SNS利用、日本は12.6%、米国は44.0%…ファックスやパソコン、携帯電話…高齢者の情報機器の利用実態(最新)
2021/11/19 03:11
電話による通話、Faxによる送受信、パソコンや携帯電話、特にスマートフォンを用いたインターネット経由で使用できる多様なサービス。情報機器は最小限の労苦でさまざまな便益を受けられるツールとなるべく日々改良が加えられ、便利なものは急速に普及し、多くの人に活用されるようになる。他方、既存の仕組みを使い慣れた、新しいものを覚えるのを敬遠しがちな高齢者では、それら情報機器の利用を避ける傾向があるとの指摘もされている。今回は内閣府が2021年6月11日に発表した、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査の最新版となる第9回調査結果から、日本だけでなく諸国も合わせ、高齢者における情報機器の利用実態を確認していくことにする(【内閣府:高齢者の生活と意識に関する国際比較調査一覧ページ】)。
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総合的な情報機器の利用実態
今調査の調査要項は先行記事【結婚経験無しの男性高齢者、日本は7.7%・米国は7.8%…日本や諸外国の高齢者における結婚状況(最新)】を参照のこと。
次に示すのは調査各国の高齢者における、情報機器の利用実態について複数回答で尋ねた結果。「ファックスで家族などと連絡」「パソコンの電子メールで家族などと連絡」「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」「インターネットで情報収集・ショッピング」「SNS利用」「ウェブサイトやブログの書き込み・開設・更新」「ネットバンキングや金融取引」「インターネットで公的手続き」「いずれも使わず」それぞれの選択肢で当てはまるものを答えてもらっている。携帯電話は当然従来型携帯電話とスマートフォンの双方を指す。なお項目の並びは調査結果の報告書に準じている。
↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、国別)(2020年)
「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」はどの国でも多用されており、7割台から8割台と高い値を示している。それに多くの国では「インターネットで情報収集・ショッピング」が続く形。ただしスウェーデンでは「ネットバンキングや金融取引」の方が高い値を示している。
国別の動向を見ると、スウェーデンにおける各項目での値の高さが目にとまる。「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」では9割近く、「ネットバンキングや金融取引」では7割を超えている。同国のインターネット技術の浸透ぶりは高齢層にまで深く及んでいる、高齢層も積極的に活用しているようすがよく分かる。
ドイツはイメージとは逆の動き。複数の項目で調査国中最低の値を示している。むしろ技術を駆使したシニア層が大勢いる雰囲気があるのだが。「いずれも使わず」の値も一番高い。
日本の「いずれも使わず」はドイツに次ぐ低い値。特にパソコンが関係する項目で値が低い。「パソコンの電子メールで家族などと連絡」「ネットバンキングや金融取引」「インターネットで公的手続き」などでは他国の値の高さを眺め見るような状態となっている。
注目すべきは「ファックスで家族などと連絡」の値。日本よりむしろアメリカ合衆国の方が高い結果が出ている。日本のファックス好きはよく知られているところなのだが。
日本の詳細は
続いて日本の詳細を見ていく。まずは男女別。
↑ 情報機器の利用状況(日本、60歳以上、複数回答、男女別)(2020年)
「ファックスで家族などと連絡」「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」「SNS利用」などは男女で大きな差異は無い。パソコンを用いる項目では男性が女性の倍ほどの値を示しているが、これは現役時代に就業上利用していた、あるいは趣味などで使っていた習性・環境がそのまま継続しているものと考えられる。女性はむしろ同じような発想で携帯電話の利用率が高そうだが、ウェイトバックの実施の結果、女性はより高齢層で人数比率が高くなる、そして高齢層では身体の衰えから使えない・使わない人が多くなるのが、男女で差異があまり無い要因だろう(男女別々の年齢階層別の値が開示されていれば確認できるが、現状では未公開)。
続いて年齢階層別。
