米国に広がる政治的対立は政治的思惑、そして民主党対共和党の対立

2017/01/28 05:23

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先日【トランプ大統領の誕生で米国は政治的に二分された? いいえ昔からです】でアメリカ合衆国の民間調査会社PewResearchCenterの調査結果を元に、同国に広まっている「とされる」政治的対立が、実のところは古くから同国内で認識されている現象で、それが多分に政党間、政治的思惑、社会への基本的概念として並べ語られるリベラルと保守の間の対立であるように見えるとの説明をした。それとほぼ同じ状況説明ができる経年調査結果の概説が、先日同国民間調査会社のギャラップ社からも発表された。今回はその内容を見ていくことにする(【Obama Job Approval Ratings Most Politically Polarized by Far】)。



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ギャラップでは同国のトルーマン大統領の時点から、支持政党別ではそれに続くアイゼンハワー大統領から、大統領の業績を評価するか否かの調査を実施している。直近分の調査方法はアメリカ合衆国内に居住する18歳以上に対し、RDD方式で選ばれた対象に通話対応式の調査方法で行われたもので、有効回答数は17万8829件。うち固定電話は3割、携帯電話は7割。結果に対しては国勢調査に基づいたウェイトバックがなされている。過去の調査も(電話種類の比率は別として)ほぼ同じ様式で実施されている(【Presidential Job Approval Center】)。

アイゼンハワー大統領以降の各大統領に関し、それぞれの任期中に逐次行われた「業績への評価をするか否か」の質問に関して、「評価する」と回答した人の回答率を、その大統領の任期分別で平均値を算出。それを大統領の任期順で「回答者の支持政党別」に記したのが次のグラフ。各大統領の名前の後にはその所属政党名を記してある。

↑ 各支持政党別・回答時の大統領の業績への評価(評価する・しないで「する」の回答率)の在任中における平均値
↑ 各支持政党別・回答時の大統領の業績への評価(評価する・しないで「する」の回答率)の在任中における平均値

アメリカ合衆国が実質的に二大政党制を維持しているのも一因だが、そして先行記事「トランプ大統領の誕生で米国は政治的に二分された? いいえ昔からです」でも指摘しているが、見事なまでに「自分の支持する政党の大統領の業績は評価する」「自分の支持しない政党の大統領の業績は評価しない」との結果が出ている。無論各大統領が成した業績によって、各政党の評価にはいくぶんのぶれが生じているが(例えばケネディ大統領は(任期途中で亡くなったのも一因だが)民主党支持者だけでなく共和党支持者からも比較的高い評価を受けている)、それでも支持政党選出の大統領であるか否かが、その大統領の業績を評価するか否かの最大要因となっていることに違いは無い。

これは大よそ「民主党がリベラル指向を目指し、それに同意する人たちの集まりであり、当然そのトップに立つことになる大統領候補もまたその意向に従うようになる」「共和党は同様に保守指向を目指し、大統領候補もその傾向が強くなる」からに他ならない。神輿に担ぎ上げる人物はそれを担ぐ人達の代表でなければならない。結果、大統領に選出された人物はそれぞれの方向性に基づいた政策を成すため、支持した人にとっては自らの方向性に近しいことから評価をし、支持しない人にとっては反する政策となることが多いため、評価しないとの回答が増える。

他方、グラフの形状を見直すと、昔と比べ近年では、両党支持者間のギャップが大きくなっている実情も見て取れる。両党支持者間の回答値を算出し、その絶対値をギャップとしてグラフ化すると次の通りとなる。

↑ 各支持政党別・回答時の大統領の業績への評価(評価する・しないで「する」の回答率)の在任中における平均値(両支持政党派の評価平均の差異)
↑ 各支持政党別・回答時の大統領の業績への評価(評価する・しないで「する」の回答率)の在任中における平均値(両支持政党派の評価平均の差異)

カーター氏まではほぼ横ばいに推移していたが、レーガン氏以降はややギャップが大きくなり、経済の堅調さや冷戦構造の終結を成した(その当時に任期だった)ことで両党支持者から比較的高い評価を受けたG.H.W.ブッシュ氏でやや縮まった後は、右肩上がりでギャップが拡大しているのが分かる。トランプ氏はまだ就任直後で今後どのような動きを見せるかは不明だが、少なくとも直近の調査結果ではギャップは76%ポイントを計上している。

ギャップの広がりについて報告書では、個人が取得できるニュースソースの多様化が一因ではないかと説明している。例えばケーブルテレビの放送局の多様化やインターネットの普及浸透により、情報取得の選択肢が増えたため、より自分自身の政治的ポリシーが強化され、自分の支持政党に反する大統領への反発心を大きなものとする、支持する党の大統領への賛意が強化されるとの考え方である。選択肢が増えれば当然公明正大中立な情報発信元以外に、自分の意向に沿うもの、沿わないものも多数出てくることになるが、人は得てして聞き心地の良いものを選んでしまうからだ。

他方、インターネットニュースへの取得時間が増えても、それ以上にテレビや新聞の利用(によるニュース取得)時間は減っているので、個々の政治的意識の増幅と、それに影響される形での大統領への評価の極端化・ギャップの広がりに関係は無いのではとする考えもあると説明している。

ともあれ、アメリカ合衆国大統領への同国民からの評価は多分に、自分の支持政党出身であるか否かで数字が出てくることになる。そして共和党は保守、民主党はリベラル、さらに報道界隈は多分に(今回の大統領選挙において行われた「エンドースメント」の実情からも明らかな通り)リベラル指向であることを、同国の報道や状況を眺める際には頭に入れておく必要があるのだろう。


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