年齢で大きく変わる「近くに無いと困る」な施設
2015/10/27 14:56
先行記事【コンビニ、スーパー、病院、郵便局…日々の生活の中で徒歩や自転車で行ける距離には何が必要だろうか】やその補足記事【トップは病院...総合的な「日常生活を営む上で必要な施設」と認識されているのは!?】で、内閣府が2015年10月19日に発表した国土形成計画の推進に関する世論調査【国土形成計画の推進に関する世論調査】の内容をもとに、日常生活を営む上で必要だと認識されている施設・サービス拠点の確認をした。今回はそれらの内容を手掛かりとし、年齢階層によって必要とされる施設にどれほどの違いが生じるのかを精査していく。
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今調査の調査要件は先行記事【「自分の周りで人が減っていたり高齢化が進んでいる」85%が実感、最大理由は「周囲にお年寄りが増えた」】で確認のこと。
冒頭で言及の通り、日常生活を営む上で必要だと考えている施設について、徒歩や自転車で到達できる、それ以外で電車・自動車・バスで30分以内に到達できる距離にあることを望むものを検証した。これらを合算することで「近場にあってほしい施設」「ちょっと徒労してもよいので存在してほしい施設」「日常生活の上では特に必要性を覚えない、もっと遠くにあっても良い施設」に仕切り分けができる。調査対象母集団全体では次のような結果になった。
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、2015年8月)(再録)
これを世代別に仕切り分け直して確認し、本来若年層が住民の中心として構成されていた生活圏における各施設の配置状況が、高齢者中心となった場合、どのような過不足感を生じさせるのか、眺め見ていく。
まずは高齢層に該当する60代、70歳以上について。次以降のグラフ内項目の並びは、60代における「近場にあってほしい施設」「ちょっと徒労してもよいので存在してほしい施設」の合算値の高い順にしてある。
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、2015年8月)(60代)
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、2015年8月)(70歳以上)
60代でもっとも重要視される生活施設は日用品などを取り扱うスーパー。徒歩や自転車で行ける距離でおいてすら3/4に達している。この「徒歩や自転車」はあくまでも該当する世代基準、つまり全体と比べれば随分と狭い範囲であることに留意しなければならない。
次いで病院、銀行、郵便局と続き、コンビニや小規模小売店舗はその次となる。それ以降のガソリンスタンドや行政機関の窓口などは一段低い値を示し、まずは上位5種類の施設を求めていることが分かる。特にスーパーと病院は必要不可欠、徒歩や自転車で行ける距離に限れば、病院以上にコンビニの需要が大きい。
70歳以上でも上位5種類への需要の高さは変わらない。むしろそれより下の順位の施設との差が大きくなっている。ただし診療所や介護・福祉施設の値が60代よりも増加しており、実情に合わせた需要の変化が生じているのが分かる。またガソリンスタンドが大きく減少しているのは、自分で運転する・できる人が減っているからだろう。
高齢層では各種教育機関への需要が低いのも特徴的。自分自身が足を運ぶはずもなく、子供もすでに通う歳では無い、孫は年齢相応かもしれないが、同居・近居をしているわけでもないことを考えれば、必要性を覚えないのは当然の話。
これが20代になると大きな変化を見せる。前述の通り施設名項目の並びは、60代の需要順になっていることに注意。
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、2015年8月)(20代)
スーパーの人気度に変わりはないが、コンビニの需要の高さ、ガソリンスタンドの必要性、小中学校や保育園などの子育て支援施設、各種娯楽施設の必要性など、最上級で必要ではないものの、次点レベルで求められている施設の需要に大きな違いが生じているのが分かる。
例えばある地域における公共施設・サービス機関が若年層向けの配置となっていれば、地域住民が高齢化するにつれ、不便さを覚える人が増え、不満の声が高まる。さらに今件はそれぞれの回答者における「徒歩や自転車」の距離であり、高齢化すればその距離は短くなる(自転車に乗れず歩行のみとなるケースも考えねばならない)、需要の条件はさらに厳しくなる。
一方で、それら高齢層の意見に従った状況改善が成されれば、今度は若年層にとって不便さを強く感じるようになる。じわりと「若者の該当地域離れ」が加速していく。人口が減れば商用圏としての価値が減るため、私企業、そして公的機関も撤退を余儀なくされてしまう。高齢化に伴う過疎化の構図が透けて見えるようでもある。
参考データとして、同じく20代・60代・70代以上に厳選し、徒歩や自転車でいける距離に存在してほしい施設の需要度をまとめたグラフを生成しておく。
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(自宅から徒歩や自転車で行ける範囲、複数回答、2015年8月)
上位5施設の需要の高さはどの年齢階層でも変わらないものの、若年層の郵便局への需要の低さや、スーパーよりもコンビニを好む傾向、教育機関が身近に存在してほしいか否かの格差が良くわかる形となっている。このキャップがいわゆる地域問題における着火点となることが、今後は今まで以上に増加してくるだろう。対人商売、行政機関にとって、頭の痛い問題に違いない。
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