独身者が考える「自分の子供に受けさせたい教育程度」から見る大学信奉の度合い(最新)
2016/11/25 11:38
大学の授業料をはじめとしたさまざまな大学に関わる問題が生じているが、その原因要素の一つとして、少なからぬ人が実質的な義務教育課程・社会に出るために必要な最終学歴を大学と認識し、とにかく大学を卒業しないといけないとの発想があると指摘されている。現実問題として世間一般では、どの程度の「大学信奉」が生じているのだろうか。今回は国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月15日に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」を基に、現在未婚の人のうち結婚願望を持つ人における、将来自分が有するであろう子供にどの程度の教育を受けさせたいと考えているか、その心境を確認していく(発表リリース:【第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)】)。
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今調査に関する調査対象母集団や集計様式に関しては、出生動向基本調査に関わる先行記事の【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移】を参照のこと。
次に示すのは調査対象母集団のうち現在未婚の18-34歳の中で、将来結婚をしたいと考えている人(≒自分の子供を持ちうる人)に対し、自分の子供にどの程度の教育を受けさせたいかを尋ねた結果。回答者の性別・年齢階層に加え、対象となる子供の性別で仕切り分けしている。なお18・19歳は少数のため年齢区分の結果では省略されているが、「総数」では盛り込まれている。
↑ 未婚者における自分の子供に受けさせたい教育程度(2015年、対男の子、いずれ結婚するつもりの人限定)
↑ 未婚者における自分の子供に受けさせたい教育程度(2015年、対女の子、いずれ結婚するつもりの人限定)
まず対象となる子供の男女とも大学以上(大学あるいは大学院)が多数を占めている。短大や高専、専修・専門学校、さらには高校・中学は少数派。回答者の年齢階層別では大よそ年下ほど大学の学歴を望む人が多く、年上になるほど高卒や中卒でも良いとの意見が増加する。高専や短大などの値はさほど違いは無い。それぞれの世代(年齢階層ではなく)の価値観の相違によるものか、あるいは現在の回答者の年齢から結婚・出産を経て子供の育成期間を考慮すると、大学に達するまで金銭的な支えをするための就労は難しいとの判断によるものかもしれない。
対象となる子供の男女別の違いとしては、対男の子の場合の方が多少大学を望む人の割合が多く、対女の子の場合は短大・高専や専修・専門学校と回答する比率が高くなる。他方、高校・中学の回答率は同程度。少なくとも高校より上を望むとの認識は、男の子に対しても女の子に対しても同じようだ。
また回答者の性別では大きな違いは見られない。ただし対男の子でも対女の子でも、未婚男性よりも未婚女性の方が、いくぶんながらも大学以上への学歴を望む声が大きなものとなっている。「教育ママ」とは随分と古い言い回しだが、男性より女性の方が子供の教育には強い熱意を有しているように見える。
ちなみに「大学以上」の詳細は次の通り。
↑ 未婚者における自分の子供に受けさせたい教育程度(2015年、「大学以上」の中身、いずれ結婚するつもりの人限定)
ほとんどが大学院までは望んでおらず、大学までで良しとしている。大学院の値に関しては少数なこともあり、属性別の法則性は見られない。
大学までの教育を望む理由は今調査では問われていないが、大学院への選択がほとんど無いことを合わせ考えると、学問を突き詰めてほしいとの思いでは無いことは容易に想像ができる。単純なラベリング、信奉的なものであるとの因果関係を説明するまでには至らないが、少なくとも多くの独身者が自分の子供に対し、大学への進学・卒業学歴を望んでいる事実は認識しておくべきだろう。
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