↑ 情報機器の利用状況(日本、60歳以上、複数回答、年齢階層別)(2020年)
年を取るに従い身体の衰えで情報機器が使いにくくなる、さらに情報機器の普及が今世紀に入ってから、特にこの10年ほどで急速に進んだこともあり、現役世代に触れていなかった人、過去の蓄積が多く新たに仕組みを覚えるのを苦手とする、年が上の人ほど、利用率は低いものとなる。
ただし見方を変えると、現時点で70代でも8割近くは携帯電話で家族などと連絡を取り合っていることになる。音声通話によるものがほとんどと推測されるが、携帯電話が高齢層にとっては欠かせない存在となっていることがうかがえる。
ファックスはパソコンや携帯電話と比べると古くから使われていたことに加え、操作が楽なこともあり、歳を経ても利用率の減少はほとんど見られない、むしろ増えている感すらある。
各国シニアの情報機器利用状況
続いて諸国の年齢階層別で利用状況を確認していく…とはいえすべての項目を取り上げるのは雑多に過ぎるので、「インターネットで情報収集・ショッピング」「SNS利用」「いずれも使わず」の3項目に絞ることにする。まずは「インターネットで情報収集・ショッピング」。
↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、「インターネットで情報収集・ショッピング」、国別・年齢階層別)(2020年)
情報先進国ともいえるスウェーデンでは60代で8割超と高い値を示し、70代に入っても6割以上を維持。80歳以上でも3割台後半。ただし80歳以上に限れば、アメリカ合衆国の方がわずかに高い値になっている。
ドイツは上記にある通り、高齢者の情報機器に対する姿勢はひかえめのようで、スウェーデンやアメリカ合衆国と比べると低めの値。しかし日本はすべての年齢階層において、調査諸国中最低の値にとどまっている。
続いて「SNS利用」。
↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、「SNS利用」、国別・年齢階層別)(2020年)"
「SNS利用」でもスウェーデンの高さが目にとまる。70代前半までは過半数、80歳以上でも3割近く。次いでアメリカ合衆国、ドイツ、最後に日本という並びは「インターネットで情報収集・ショッピング」と同じ。80歳以上の値を見ると、スウェーデンやアメリカ合衆国では2割台だが、日本では3.7%でしかないのが実情。もっともドイツも5.4%にとどまっているが。
日本のパソコン利用による値が低めなのは、多分に携帯電話で代替しているからでは、と思わせるのがこちらの値。スウェーデンの群を抜いた高さ、アメリカ合衆国の高めの値、ドイツの低さはパソコンと変わりがないが、日本はスウェーデン・アメリカ合衆国には及ばないものの、ドイツよりはかなり高めの値を示している。とはいえ、60代前半でも14.9%に留まっており、スウェーデンやアメリカ合衆国の3割前後と比べると半分程度でしかない。また60代後半以降は急激に値を落としているのも、両国との違いとして表れている。
最後は「いずれも使わず」。
↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、「いずれも使わず」、国別・年齢階層別)(2020年)
最後は今回例示された選択肢をいずれも使わない人の割合。固定電話や手紙などによる連絡手段を用いることはありえるが、携帯電話もパソコンも、そしてファックスすらも使わないとする人たち。スウェーデンでは80歳以上でも5.9%どまりでさすがな感じだが、アメリカ合衆国では17.6%、日本では31.1%。そして意外にもドイツの32.7%が一番高い。
意外といえば、日本における60代から70代の値は、アメリカ合衆国やドイツと大きな違いはない。70代後半でドイツの値が少々高めかな、という程度。高齢者における情報機器を「いずれも使わず」の実情は、日本だけが極めて多いわけではない次第。
買い物弱者、過疎化、自動車運転の際の判断ミスや発症による事故、一人暮らし世帯問題など、高齢者と生活用品に係わる問題では、情報機器を用いてサポートすべきだとの意見がある。要は、自らが買い物におもむくのが困難、ハイリスクであるのなら、商品を届けてもらえるインターネット通販を活用してもらうべきとするもの。
この考えは一理あるものの、仕組みを利用するのには情報機器の利便性を理解し、利用方法を習得してもらう必要がある。行政や関連業界による積極的な施策、特に利用によりどれだけ便利になるかの啓蒙が求められよう。
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