家賃手取り比、エンゲル係数、可処分所得…二人以上の勤労世帯の暮らしぶりを3つの指標で確認してみる(2016年)(最新)

2016/01/09 12:51

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先行する記事【働き人が居る二人以上世帯の家賃負担はどれほどか、昔と比べてどのような変化をしているか(2016年)(最新)】で総務省統計局が2015年12月16日に発表した【「2014年全国消費実態調査」】の二人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果の公開値を元に、勤労者が居る二人以上世帯のうち、賃貸住宅住まいをする人の生活のしやすさを、家賃の面から確認した。今回はそれを発展させる形で、家賃が手取りに占める割合と同じように暮らしやすさを推し量る指標として知られているエンゲル係数、そして可処分所得も合わせ、再計算などを行い、状況を確認していく。



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今調査の調査要目は先行する記事【普通乗用車より軽自動車が所有される時代…自動車の車種・世帯種類別普及率(2015年)(最新)】で確認のこと。また今回対象となる世帯に属する勤労者とは、会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている人。無職、会社役員、自由・自営業者などは該当しない。また家賃の可処分所得に占める割合に関しては、賃貸住宅に住んでいる人限定となる。

まずはエンゲル係数。詳しくは【エンゲル係数の推移(家計調査報告(家計収支編))(2015年)(最新)】などで解説しているが、消費支出(世帯を維持するために必要な支出)のうち、食料費の割合。一般的にはこの値が高いほど、生活は厳しいと判断できる。ただし食生活の変化により、厳密性は以前ほどでは無くなっている。

↑ エンゲル係数推移(世帯主年齢階層別、二人以上世帯のうち勤労者世帯)
↑ エンゲル係数推移(世帯主年齢階層別、二人以上世帯のうち勤労者世帯)

世帯主の年齢階層別同子だが、30代後半から40代前半が一つのピークとなる形で上昇。これは世帯主自身の食欲が旺盛になるからではなく、子供を有する世帯の人数の増加、その子供の成長に伴う食費の底上げが主要因。子供が実家を離れ一人暮らしを始める(世帯主年齢が)40代後半以降は減退し、50代で底を打つ。その後は再び増加に転じるが、これは「消費支出そのもののは低下するが食費はさほど変化しない」「むしろ高齢層になると食の制限やこだわり、移動範囲の限定に伴う選択肢の縮小による安値買いが難しくなることで、食費が上昇する」のが原因。

経年別推移だが、大よその世代で最古の値となる1999年以降は、値は減退している。ただし直近の2014年では全年齢階層で上昇しており、注意深く見守る必要がある。もっとも、2009年から2014年にかけての5年間で食文化が大きく変容(具体的にはコンビニやインターネット通販、スーパーによる惣菜、レトルト、インスタント食品の多種多様化など、選択肢の増加。加工技術の進歩)していることもあり、食への傾注が進んだ結果とも見ることができる。

続いて可処分所得。実収入から非消費支出(税金や保険料など)を引いたもの。この金額で日々の生活をやりくりしていくことになる。

↑ 可処分所得推移(世帯主年齢階層別、二人以上世帯のうち勤労者世帯)(円)
↑ 可処分所得推移(世帯主年齢階層別、二人以上世帯のうち勤労者世帯)(円)

これまで複数の記事で触れているが、二人以上・勤労者世帯の平均可処分所得は約40万円。前回調査からは7000円ほどの上昇。世帯主の年齢と共に可処分所得は上昇し、50代がピークとなる。それ以降は勤労者でも再雇用による非常勤などの勤労状態が増えるため、可処分所得も低下する(もっとも生活費のやりくりにおいては、蓄財の切り崩しがあることを覚えおく必要がある)。

調査年による変化を世帯主年齢階層別にみると、30代まではほぼ横ばいで推移、40代から50代までが大きく減少している。特に50代は10万円ほどの下落が見られる。高給取りの勤労者の賃金カットよりはむしろ、早期退職と再雇用に伴う手取りの減少によるところが大きいと見て良いだろう。

最後は賃貸住宅住まいの家賃負担。住居費に関しては、厳密には住宅購入者におけるローン負担も考慮すべきなのだが、家賃支払いは単なる出費でしかないのに対し、購入住宅のローン支払いは先行取得した住宅不動産に対する後払い投資との解釈もできるので、今回考察では除外する。

↑ 家賃の可処分所得に占める割合(世帯主年齢階層別、二人以上世帯のうち勤労者世帯)(円)
↑ 家賃の可処分所得に占める割合(世帯主年齢階層別、二人以上世帯のうち勤労者世帯)(円)

詳しい解説は先行記事「働き人が居る二人以上世帯の家賃負担はどれほどか、昔と比べてどのような変化をしているか」の通りだが、「若年層世帯ほど負担が大きく、歳を経るに連れて負担は軽くなる」「昔と比べて現在に近づくに連れて値は上昇≒賃貸料の負担が大きくなる」傾向が見受けられる。可処分所得のうち家賃が占める比率が増加すれば、それ以外に割ける割合は減る。特に2割近くを占める20代の世帯は、そろばん勘定が大変なのに違いない。



ざっとまとめると、勤労者がいる二人以上世帯では「エンゲル係数からは特記すべき変化は無し」「可処分所得は全年齢階層で減退中、ただし直近2014年では大よそで上昇」「賃貸住宅住まい人は家賃の面で厳しさアップ」となる。単身世帯同様、二人以上世帯でも経済上の重圧は増加していると見てもよいだろう。


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