米国では善悪に係わる親子の会話はネット上の内容でも積極的に行われている
2016/02/11 05:31
子供は自らの経験の他に、より豊富な経験を持つ大人から様々な知恵や情報を受けて知識として消化吸収し、成長していく。その大人の立場にある最も身近な人物は親に他ならない。技術進歩著しいデジタル系情報に関しても、大人は子供に会話を通じて正しい知識を教え解く必要がある。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2016年1月7日に発表した調査報告書【Parents, Teens and Digital Monitoring】を元に、同国の親子間の会話の内容に関して見ていくことにする。
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ネット上のものか否かを問わず積極的に成される善悪に係わる親子の対話
今調査の調査要項は先行記事の【6割は「子供の閲覧履歴を確認」…米国のデジタル子育て事情】を参考のこと。
冒頭で触れた通り、子供は多くの「世の中の理(ことわり)」を親との対話の中から習得していく。親子間のコミュニケーションはその行為自身(時間の共有、一体感の確認、信頼感の構築)が家族関係の維持に欠かせないが、内容もまた極めて重要に違いない。そこでオンライン関連に限らず、普段保護者と子供との間で交わされがちな会話内容について、普段どの程度語り合っているのかを確認したのが次のグラフ。「良し悪しに関する」とは要するに対照の事案に対する善悪の判断に係わる内容であることを意味する。そのやりとりの中で、子供は語られていることをしてよいものか、良く無いものかを知り、学び、自らの知識としていく。
↑ 良し悪しに関する子供との会話の頻度(内容別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)
報告書でも触れられているが、オンライン関係で有る無しを問わず、提示された要件に関しては、多くの世帯で積極的に対話が成されている。日常生活に係わる話は9割近く、テレビや音楽、本などのエンタメ系の話は8割近くが時々以上の頻度でやりとりされている。
デジタル系の話の場合、ネット上における他人との情報共有では8割強が時々以上、ネット上の情報そのものを観るべきか否かといった善悪の問題でも、ほぼ同率の8割近くが積極的な対話内容として挙げられる。ネットの上での第三者とのかかわり合いでどのような対応をしていくべきか、して良いこと・良くないことについても8割以上。話の内容がどの程度の密度か、そして子供にどの程度効果があるのかまでは分からないが、少なくとも保護者側は積極的に啓蒙しているようだ。
子供の年齢と親の性別では
この「親子における善悪に係わる対話」に関して、複数の切り口でその傾向を見ていくことにする。まずは子供の年齢。「しばしば行う」の回答率を示したものだが、挙げられた5項目すべてにおいて、年下の子供を持つ保護者の方が、高い回答率を示している。
↑ 良し悪しに関する子供との会話の頻度(内容別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)(子供の年齢別、「しばしば」の率)
すべての項目で子供が年下ほど積極的にやりとりがなされている。15歳から17歳になると、10%ポイントから20%ポイントほど低い値に留まる。この動きについて報告書では特に解説は無いが、単にオンライン系の内容だけでなく、日常生活の話に関しても同様の姿勢を見せていることから、単に子供が歳を重ねるに連れて親子の会話の機会が減り、結果として各項目の語る機会が少なくなるだけと考えられる。子供としても成長して独立意欲が高まると、保護者との間で物事の善悪について語り、価値観を押し付けられるのを是としなくなる点もあるのだろう。
他方保護者側では概して母親の方が語りの機会は多い。
↑ 良し悪しに関する子供との会話の頻度(内容別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)(親の性別、「しばしば」の率)
報告書では父母間では子供のデジタル系の行動様式を監視する傾向に変わりはないが、対話頻度は大きな差異が生じていると言及している。その理由は特に語られていないものの、普段から子供に接する時間の差が、そのまま対話率に表れているものと考えられる。日本と事情はさほど変わらないようだ。
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