「男らしさ・女らしさは必要」同意は7割近く…意外かやっぱりか、結婚や家族に関する伝統的な考え方への支持度合い(最新)
2025/03/06 02:29
社会的通年、倫理、道徳観、伝統的な考え方は、個々の地域や国、民族の長い歴史の間に培われてきた、経験則による知恵、ルールのようなもの。明文化されていることはあまりなく、それを破ることによる法的罰則もほとんど存在しないものの、半ば戒律のようなものとして守るべきものと認識されている。他方、社会情勢や周辺環境、自意識の変化などを受け、それらの伝統的な考え方をよしとしない意見も多々あるのは事実。今回は国立社会保障・人口問題研究所が2023年8月に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第16回出生動向基本調査」を基に、その伝統的考え方に関する認識の実態を確認する(【第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)】)。
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主婦の伝統的意識
今調査に関する調査対象母集団や集計様式については、出生動向基本調査関連の先行記事【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移】を参照のこと。
次に示すのは今調査対象母集団のうち初婚同士の夫婦の女性、および未婚の男女それぞれに、家族や結婚に関する伝統的な考え方を提示し、それについて賛意を持つか反対意見を持つかを尋ねた結果。厳密には「まったく賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「まったく反対」の4選択肢を提示。そのうち、伝統的な考えに該当する意見サイドの回答率を足したもの(回答時にはいずれにも合致しない「不詳」もある)。
例えば「生涯独身はよくない(賛成)」で未婚男性が51.1%と出ているが、これは「生涯独身はよくない」とする設問で、伝統的な考え方としては賛成となるので、賛成派の意見を足した結果が51.1%となる次第。逆に「婚前交渉はかまわない(反対)」は、「婚前交渉はかまわない」との設問では、伝統的な考えではよくないとするものであるから、「反対」が伝統的な考えによる意見であるとし、反対派の意見を足した値の11.3%が示されている。

↑ 結婚・家族に関する意識(伝統的な考え方を支持する割合、属性別)(2021年)
未婚男女・既婚女性で伝統的な考えに対するスタンスに大きな違いは無い。ただし細かい点を見ると、「産むなら20代のうち」では既婚女性が高く、「結婚に(自分の個性や生き方などの)犠牲は当然」とする意見は未婚男性が高いなど、それぞれの伝統的考えに対する、立ち位置からの思惑の違いが見えてきて興味深い。つくづく、既婚男性の意見も見たかった感はある。
個々の項目全体としては、男らしさ・女らしさが必要である、子供を産むなら20代のうちとする意見が7割近くで同意者が非常に多い。次いで同棲をするなら結婚すべきだがつき、さらに子供は持つべきだ、母親(子供が小さいうち)は家にいるべきだ、離婚は避けるべきだ、結婚せずに子供を持つべきではないなどの意見が5割台で多数派。
婚前交渉(結婚前の男女間の性交渉)、自己目標(人生において結婚相手や家族とは別の、自分だけの目標を持つ)の所有に関しては伝統的な考え方としては否定されるものではあるが、これに賛同する人は1割程度。多くの人は婚前交渉はかまわない、家族や配偶者とは別の、自分だけの目標を持ってもよいと認識している。
少々驚きを覚える人がいるかもしれないが、直近調査から追加された選択肢「同性での結婚かまわない(反対)」については、同意者は未婚男性で26.5%、未婚女性で10.4%、既婚女性で13.9%しかいない。大半の人は、同性での結婚に対して寛容的な考えを持っていることになる。
伝統的な考え方への支持の時代変化
今調査項目では未婚男女・既婚女性それぞれに関し、1992年分から経年変化の調査結果が公開されている。そこで未婚男女に関してその変移を見ていく(既婚女性は対象比較となりうる既婚男性の値が存在しないので今回は省略する)。
なお空欄の年数は回答値がゼロなのではなく、その年では設問そのものが存在しなかったことを表す。具体的な数字は直近年のもの。その他グラフの見方は上記と同じである。

↑ 結婚・家族に関する未婚者の意識(男性、伝統的な考え方を支持する割合)

↑ 結婚・家族に関する未婚者の意識(女性、伝統的な考え方を支持する割合)
まず男性。伝統的な考え方を支持するとの意見が増えていたのは「生涯独身はよくない」「同棲なら結婚」「結婚に犠牲は当然」。逆に伝統離れをしているのは「夫は仕事、妻は家」「母親は(子供が幼いときは)家にいるべき」。伝統離れに関しては社会実情の変化を受けてのものと考えられる。また婚前交渉を容認する動きは昨日今日の話ではなく、少なくとも1990年代前半からであったことも確認できる。
そして直近2021年では比較対象のある選択肢ほぼすべてで、前回調査結果から値を落としている。「生涯独身はよくない」「子供を持つべき」など複数の選択肢では大きな下落となっている。結婚・家族に関する未婚者の意識が大きく変化したのだろうが、あるいはコロナ禍が影響しているのだろうか。
女性も男性と上下の動きに大きな違いは無い。強いて言えば「夫は仕事、妻は家」に関して男性よりも早期に、伝統には賛成しかねるとの動きが出ていたことぐらい。
本文中でも言及しているが、既婚男性の回答があれば、全体としての伝統に対する賛否動向が確認できただけに、この点に関しては非常に残念でならない。しかしながら未婚者の男女の比較でも、それなりに社会全体に近い値を取得することはできる(もちろん結婚することで伝統的なものの見方への考え方に違いが生じることは多々あり得る)。
伝統的な考え方を論じる時にはそれ自身の法的な、社会全体に結果として与える影響から鑑みたよし悪しとともに、現状ではどれほどの人が賛意を持っているのかも、論議の上では重要な要素となるに違いない。
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