音楽や動画の視聴サービスの利用と有料・無料の関係(2016年)(最新)
2016/08/24 15:50
総務省は2016年8月17日、2016年版の【情報通信白書】の詳細値が確認できるHTML版を公開した(【発表リリース:平成28年「情報通信に関する現状報告」(平成28年版情報通信白書)の公表】)。今回はその掲載データの中から独自調査をもとにした、音楽や動画の視聴サービスの利用状況と、有料・無料における利用性向について確認をしていく。
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今白書のうち今件の該当部分となる「GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究のアンケート調査」は2016年3月にインターネット経由で20歳から70歳未満の男女に対して行われたもので、有効回答数は2723人。10歳区切りの年齢階層区分でほぼ均等割り当て。各年齢階層の男女比はほぼ均等割り当て。
次に示すのはウェブサービスとして多々存在する、音楽や動画の視聴サービスの利用状況(特定サービスを明記しているわけではないので、全体としての回答者自身の利用性向を尋ねている)。今調査はインターネット経由であることから必然的にインターネット利用が前提となる。白書の該当項目の公開値は音楽・動画視聴サービス利用者限定のものとなっているが、こちらで原値を元に、各年齢階層の「音楽・動画視聴サービスを利用していない人」も合わせたものも併記してある。
↑ 音楽・動画視聴サービス利用状況(2016年3月、インターネット利用者限定)
↑ 音楽・動画視聴サービス利用状況(2016年3月、音楽・動画視聴サービス利用者限定)
大よそのイメージ通り高齢層の方が音楽・動画視聴サービスそのものを利用していない人は多い。60代では4割強が未利用。他方、利用者に限れば、有料サービス利用者はいくぶん若年層の方が比率は大きいがさほどの違いは無く、無料利用者で有料化されたら手を引く人の割合もほとんど違いはない。音楽や動画をネット経由で利用する人の割合そのものは若年層の方が大きいものの、利用者における有料・無料の利用区分の比率は歳による違いはさほど無いようだ。
関連サービスの運用者、関係者にとって気になるのは、有料サービスの利用者の比率もさることながら、無料サービスが有料化された時の挙動とその理由。そこで「有料化されても利用し続ける」と回答した人に、そのもっとも大きな理由を聞いた結果が次のグラフ。40代で多少イレギュラーが生じているが、大よそ「自分の好きな作品があるから」が半数を占める形となっている。
↑ 有料化しても利用し続ける理由(音楽・動画サービス利用者のうち「有料化されても利用を続ける」回答者限定、2016年3月)
次いでコンテンツの種類の豊富さに満足している(ので有料化しても使い続ける)が3割近くで続き、「余暇を過ごすのに使いたいから」がついている。実店舗で視聴するよりも手間やコスト削減になるからとの声は少数派だが、40代ではやや大きい。多忙さの違いが表れているのだろうか。
いずれにせよ、大よそ7割から8割はコンテンツの領域が幅広いことが「無料サービスが有料化されても利用を継続する」との回答。有料化のためには、充実したコンテンツで幅広く深みのあるサービスを提供することが求められる。
逆に「有料化されたら利用を止める」と回答している、現在無料サービス利用者の人たちに対し、どのようなサービスならば有料化でも利用したいかを聞いた結果が次のグラフ。
↑ どのようなサービスなら有料化でも利用したいか(音楽・動画サービス利用者のうち「有料化されたら利用を止める」回答者限定)(2016年3月)
年齢階層による差異はほとんど無く、どのような状況でも音楽・動画サービスを有料で利用することは無いとする人が2/3を占めている。価値観として、音楽・動画サービスは無料で利用するものだとの認識なのだろう。一方、この条件なら有料化しても利用し続けてもいいなとするものとしては、「自分の好みに合うコンテンツがある」が2割程度でトップ、続いて「実店舗に行くよりも少ない手間や費用で視聴できるサービス」が続く。後者は元々「実店舗に行って視聴したいコンテンツがある」からこその発想に至るのであり、結局のところは「有料化されても観たいと思わせるコンテンツが(それなりの数で)存在する」ことが決め手となる。
ビデオデッキをはじめとしたエンタメ向けのツールの話としてはよく使われる切り口だが、それぞれのツールはそのツール自身を保有、利用するために対価を支払うのではなく、そのツールの利用で得られる便益のために対価を支払うものである。極論としてはたった一本のゲームを遊びたくて新しいゲーム機を買う人もいるが、多くは好きなゲームソフトがたくさん遊べ、さらに今後も多数登場しそうだからこそ、そのゲーム機を買おうとする。
音楽・動画サービスの有料・無料問題も、同様に考えれば容易に道理は通るというものだ。
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