若者の投票率を上げるのには「インターネットで投票可能に」が最多

2015/10/22 08:14

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元々若年層の人数が絶対数だけでなく対総人口比でも減少しているのに加え、中堅層以降と比べ若年層の選挙の投票率が低いことを受けて、若年層の声が政治に届きにくいとの意見が少なくない。特に若年層の投票率の低迷は顕著な動きが確認でき、いかにこの値を底上げしていくかが政治の上での課題となっている。今回は連合が2015年8月3日に発表した、若者の関心と政治や選挙に対する意識に関する調査の結果から、どのような手立てを講じれば若年層の選挙投票率が上昇し得るのかを見ていくことにする(【発表リリース:若者の関心と政治や選挙に対する意識に関する調査 [2015年8月3日掲載]】)。



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今調査は2015年7月4日から12日に渡って15歳から23歳の男女を対象にインターネット経由で行われたもの。有効回答数は1000件で男女比は1対1。年齢別区分は1歳区切りでほぼ均等割り当て。調査実施機関はネットエイジア。

【若年の意見力は団塊の三分の一にも満たず!? 投票者ピラミッド(第47回衆議院選挙版)】などでも触れているが、国政選挙・地方選挙を問わず、昨今の選挙における投票率では、若年層ほど低く、高齢層ほど高い投票率を示している。時間に対するウェイトの違いだけでなく、投票行動に対する認識、政治参加への諦め度合の違いが具体的数字となって表れているとの解釈もある。

↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票状況(概算総数、万人)(性別・年齢階層別有権者数と投票数、投票状況調査地区における結果)(再録)
↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票状況(概算総数、万人)(性別・年齢階層別有権者数と投票数、投票状況調査地区における結果)(再録)

それでは若年層はどのような施策が成されれば、投票率が上がると考えているのだろうか。質問文は「選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか」となっており、回答者自身の意見か、それとも若年層全体としての状況を考えてもらったのかまでの判断はできないものの、多分に回答者自身の意見が反映されているものと考えて良い。

↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15-23歳)
↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15-23歳)

群を抜く形で上位についているのは「インターネットで投票ができたら」で54.6%。すでにインターネット上での選挙活動は事実上解禁されているが、インターネットを用いた投票そのものはまだ不可能。確定申告や先日の国勢調査のように、公的機関が絡んだ提出活動でもインターネット経由で可能な事例が増えていることもあり、期待はさらに高まりを見せている。

次いで高い値を示したのは「もっと候補者の比較がしやすければ」で26.7%。「もっと政治について知れる・学べる機会があれば」の25.7%が続いている。インターネットによる選挙活動が解禁されて以降、さまざまなサービスが展開され、これらの需要に応える情報・機能提供を行っているが、まだまだ望みのレベルには達していないようだ。もっとも候補者の「比較」に関しては、家電製品や食品などのように、単純に数字化して比較できる要素が少ないこともあり、比較機能を提供する際の工夫が難しいのも事実ではある(ゲームのように内部的な数字パラメータがあるわけでは無い。また数量化できる面のみでの判断はリスクが高い)。

候補者を選びにくい、自分が投票すべき候補者が見つからないとの視点で選択肢を見直すと、「もっと候補者の比較がしやすければ」以外に「もっと候補者を知れる機会があれば」「もっと自分と似た考えの候補者が見つけやすければ」なども事実上は同じ趣旨と見ても良い。

選挙の現状、制度に不満を持つ人も少なからずいる。「インターネットで投票ができれば」以外」でも「期日前投票が今よりも簡単にできたら」「一票の格差が改善されたら」「出先で投票ができたら」「深夜や早朝などの投票が今よりも簡単にできたら」などがそれなりの同意率を示している。投票証明書などと連動させた地域サービスが話題に登っているが、「投票すると割引サービスが受けられるなどのメリットがあれば」は16.0%となっている。

選挙制度そのものの大変革が前提となるが、選択肢には「マイナス一票など、落選させたい候補者が選べたら」も確認できる。こちらの同意率は15.0%。少なくとも現状では落選行動的な意図に同意を示す人はさほど多くは無い。

これを回答者の立ち位置別で仕切り分けしたのが次のグラフ。

↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15-23歳)(学校種類別)
↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15-23歳)(学校種類別)

先行する記事におけるニュース情報源に関する設問では、大学生が多様なツールを用いている実情が確認できた。今件でも他の学校種類と比べて大学生の意欲の高さが見受けられる。

一方で一票の格差是正や候補者を知る機会の増加、自分と似た考えの候補者が容易に検索できるようになるなど、複数項目で高校生が最多回答率を示している項目も確認できる。8月の公職選挙法改正により、今後の選挙で投票権を得る年齢の下限が20歳から18歳に引き下げられることで新たに生じる「高校生の有権者」が、どのような政治的関心を抱いているか、投票の際に何を求めているかが透けて見えるようでもある。

若年層、特に新たな有権者となる18歳・19歳の人達に対し、どのような施策を打てば投票率を高めることができるか。今からその需要を探る必要は極めて高い。今件調査からはその一端を垣間見ることができるに違いない。


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