6割は「子供の閲覧履歴を確認」…米国のデジタル子育て事情

2016/02/01 11:12

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パソコン、さらにはスマートフォンの利用普及が進み、社会の構造が大きく変化を遂げるに連れ、人々の日常生活でもこれまで想定しなかった事柄への対処が求められ、試行錯誤が繰り返されている。子育てもその一つで、好奇心旺盛な子供が手に取り自在に操るネット系ツールに対し、保護者がどのような「しつけ」をしていくか、監視をして時には指導をしていくのか、悩みどころは尽きない。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2016年1月7日に発表した調査報告書【Parents, Teens and Digital Monitoring】を元に、同国のネット系ツールに絡んだ子育て事情の片鱗をかいま見ることにする。



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ウェブ履歴確認、プロフィールチェック…様々な手で子供を監視


今調査は2014年9月25日から10月9日、2015年2月10日から3月16日にかけて、アメリカ合衆国内に住む、13歳から17歳の子供を持つ親に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1060件。各種調整のためのウェイトバックが行われている。

次に示すのは一般的な、保護者が子供に対して行うインターネットに絡んだしつけ、監視の類。例えば「子供のウェブ閲覧履歴を確認」は61%とあるので、13歳から17歳の子供を持つ保護者の6割強は、自分の子供が使っているパソコンのウェブサイトの閲覧履歴を確認していることになる。リスクあるサイトの訪問をしていないか、勉強をするからとアクセスしていたはずの時間に漫画やゲームのページを見ていないかなど、チェック項目は山ほどある。

↑ 次の施策をしているか(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)
↑ 次の施策をしているか(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)

子供のソーシャルメディアアカウントのプロフィールを確認する人は6割。何か致命的な情報漏えいをしていないか、あるいはプロフィールだけでなくその内容まで精査の対象としているかもしれない。携帯電話の普及率も向上している事から、それの通話記録やテキスト(メッセンジャー)の内容確認をする人も5割近くに達している。

他方、より技術的に高度な施策は実行率は低め。フィルタリング機能やブロック機能を用いて子供のウェブ閲覧に制限をかけている人は4割に届かず、携帯電話に類似機能制限を行う人は16%でしかない。また居場所確認のためのGPS機能を用いている人は16%。シンプルな行動でチェックする人は多いものの、テクニカルな方法はあまり実行されていない状況は、日本同様の動きでもある。

これらの施策に関する実働状況は複数回答によるものだが、実際には多くの保護者は1つだけでなく複数の施策を講じている。

↑ 対子供用施策のうちいくつをしているか(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)
↑ 対子供用施策のうちいくつをしているか(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)

何もしていない保護者は16%のみ、1つだけも16%でしかなく、45%は2つか3つと複数、19%は4つか5つと多分な施策を合わせて実行している。中には例示した6つすべてを実行する親も5%いる。子供のインターネットの利用に関し、保護者が何かと心配をしてさまざま手を講じている様子がうかがえる。

親、子供の年齢で変わる施策の実行状況


上記結果は調査対象母集団全体における平均値。親、あるいは子供の年齢によって、その実行状況は大きく変わってくる。

まずは子供の年齢別だが、確認できる限りの値を取りまとめたのが次のグラフ。

↑ 次の施策をしているか(子供の年齢別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)
↑ 次の施策をしているか(子供の年齢別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)

開示されている範囲では全項目で、子供が幼いほど監視をしている保護者の割合は大きなものとなる。自制心やネットリテラシーの度合いは子供が年下ほど保護者も不安になるものであるし、また子供が年上になるに連れて保護者の監視を強く嫌がるケースも増えてくるのだろう。とはいえ、15歳から17歳の子供がいる保護者でも、1/3はパソコンのフィルタリング機能を用いている。

↑ 次の施策をしているか(親の年齢別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)
↑ 次の施策をしているか(親の年齢別)(米国、2015年2月、13-17歳の子供を持つ親)

親の年齢が上になるほど、子供の対ネット施策の実行率は低いものとなる。この傾向について報告書では特に説明は無いが、理由としては2つ、「年上の保護者ほど、抱えている子供の年齢も上になる=規制や監視を嫌がる、不必要となる」「年上の保護者ほど、インターネット系技術の知識に乏しく、規制や監視の必要性を軽んじる、気になるが具体的な方法が分からない」が挙げられる。どちらか片方によるものでは無く、双方が副次的に影響を与えた結果として、このような差異が出るのだろう。



類似調査は日本でも各方面で行われているが、印象としてはその動向に大きな違いは無いように見える。保護者側のITリテラシーの不足、規制と自由な環境による教育のしのぎ合い、保護者が成さねばならないことは多い。

最終的には各世帯毎の環境や教育方針を元にした、ケースバイケースとなるのだが、不安を覚える保護者の立場にある人は、子供と共に学ぶ意気込みで、インターネット界隈に立ち向かい、使いこなしてほしいものだ。


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