一緒に仕事をした相手、終わった後の謝意の言葉は「お疲れ様」か「ご苦労様」それとも「ありがとう」か
2016/10/05 10:25
相手に表したい気持ちは同じではあるが、それを体現化し相手に伝える言葉は多種多様。そしてその使い方で間違った意図が伝わってしまうことも少なくない。さらにその言葉の使い方は状況の微妙な違いで変わり、時代の変遷と共に変化をする場合も多い。今回は文化庁が2016年9月21日に発表した調査結果の概要【平成27年度「国語に関する世論調査」の結果について】の内容をもとに、いくつかの事例からその実情を確認していくことにする。
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同じ仕事をした相手にかける謝意の言葉、相手が上の人と下の人の場合
今調査の調査要綱は先行記事【配達の人に対する感謝の意、どんな言葉をあなたはかけるか】を参照のこと。
次に示すのは回答者が会社員であると仮定した上で、同じ仕事を一緒にした相手に対し、仕事を終えた後にどのような言葉をかけるのが一番多いか(多用している、一般的か)を答えてもらったもの。言葉を向ける相手が自分よりも職階が上である場合と下である場合、それぞれについて答えてもらっている。
↑ 同じ仕事を一緒にした人に、仕事後にかける言葉
目上の人への方が高率だが、最大回答率は「お疲れ様(でした)」が最大値であることに違いは無い。次いで「ご苦労様(でした)」が続くが、目上の人へは1割程度でしかなく、目下の人に対しても3割前後。
「国語に関する世論調査」に関する先行記事でも言及しているが、「ご苦労様(でした)」はその言葉が意味するもの自身はともかく、イメージ的な点で「上から目線」な印象が強く、避けられる傾向があるのだろう(ただし例えば定年退職を迎える上司に対し、慰労の会などで花束を贈呈する際に「長い間ご苦労様でした」などと声をかけるのは、決しておかしな使い方ではない。元々「ご苦労様」は従事する職務に対するねぎらいや感謝の気持ちである)。
経年変化で見ると、10年前と直近とでは、目上に対しても目下に対しても「ご苦労様(でした)」が減り、「お疲れ様(でした)」が増えている。第一印象的な点で、より無難な表現が好まれる傾向が強まっているのだろう。
外部の人に自分より上役の人のことを話すとき
組織内での言葉使いでよく悩みのタネとなる事案の一つが、自組織内の自分より上役の人を外部の人に語る時の敬称。対象は自分よりも上の人なので敬称をつけるべきだが、外部の人もやはり自分よりは立場が上。どのような表現を使えばよいのか、難しいお話には違いない。
↑ 会社の受付の人が外部へ、自分の●●課長のことを話す際に、一番良い言い方(2004年度・1997年度では「課長の●●は…」は選択肢として存在せず)
2004年度までは選択肢が1つ少なかったこともあるが、グラフの形状的には「●●は」と「課長の●●は」を合わせた、自組織内の上役を敬称抜きで語るべきだとの意見が増えている。「●●さんは」と敬称をつける回答はごく少数。そして敬称抜きの点では同じだが「●●課長は」との表現は年々減少し、直近では1/4を切っている。
この傾向に関する分析は報告書には一切無いが、複数の同姓の人が組織内にいる場合を想定し、対象を明確化するため役職をつけた表現をすべきであるとの認識が多数派を占め、その表現において役職による判断が優先されるのと同時に軽い敬称的な意味合いを持たせている「課長の●●は」が増え、やや乱暴なニュアンスにもとられかねない「●●課長は」が減っていると解釈ができる。つまり「●●は」と「課長の●●は」の割合が増加しているのではなく、「課長の●●は」と「●●課長は」の合計がほぼ変わらず、その内部で比率の変化が生じているとする見方である。
ちなみにこの表現に関して、回答者の年齢階層別で見ると興味深い動きが確認できる。
↑ 会社の受付の人が外部へ、自分の●●課長のことを話す際に、一番良い言い方(2015年度、年齢階層別)(「わからない」除外)
回答者が若年層ほど「●●は」との呼び捨てが多く「●●課長は」は少ない。40代まではその傾向が強まり、それ以降は「●●は」が減り、「●●課長は」が増えていく。他方「課長の●●は……」は70歳以上を除けばほぼ一定率存在する。16-19歳がイレギュラーな動きを示しているのは、多分に組織内で実際に使う機会がまだ無い(学生、生徒の可能性が高い)からだろう。
回答者の年齢によって呼び方に違いが生じるのは、その年齢特有のものか、それとも世代によるものか、今件だけでは判断は難しい。ただし上司のことを外部に語る状況は、多分に若年層において発生することから、実態としては「●×課長は」の呼び方は上記の全体値の回答率よりも少ないケースとなることは十分予想できる。
なお今件挙げられたケース、特に後半部分の状況下において適切な、最適解となる言い回しは、所属する組織企業によって異なる。世間一般ではこの表現が多数派だからと認識していても、組織内ではルール外である可能性も。分からない、確証が持てない場合は素直に上司、教育担当に質問をして尋ねるのが無難だろう。
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