洋画も邦画も日本のアニメも観たい…有料動画配信サービスの利用者の内情(2016年)(最新)
2016/06/02 05:01
日本映像ソフト協会が2016年4月27日付で公開した白書【映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査】の最新版を基に【映像ソフト市場の推移】で状況の精査を行ったが、今白書では2013年分から新しい要素として「有料動画配信」が加わり、さらに直近の2015年では対象サービスが大幅に拡充している。これは同サービスが誤差などとして無視できる範囲を超える市場規模を有してきたからに他ならない。現状ではいかなる人達が用い、内容の選択をしているのだろうか。その実情を垣間見れるデータをいくつか抽出していくことにする。
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有料動画配信サービス利用者は映像コンテンツに興味津々
先行する記事で詳しく解説しているが、今件「有料動画配信サービス」とはHuluなどが知られている「定額見放題サービス」や「都度課金サービス」、そして【映像プリペイドカード、そんなものもあるのか】で紹介したような「有料動画購入サービス」を対象としている。WOWOWやスカパー!のような有料放送局による自社放送番組の再配信、ポータルサイトの有料付随サービス、動画配信サービスの有料プレミアム(ニコ動の有料版など)などは2013年から2014年にかけては対象外としていたが、直近の2015年以降は計算に含むようにしている。
次に示すのは、映像ソフトの購入者やレンタル利用者と比較した、有料動画配信利用者における、物理メディアの映像ソフトやレンタルの利用性向。例えば「有料動画利用者」の「ソフト購入」項目では35.2%を示しているので、有料動画配信を利用している人の1/3は、映像ソフトも購入していることになる。
↑ 有料コンテンツ利用状況(それぞれの属性内における他属性の利用状況)
ソフト購入者のソフト購入率、レンタル利用者のレンタル利用率、有料動画利用者の有料動画利用率が100%になるのは当然として、有料動画利用者はソフト購入者とレンタル利用率はほぼ同じ、そしてレンタル利用者よりもソフト購入率が高い。仕様的に有料動画配信の仕組みはレンタルに近いところがあるが、完全に補完・シフトしているわけでは無く、むしろ共用していることが分かる。見方を変えれば、映像コンテンツそのものに強い関心を持ち、観賞手段の一つとして有料動画の配信を使っているまでで、他の物理メディアの完全代替手段としては考えていない状況がうかがえる。
ただし「全体」の部分を見れば分かる通り、有料動画の利用者はまだ少数派。調査対象母集団全体に占める比率を算出すると、その実情が良くわかる。
↑ 有料コンテンツ利用状況(2015年)(全体比)
「有料動画利用者はソフト購入者とレンタル利用率はほぼ同じ」ではあるが、その絶対数は2/3程度。「レンタル利用者よりもソフト購入率が高い」のは事実だが絶対数としては半分にも満たない。市場動向を勘案する際には、頭に入れておきたい値には違いない。
有料動画配信は映画と日本のアニメが人気。そして…
次に示すのは、ソフト購入・レンタル利用・有料動画配信それぞれにおける利用者の視聴ジャンル。有料動画配信の回答率順に並べてある。
↑ 有料コンテンツ利用者の視聴ジャンル(複数回答)(2015年)
ソフト購入者は視聴のみのレンタルや有料動画配信利用者と利用性向が大きく異なり、ジャンルが偏る傾向が強い。特に日本の音楽ビデオに対する需要が著しく大きなことが分かる。また、日本のアニメや映画への需要も大きい。
有料動画配信の利用性向はむしろソフトレンタルのそれに近いが(仕様的に近いのも一因)、映画やアニメだけでなく、ドラマ系にも強い傾向がある。ドラマでは海外・日本・アジアを問わず全領域で、ソフト購入やレンタルよりも高い値を示している。ラインアップの問題や取得視聴の気軽さ、さらには一度にまとめて通しで視聴しやすい環境が、ドラマの有料動画視聴利用を底上げしているものと考えられる。特にレンタルの場合、続き物で特定の巻のみ貸出中で途中が観られず、その前の巻で借り入れを止めねばならないといった悲劇が起き得るが、有料動画配信ならそのリスクは無い。観たい時には一気に観ることができる。
ただし市場規模、利用者の絶対数の点では有料動画は小さい市場でしかない。調査対象母集団全体比を算出したのが次のグラフだが、有料動画利用におけるトップの洋画ですら、全体の5%強、レンタルにおける日本のテレビドラマと同レベルの人数でしかない。
↑ 有料コンテンツ利用者の視聴ジャンル(概算期待利用率)(複数回答)(2015年)
無論これはあくまでも人数上の期待値で、該当する人が何回利用するか・購入するかまでは考慮されていない。また消費金額も勘案外。とはいえ、対象となる人数の大まかな把握ができるだけでも、色々と考えさせられるには違いない。
有料動画配信サービスは仕組み的にレンタルソフト、そして電子書籍に近い(電子書籍も現状のシステムでは多分に、「閲読権の半永久的貸与」であり、コンテンツそのものが取得できるわけではない)。音楽のダウンロードサービスとストリーミングサービスとの違いとも類似するが、視聴コンテンツを手元に残せるか、あくまでも視聴の権利のみを得られるかが大きな相違点。
インターネット回線の高速化や利用端末の急速な普及、対応サービスの展開に伴い、有料動画配信サービスはエンターテインメント業界に急速に浸透を続けている。今調査においてもすでに2015年時点で900億円を超える市場規模が確認できるが、上記にある通りレンタルなどとの互換性が高く、しかもメリットが多いこともあり、今後はラインアップの充実やサービスの多様化と共に、さらに規模を拡大していくことになるだろう。
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