若者と高齢層、大きく異なる「老後の生活資金源」構想(最新)
2024/04/02 02:26
企業の役員や相談役など相応の地位に就く、あるいは新たな財を生み出す資産を取得していれば話は別だが、多くの人は年を取るに連れて就業年齢時と比べて能力が衰えることから、就業収入を得難くなり、生活の糧をこれまでとは違った手法で得ることを考える必要がある。人生設計、ライフプランなどとしてよく知られている、自分自身の一生におけるそろばん勘定をする際には、欠かせない考え方である。今回は金融広報中央委員会の「知るぽると」が発表した「家計の金融行動に関する世論調査」の最新版公開値から、世帯の種類別と世帯主の年齢階層別における老後の生活資金源に関する考え方の相違を見ていくことにする(【家計の金融行動に関する世論調査】)。
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二人以上世帯では若年層ほど低い公的年金への信頼度、将来働く意欲は高い
「家計の金融行動に関する世論調査」は現時点で詳細値も合わせ、直近値として2023年分までが公開されているので、その値を用いて精査を行う。全体に関する概要的な分析は【単身世帯と二人以上世帯で大きく異なる老後の生活費の目当て(最新)】を参照のこと。
まずは二人以上世帯における世帯主の年齢階層別・老後における生活資金源(の思惑)。場合によってはすでに老後に突入している人もいるため、「老後の想定」以外に「すでにその資金源で生活している」人も含まれる。特に高齢層は、現状を示している場合が多いと見てよい。なお項目の並びは公開値のままとしている。
↑ 老後における生活資金源(二人以上世帯、3つまでの複数回答、世帯主年齢階層別)(2023年)
おおよそ公的年金を頼る人がもっとも多いように見えるが、高齢者ほどその値が高い。見方を変えると若年層ほど、公的年金への期待ができないとの意識を持っていることになる(60-70代の場合は身体の衰えから就業収入を望めない場合もあるだろう)。実際、40代までは公的年金よりも就業収入の値の方が高くなっている。一方、大体若年層ほど就業収入の値が高く(40代がピークでそれ以上は漸減)、公的年金以外の手立てで老後を支えていくとの意思が見えてくる。
金融資産の取り崩しはおおよそ年齢が上になるに連れて値も高くなる。20代でとりわけ低めの値が出ているのは、まだ(ほとんど)具体的な蓄財をしていないからだろう。逆に60代以降で一段高い値が出ているのは、実際に取り崩しをしている(せざるを得ない)人がそれなりにいるからだと思われる。
気になるのは、絶対値としては少数だが、公的援助、具体的には生活保護などと回答する事例が一定率で確認できること。今件は「主な生活資金源」として3つまでを挙げてもらった結果であることから、例えば「二人以上世帯の20代の8.8%は、自分の老後において生活保護などを受けることを前提として考えている」ことになる。
調査結果の公開値には多様な属性の回答値が収録されているが、そのうち高齢年金生活者に近い属性、具体的には「(世帯の)就業者数別」で就業者無しの世帯における動向を確認したのが次のグラフ。
↑ 老後における生活資金源(二人以上世帯、3つまでの複数回答、「就業者数別」で就業者無し)(2023年)
おおよそ年金生活による夫婦世帯の生活資金源の内情を推し量れるが、公的年金がもっとも多く、次いで金融資産の取り崩しと企業・個人年金・保険金がほぼ同率で続く。利子配当や不動産収入、子供などからの援助は、少なくとも主要な3資金源として挙げる人は少数。公的援助は4.2%となっている。
単身世帯でも若年層の公的年金への不信感は変わらず
単身世帯の動向は次の通り。
↑ 老後における生活資金源(単身世帯、3つまでの複数回答、世帯主年齢階層別)(2023年)
多くは二人以上世帯と変わらないものの、公的年金への信頼感はより低いものとなっている。さらに企業・個人年金・保険金への期待度も二人以上世帯と比べると低め。金融資産の取り崩しはあまり変わらず。
気になるのは公的援助の回答値の高さ。単身世帯では40-60代で1割超えの値を示している。老後の生活資金源に係わる将来設計で、すでに生活保護を念頭に置いている人が多くの世代にわたって存在している状況は、憂慮すべき話に違いない。
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