29歳以下では貯蓄283.8万円…若者夫婦勤労世帯のお財布事情の詳細(最新)
2021/09/02 03:26
人口構成比や就業構造の変化に伴い、社会的に軽んじられているとの認識が自他ともに大きくなりつつある若年層。その認識は単身世帯だけでなく、二人以上世帯(おおよそ夫婦世帯)でも共有されるものとなっている。今回は総務省統計局が2021年5月18日まで発表した【2019年全国家計構造調査】の公開値を基に、二人以上世帯のうち勤労者世帯(世帯主が勤労者で34歳までの世帯)における、平均的なライフスタイルの現状を、主にお金の面から確認していく。
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1か月のお金の勘定の中身
今調査の調査要目は先行記事【食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)】を参照のこと。また勤労者とは今調査においては世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている人を意味する。ただし世帯主が社長、取締役、理事など会社団体の役員である世帯は「勤労者以外の世帯」となる。また個人営業の人や自由業者、そして無職の人は勤労者には該当しない。
まずは1か月におけるお金のやりくりの内容を見ていくことにする。実収入(勤め先収入や事業収入、内職収入、財産収入、社会保障給付など実質的に資産の増加となる収入を集めた収入)と、実支出(税金や社会保険料などの支出を集めた「非消費支出」と、生活費を意味する「消費支出」、黒字(実収入から実支出を引いたもの)の合計)の内訳を、具体的金額と比率の面からそれぞれ確認する。また、実収入から非消費支出を引いたものが可処分所得となるが、可処分所得における黒字の割合を黒字率と呼んでいる。もちろんこの値が高い方が、生活面で余裕が生じていると見てよい。
それぞれの関係は次の通り。
・実支出=非消費支出+消費支出
・実収入=実支出+黒字
・可処分所得=実収入−非消費支出
・黒字=可処分所得−消費支出
=実収入−(消費支出+非消費支出)
・勤め先収入+その他収入=非消費支出+消費支出+黒字
=非消費支出+可処分所得
普段使いなれない、あるいは見聞きしているが概念的にもやっとしたレベルでしか認識できていない言葉が並ぶが、覚えておいて損はない。
まずは世帯主の年齢が29歳以下の世帯について。
↑ 家計収支の構成(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢29歳以下、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢29歳以下、比率)(2019年)
↑ 家計収支の構成(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢29歳以下、支出のみ、円)(2019年)
非消費支出は14.6%。住居費で10.6%、食費で12.4%と比較的大きな割合を示し、交通・通品費も負担が大きい。食費は月に5万円強で、家賃は平均ではあるが4万円台(低めに見えるがこれは持家率が相応に高いため)。保健医療には1万円ほどかかっており、教養娯楽には2万円強が費やされている。そして貯蓄などに回される黒字は14万円近く。
30代前半になると大きく金額が底上げされる。
↑ 家計収支の構成(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢30-34歳、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢30-34歳、比率)(2019年)
↑ 家計収支の構成(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢30-34歳、支出のみ、円)(2019年)
実収入は5万円ほど上乗せされる。非消費支出をはじめ、食費や交通・通信費、教育費などが大きく増加しているが、これは子供の平均数が増えているのが原因。他方、住居費は逆に減っているが、上記言及の通り、持家率の増加に伴い、家賃支出の負担が減っているからに他ならない。
一か月の平均食費は6万円強。教育は7000円近く。光熱・水道は1万6000円ほど。黒字額は15万円ぐらいとなる。
貯蓄の実情
最後は貯蓄状況。あくまでも平均額ではあるが、若年夫婦世帯などの「貯金箱の中身」を把握できる。
↑ 貯蓄現在高詳細(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別、万円)(2019年)
世帯主が20歳までは283.8万円、30代前半は522.5万円。5割強ほどが普通預貯金で、定期や保険もそこそこ。比較的バランスの取れた配分をしている。ただし有価証券の類は少なめで、30歳前半でも50万円に届かない。日本は投資性向の低さで知られているが、若年層において顕著であるようだ(無論、投資は余剰資金で行うものが原則である以上、余剰資金が少ないことの表れでもあるのだが)。
今件はあくまでも平均的な若年二人以上世帯のお財布事情であり、実情はその立ち位置によって大きな違いを見せる。すべての若年層の夫婦世帯などがこのような金銭事情にあるとは限らないことに留意が必要。
他方、生活上の困難さが指摘される若年層の夫婦世帯などにおける、金銭面での実情を知る上で、よい指標となることに違いはあるまい。
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