体。
↑ 労働力状態別15歳以上人口の割合(各属性における不詳除く、30-34歳、卒業者の最終卒業学校種類別)(2020年)
30代前半で就業している人において、大卒者は8割以上が正規職員・従業員、高校・旧中卒者は6割強。パート・アルバイトの人は大卒者では1割にも満たないが、高校・旧中卒者では2割を超えている。高校・旧中卒者と短大・高専卒者との間には差異はあまり無く、大卒者の正規職員・従業員率がずば抜けて高い実情が分かる。
次いで男女別。
↑ 労働力状態別15歳以上人口の割合(各属性における不詳除く、30-34歳、男性、卒業者の最終卒業学校種類別)(2020年)
↑ 労働力状態別15歳以上人口の割合(各属性における不詳除く、30-34歳、女性、卒業者の最終卒業学校種類別)(2020年)
男女ともに高学歴の方が正社員率が高いのは全体の値と同じ。また男性の方が正規職員・従業員率が高く、女性の派遣やパートが非常に高い値を示しているのは、上記に説明の通り兼業主婦として働いている人によるところが大きい。30代前半ともなれば少なからぬ人が結婚をしているため、パートの比率は極めて高いものとなる。
30代ではまだ役員になった人は少数だが、それでも数%は見受けられる。小学校・中学校卒者で比率が高めなのは、自ら事業を興したからだろうか。
先行記事でも言及しているが、学歴はそれ自身が就業条件となるケースもあるものの、多分に本人の学力、能力による結果であり、それを表す指標以上のものではない。今件は「高学歴ほど正社員としての就業率が高い」実態を全般的な視点から裏付けたものではあるが、それが「学歴があれば本人の能力は二の次でも就業上好条件となる」わけではない点に注意したいところではある。また男女差の動向からも見受けられる通り、学歴以外の要素でも就業様式は大きく変わりうるのもまた事実に違いない。
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