老後に向けた引越し、人気先は地方都市・理由は気候や自然に恵まれているから

2015/10/27 11:33

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先行記事【「このままずっと住み続けたい」8割近くが希望】において、内閣府が2015年10月19日に発表した国土形成計画の推進に関する世論調査【国土形成計画の推進に関する世論調査】の内容をもとに、老後に向けて引越しをしたいか、現居住地に留まり生活を続けたいかを尋ねたところ、移住をしたい人は2割近くであることを確認した。それではその人たちはどのような地域への引越しを求め、何を理由に引越ししたいと考えているのだろうか。今回はその点を確認していく。



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引越しするなら地方都市


今調査の調査要件は先行記事【「自分の周りで人が減っていたり高齢化が進んでいる」85%が実感、最大理由は「周囲にお年寄りが増えた」】参照のこと。

冒頭での解説の通り、自身の高齢化に従い、より生活しやすいと考える場所への移住を考えている人は2割近く。

↑ 老後に向けた移住の意向の有無(2015年8月)(再録)
↑ 老後に向けた移住の意向の有無(2015年8月)(再録)

そこでこの2割近くの人に、老後に備えてどのような場所に引越しをしたいのかを尋ねたところ、一番の人気は地方都市部となった。大よそ5割強の人が望んでいる。

↑ 希望する移住先(老後に向けた移住の意向のある人限定)(2015年8月)
↑ 希望する移住先(老後に向けた移住の意向のある人限定)(2015年8月)

大都市部は14.0%に留まっている。また自然が豊かだとのイメージがある農産漁村地域は2割。海外は1割にも満たない。男女別では女性の方が都市部への移住希望度が強く、合わせて約3/4となっている。

世代別ではややぶれがあるが、大よそ歳を経るに連れて都市部への移住希望が強くなり、農山漁村への移住を拒むようになる。特に70歳以上は4割近くが大都市部を望んでおり、各種商業施設・公共機関利用を重視する観点で、便宜性の高い大都市部を望んでいる実態が見えてくる。

現在居住地域別では「都市部」の区切りではあまり違いはないものの、東京都区部に現住している人は大都市部への移住を望む人が多い。今項目は現在住んでいる場所から移住を望む人に限った話なので、東京都区部のより人口密集地域や、例えば名古屋や大阪といった別の地域の大都市部への引越しを望んでいるのかもしれない。

ともあれ、老後に向けて引越しを考えている人の多くは、都市部、しかも単なる都市ではなく、地方都市への移住を望んでいることに違いは無い。それなりに便宜性が高い地域を希望するが、同時に完全な都心では無く、そこそこの自然も確保されているであろう地方都市を望んでいると考えれば良いのだろうか。

自然環境と医療、利便性の両立


利便性とそこそこの自然、その両立を求めているであろうことは、次の項目で具体的に確認できる。これは移住をしたいと考えている理由を選択肢の中から選んでもらったものだが、最上位には気候や自然環境に恵まれた場所、次点として医療・介護環境が整備されたところ、そして買い物などの利便性の高いところが上位に入っている。

↑ 移住をしたいと思う理由(老後に向けた移住の意向のある人限定)(複数回答、2015年8月)
↑ 移住をしたいと思う理由(老後に向けた移住の意向のある人限定)(複数回答、2015年8月)

心身共に安らぎを得られるであろう自然環境の良いところであると同時に、医療関連でも不安を覚えるところがなく、さらに買い物などの便宜性でも心配しなくて済む場所。前項目の選択肢の中では地方都市がもっとも当てはまるであろう。

男女別動向を見ると、男性と女性の老後に対する意気込み、心構えの違いが透けて見える。男性は気候・自然、治安、買い物などの便宜性、病院医療の順だが、女性は病院医療、気候・自然、買い物、そして家族や親せきがそばにいる。男性は個人ベースでの楽しみが優先され、女性は実用的な面での便宜性や、他人との交流をメインに据えている感はある。特に病院医療や買い物などの便宜性、そして家族などとの距離関係で、男女の差異が大きく出ており、「老後」の生活に対するイメージの違いがよく分かる結果となっている。

「現在の」居住地域別では現状の生活に対する不安が反映される形となっているのが興味深い。

↑ 移住をしたいと思う理由(老後に向けた移住の意向のある人限定)(複数回答、2015年8月)(居住地域別)
↑ 移住をしたいと思う理由(老後に向けた移住の意向のある人限定)(複数回答、2015年8月)(居住地域別)

東京都区部に現在住んでいる人は、特に気候や自然に恵まれた場所、物価や家賃などの生計費が安いところ、治安の良さ、新しい人間環境の構築、地域貢献活動の値が、他地域よりも高い。逆に考えれば現在住んでいる場所、すなわち東京都区部では、これらの項目に関してあまり満足していないことがうかがえる。

他方、地方に至るにつれて、自然環境や生計費の安さへの注力は減り、利便性の高さや医療設備の充実をより一層望むようになる。現状では満足のいくサービスが得られないであろうことを想像しての結果だろう。


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