働き人が居る二人以上世帯の家賃負担はどれほどか、昔と比べてどのような変化をしているか(2016年)(最新)

2016/01/08 10:45

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賃貸住宅物件を探す際の指針の一つとして「家賃は収入の何割程度まで」との文言がある。具体的な値はいくつかの説があるが、現状では約2割が上限で、それ以上は家賃負担で日常生活が厳しくなるとの話をよく見聞きする。見方を変えれば家賃を5倍することで、その賃貸住宅に住むための適正収入が算出できることになる。今回は総務省統計局が2015年12月14日に発表した【「2014年全国消費実態調査」】のうち二人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果の公開値を元に、二人以上世帯のうち世帯主が勤労者で、賃貸住宅に住んでいる世帯における、家賃負担の推移を確認していくことにする。



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金額そのものも実収入費も増加中の家賃


今調査の調査要目は先行する記事【普通乗用車より軽自動車が所有される時代…自動車の車種・世帯種類別普及率(2015年)(最新)】で確認のこと。

今回対象となる属性は、二人以上世帯のうち世帯主=本人が勤労者である、具体的には会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯。そしてそのうちさらに、持ち家や居候では無く、賃貸住宅に住んでいる世帯を対象にする(原則家賃を支払っている人。ただし1999年分は家賃・地代を払っている人)。

その賃貸住宅住まいの世帯における、家賃の対収入費の算出だが、世間一般に語られている「収入」はいくつかの解釈ができる。今回はまず実収入(勤め先からの収入と、財産から得られた収入)を母数とする。サラリーマン世帯ならば源泉徴収や保険料などが引かれる前の、名目上の給料。

↑ 家賃(概算、円)(二人以上世帯のうち勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)
↑ 家賃(概算、円)(二人以上世帯のうち勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)

↑ 家賃の実収入に占める割合(二人以上世帯のうち勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)
↑ 家賃の実収入に占める割合(二人以上世帯のうち勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)

家賃そのものが上昇していることもあるが、大よその属性で経年と共に、家賃の実収入に占める割合は増加している。該当属性全体で1999年時点では8.6%だったものが、直近2014年では10.9%にまで上昇している。この値は収入に占める家賃負担の度合いであり、家賃は食費などのような調整がつきにくく、実質的に税金などの非消費支出と同列と解釈できる出費であることから、値の上昇≒生活が苦しくなっていることがうかがえる。

世帯主の年齢階層別でみると、定年退職後の世帯がほとんどとなる65歳以上の層で直近の値が落ちているが、それ以外はほぼ一様に増加している。二人以上の勤労者世帯の家賃負担が年々生活の負担として重くのしかかるようになっている状況が把握できる(ちなみに該当賃貸住宅の面積はほぼ変わりがない、一部ではむしろ減少しているので、「より広い住宅を選ぶようになったから家賃もアップした」わけでは無い)。

また実収入も多少は変化しているが、大よその「家賃の実収入に占める割合」の増加は、家賃の増加によるものであることが分かる。無論面積はともかく設備や居住地域環境など、借りている住宅が同じ水準では無いことから、ライフスタイルの向上を求める動きも、平均家賃の上昇≒家賃負担の増加≒生活の苦しさに影響を与えていると考えられる。残念ながら生活様式の改善状況までは、今調査では確認はできない。

「2割以上はキツい」との話を元にすれば、現状ではどの年齢階層世帯も合格ラインにある。ただし20代はややキツい状況にあるようだ。

可処分所得で精査をすると


他方、「家賃は収入の2割まで」の算出に用いる収入は実収入では無く可処分所得である、との説も見受けられる。実収入のうち非消費支出(税金や保険料)は半強制的に徴収されるため、本人自身がコントロールできる額ではないからである。世間一般に言われる「手取り」は、この可処分所得を意味するため、この額を元に算出すべきとの話であり、説得力のある説明には違いない。

そこで可処分所得を元に、同様の計算を行った結果が次のグラフ。当然だが実収入で算出した場合と比べ、値そのものが大きく底上げされている。

↑ 家賃の可処分所得に占める割合(二人以上世帯のうち勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)
↑ 家賃の可処分所得に占める割合(二人以上世帯のうち勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)

2割超が危険領域とすると、実収入でもやや高めな値が計上され懸念視されていた20代が2割にギリギリ届かないレベルとなっている。このままではあと10年ぐらいで2割を超える属性が登場するかもしれない。

これらの値はあくまでも指標の一つで、経済状況、家計のお財布事情のすべてを表しているわけでは無い。例えばインターネット接続無料の条件の賃貸住宅なら、家賃負担がある程度高くともその分通信料は削減できるため、家計はいくぶん楽になる。

他方、二人以上の勤労者世帯で賃貸住宅暮らしをしている人にとって、家賃負担は大よそ年々大きなものとなっていることが、改めて確認できたこともまた事実ではある。


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