既婚女性が考える「自分の子供に受けさせたい教育程度」から見る大学信奉の度合い(最新)
2016/11/26 05:04
先行記事【独身者が考える「自分の子供に受けさせたい教育程度」から見る大学信奉の度合い】において、国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月15日に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」を基に、独身者が自分が結婚した場合にできる子供に対し、どの程度の教育を受けさせたいかに関する心境を確認した。今回は同様の質問を既婚者の女性に対し行った結果を見ていくことにする。結婚を果たした人の子供に対する学歴への願いはどの程度なのだろうか(発表リリース:【第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)】)。
スポンサードリンク
既婚女性の子供への学歴の想い
今調査に関する調査対象母集団や集計様式に関しては、出生動向基本調査に関わる先行記事の【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移】を参照のこと。
次に示すのは調査対象母集団のうち現在既婚の女性(今調査では夫婦世帯に関しては、その妻のみに問い合わせている)に対し、自分の子供にどの程度の教育を受けさせたいか、あるいは受けさせたかったかを尋ねた結果。回答者の年齢階層に加え、対象となる子供の性別で仕切り分けしている。なお18・19歳は少数のため年齢区分の結果では省略されているが、「総数」では盛り込まれている。
↑ 夫婦世帯の妻における自分の子供に受けさせたい教育程度(2015年)
一見して分かるのは大学への進学・卒業の想いの強さ。これは未婚者の将来有するであろう子供への期待と等しい。また、対男の子への方が、対女の子に対する考えよりも大学の学歴への願いが強く、女の子には短大・高専や専修・専門学校を願う意見が大きめとなっている。
他方独身者では見られなかった動きとして、対男の子・女の子を問わず、回答者の年齢が年下であるほど、高校・中学で良しとする意見が多くなっているのも目に留まる。この傾向に関して報告書では何も解説しておらず、はっきりとした原因も分からない。自らがまだ大学などを卒業してから日が浅く、実情を認識した結果としての反応なのかもしれない。
昔と今、既婚と未婚
今回公開された資料では、同様の質問を行った結果に関して、20年以上前の1992年の調査値が記されている。選択肢に「専修・専門学校」が無いなど完全な比較とは言い難いが、時代の変遷を推し量る良い資料になることに変わりはない。
↑ 夫婦世帯の妻における自分の子供に受けさせたい教育程度(1992年、2015年)(1992年では「専修・専門学校」無し)
対男の子に関する傾向はほとんど変わり無し。短大・高専が専修・専門学校にも分散した程度。他方女の子への願望は大きく変化し、短大・高専への願いが多分に減り、その分大学以上を望む声が大きくなっている。女性の社会進出の拡大化に伴い、女の子への学歴の期待も変化を遂げていると見ればよいのだろうか。
他方、先行する記事では未婚男女に同様の質問をしているが、その値と比較したのが次のグラフ。夫婦世帯では夫にあたる既婚男性へ質問をしていないのが残念ではある。
↑ 自分の子供に受けさせたい教育程度(2015年)(未既婚別)
大学以上の学歴を望む傾向は未既婚に関わらず圧倒的。他方、女性のみで比較すると、未既婚別では既婚者の方が対男の子・女の子に関わらず、大学以外の学歴で十分であるとする意見が多めなのが目に留まる。それと共に「その他不詳」も既婚者が多く、より切実なリアリティのある問題、あるいはすでに進行中・終わった子育てへの想いの複雑さが見て取れる。
今件はあくまでも既婚女性の子供に対する教育程度の願望の実情を示したまでで、大学を信奉する理由などは問われていない。他方、グラフ化などは略したが既婚女性でも未婚男女同様、大学院までは多分に望んでいないため、学問を究めさせようとの認識が薄いのもまた事実ではある。
大学に関わるさまざまな問題において、今件などの「子供へ期待する学歴は多分に大学」との事実が数値化されたことは、十分に役立つ資料となるに違いない。
■関連記事:
【大学生の就職状況(2016年)(最新)】
【大学進学率(2016年)(最新)】
【70年近くに渡る大学授業料の推移(2016年)(最新)】
スポンサードリンク