日本は7位、自由判定…インターネット上の自由度(最新)
2023/11/30 02:39
21世紀を迎えてからまだ20年強しか経過していないが、インターネットは今世紀に浸透普及した技術の中でも、もっとも大きな変化を世界に与え、これまでにない情報伝達ツールとして歴史に刻まれるに違いない。情報の概念は大きく覆され、価値も意義も一変し、多様な方面に多大な利便と革新をもたらすことになった。それとともに便利極まりないインフラでもあるインターネットに関し、自由に利用できるか否かに注目が集まっている。情報のやり取りは多分に諸刃の剣であり、自由な利用を好まない勢力もあるからだ。今回は国際NGOフリーダム・ハウス(Freedom House)が毎年精査発表しているインターネット上の自由度に関する報告書の最新版「Freedom on the Net 2023」を基に、世界各国のインターネット上の自由度の状況を確認していくことにする(【発表報告書一覧ページ:Reports】)。
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日本のインターネット上の自由度は世界で第7位
フリーダム・ハウス(Freedom House)の行動目的や背景については先行記事【報道の自由度ランキング(2017年)(最新)】を参照のこと。
次以降に示すのは、フリーダム・ハウスが公表した「インターネット上の自由度(Freedom on the Net)」に関する指標。この指標に関する主旨は次の通り。インターネット技術の発達と普及に伴い、現実社会における自由の保護同様、オンライン上での自由も重要となってきた。技術の発展の一形態であり、新様式の情報伝達手段でもあるインターネット上の自由が確保されることで、閉塞感のある社会を打破し、自由と民主主義を支えるエネルギーとなりうるからである。他方、インターネットに係わる技術は諸刃の剣のようなもので、政府や権力者による自由の束縛のツールとしても使われ得るため、インターネットの自由の確保は、社会全体の自由にとっても欠かせないものとなる(ある意味「報道の自由」に近い)。
計測精査対象となるものは大きく3要素。「アクセスのための障害(インフラや経済面や法令面など)」「内容の制約(検閲やフィルタリング、ブロッキング、自主規制など)」「個人の権利への侵害(プライバシーへの監視行為や不法対処など)」。各要素ごとに細かいチェック項目を用意し(合計で100)、チェックに該当する値が大きいほどインターネット上の自由度も高いと判断される。チェック数=スコアが100-70が自由(Free)、69-40がやや自由(Partly Free)、39-0は不自由(Not Free)の判定が下される。
団体内の専門家によって振り分けられたスコアに対し、対象国の専門家や学者、一般市民の代表などによって開催される国際電話会議や検討会において、該当期間内の各種状況や対象国・地域の法令、慣行などとともにスコアの内容の精査と見直し、調整が行われる。その上で修正された値に関する最終確認が団体内でなされることになる。なお各地域の協力者に関しては、該当国で身元が判明する事により何らかの問題が生じる特殊な事例をのぞき、原則として公開されているため、透明性は確保されている。
2009年に予備的調査が始まった同調査では15か国が対象だったが、最新版では70か国までに拡大。これによりインターネット利用者の88%を事実上カバーした調査結果となっている。なお直近分の2022年版では2022年6月から2023年5月が対象。
まずは直近分の2023年におけるスコアの確認。「自由」「やや自由」「不自由」の区分された国ごとに、総合スコアと主要3要素ごとにチェックが入った=加算されたスコアを確認していく。もちろん値が大きい方が、インターネット上の自由度が高く、自由さを覚える国であると認識されている。また、報告書にある地図の色分けによる状況確認も行う。
↑ インターネット上の自由度(高い値ほど自由、自由判定国)(2023年)
↑ インターネット上の自由度(高い値ほど自由、やや自由判定国)(2023年)
↑ インターネット上の自由度(高い値ほど自由、不自由判定国)(2023年)
↑ インターネット上の自由度マップ(緑色…自由、黄色…やや自由、紫色…不自由、灰色…未調査)(2023年)
おおよそアジアから中東地域は不自由、北アメリカ、欧州地域は自由、南アメリカやアフリカはやや自由地域が多い。
具体的な値では、トップはアイスランドの94点、次いでエストニアの93点。以後カナダ、コスタリカ、イギリス、台湾、ジョージア、そしてドイツと日本が続く。今回の序列の限りでは日本は第8位(ドイツと同値)。数ポイントの差は誤差となり得ることを併せ考えると(3項目の合算で1項目につき1ポイントの誤差が生じると試算すれば、合計値では3ポイントまでが誤差となりうるとの考え)、おおよそイギリスからイタリアぐらいまでは日本と同程度のインターネット上の自由が得られていると見てよいだろう。なおアジア太平洋地域で自由判定を受けているのは、台湾と日本、オーストラリアのみである。
インターネット上の自由度で不自由判定を受けた国を見ると、中国やミャンマー、イラン、キューバといった強硬的な政治手法に基づいて国を統治している国や、宗教あるいは時代背景的に情報の自由な伝達が国家運営上望ましくないと判断されている国が多い。
前年からの動き
次に示すのは前回調査となる2022年からのスコアの変化。値が増えていればその国でインターネット上の自由が促進されたことになり、減っていれば閉鎖性、制限が増したことになる。
↑ インターネット上の自由度(高い値ほど自由、自由判定国における前年からの変化)(2023年)
↑ インターネット上の自由度(高い値ほど自由、やや自由判定国における前年からの変化)(2023年)
↑ インターネット上の自由度(高い値ほど自由、不自由判定国における前年からの変化)(2023年)
まず自由判定国だが、前述の通りプラスマイナス3までは誤差の範囲と見なせるため、誤差を超えた悪化・改善の動きは無し。
やや自由判定国ではフィリピンの悪化、スリランカの改善が確認できる。
不自由判定国の動向はといえば、イランで大幅な悪化が確認できる。報告書では「ヘジャブの着け方を理由に風紀警察に拘束されたイラン国籍のクルド人女性マフサ・アミニ氏が亡くなった事件をきっかけに生じた全国的な抗議デモの後、イランの政権はインターネット接続そのものを断続的に制限し、さらにイラン国内で唯一アクセス可能だった国際的なSNSのWhatsAppとInstagramを利用不能とした」とある。
メディア関連の調査結果でもよく問題視される話ではあるが、「インターネット」は本来インフラを主に指すのであり、それを利用して流通するコンテンツは付随的なものに過ぎない。新聞やテレビ、ラジオのようなメディアとは体系的に異なるもの(新聞などはあくまでもそれぞれの媒体で伝えられる中身そのもの、さらにはそれを成す組織までも併せたた、言葉の意味としての主な対象となる)。インターネットと比較するのなら新聞は紙媒体全体や流通ルートまで含めた包括的なもの、テレビならば電波の送受信機や放送局などとの比較が必要。
一方でインターネットは情報の発信が個人ベースで容易にできる、情報の展開の際に国レベルでの許認可がいらないなど、これまでの情報送受信の媒体とは概念が大きく異なる。今後インターネットを利用できる端末の普及率上昇とともに、情報を統制する必要がある国々においては、これまで以上に自由への束縛が強固なものとなっていくだろう。
また今件値は本文中でも触れているが、「報道の自由」に近い面もある。今団体「など」の「報道の自由」に係わる指標との比較をすると、新たな発見が得られるかもしれない。ただし「報道の自由」に関しては2017年分を最後にフリーダム・ハウスでは調査を実施せず、同公式サイトからもその姿を消しているのだが(東ヨーロッパから中央アジアに限定した民主化指数「Nations in Transit」が代わりに調査されている)。
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