「近居」は浸透しているのか…「高齢者同士の夫婦世帯や単身高齢者世帯」と「子供世帯」との距離関係(2015年)(最新)

2015/10/19 15:31

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高齢者(65歳以上)のみの夫婦世帯や単身高齢者世帯のように、高齢者のみで構成される世帯に対し、その子供がどのような居住上の距離関係を持つかについて、注目が集まっている。かつては複数世代世帯として、高齢者とその子供、さらにはその子供の子供(高齢者から見れば孫)の三世帯が同居するスタイルも当たり前のものだったが、社会観の変化などに伴い核家族化が進み、高齢者世帯とその子供世帯は離れて暮らすことが常となった。しかし高齢者数の増大や高齢者区分におけるさらなる高齢化などを受け、また人間関係の見直し的世相もあり、同居はしないものの同一敷地内に別々の住宅を建てたり一つの住宅を二つの居住領域に区分する「二世帯住宅」や、すぐに足を運べるような近距離に住まう「近居」の様式が注目を集め、利用するケースが増えているとの指摘もある。今回は総務省統計局が2015年2月26日に発表した、2013年10月1日時点における住宅・土地統計調査の確定集計結果から、この「近居」の実情と経年変化の動向を確認していくことにする(【発表ページ:平成25年住宅・土地統計調査】)。



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今調査の調査要項は先行掲載した記事【住宅の空き家率は13.5%で過去最高に】を参考のこと。

平成25年住宅・土地統計調査の概要報告書では、この「近居」動向に関し、2つの事例「高齢単身普通世帯」「高齢者のいる夫婦のみの普通世帯」の具体的距離の実情を、直近調査の2013年分と1つ前の調査2008年分の結果から算出している。今回はそれに習い、「高齢単身者世帯」と、「夫婦とも65歳以上の高齢者世帯」について、子供の居住地との距離の実情を、2003年・2008年・2013年の変移で見ていくことにする。

1998年の値も取得はできるのだが、距離に係わる仕切り分けがそれ以降の調査とは異なり比較ができないため、今回は対象外とする。また、完全な同居以外にいわゆる二世帯住宅的なものの計測も以前はなされていたが、直近の2013年分はそれらをすべてまとめてしまっているので、過去の分も合わせた上で必要な値を算出している。

↑ 単身高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係
↑ 単身高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係

↑ 夫婦とも65歳以上の高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係
↑ 夫婦とも65歳以上の高齢世帯における、自分と子供の住んでいる場所との距離関係

まず概要的には「同居世帯は減少」「片道1時間未満の距離は増加」「片道1時間以上は減少」「子は居ない世帯は減少」の動きは両種類世帯で起きていることが確認できる。同居が減り、近居が増え、遠居(とでも呼ぶのだろうか)は減っている。ちなみに(徒歩で)片道1時間とは不動産界隈の表現では4.8キロ程度と定められているので、直近では(同居も含め)高齢者のみ夫婦世帯では6割、単身高齢者世帯では5割が、大よそ5キロ圏内に子供の住宅が存在していることになる。

「近居」の定義は法的な形でのものは無く、自治体や不動産企業によってまちまち。【「3世代同居の住宅政策」とあるけれどよく読むと......】で紹介したURでは両世帯の属する集合住宅のそれぞれの近しい場所の端から端までの距離が2キロ以内と定義している。東京都千代田区では近居の概念に近い居住スタイルへの補助制度【次世代育成住宅助成】に関して同一区内での居住を前提としている。また新潟市では【子育て支援 健幸すまいリフォーム助成事業】の一環として「親子近居世帯」の企画があり、条件として両世帯間の直線距離が1キロ以内との設定を提示している。

「住宅・土地統計調査」では近居の定義はしていないが、仕切り分けや概要報告書の文言から察するに片道で徒歩1時間未満と見なすと、上記の通り直近では(同居も含め)高齢者のみ世帯では6割、単身高齢者世帯では5割が近居に該当することとなる。またより厳密に片道15分未満(距離ならば大よそ1.2キロメートル)とした場合は、(同居も含め)高齢者のみ夫婦世帯では3割、単身高齢者世帯では1/4が近居に該当する。

国や自治体、企業もライフスタイルの実情を見据え、高齢者世帯とその子供の同居が今後も少なくなることは必然であると認識した上で、社会福祉面ではその代替として、該当世帯自身の要望として近居の需要が増えていることを踏まえ、さまざまな近居を促す施策を打ち出していくものと考えられる。それに連れて近居的な距離感を置いた高齢者世帯とその子供の世帯はさらに増加していくことになるだろう。

あるいは将来的に、高齢者世帯とその子供世帯それぞれが必要とするインフラの違いを考慮し、高齢者専用集合住宅とその子供専用集合住宅について、それぞれを一定距離話す形で提供する住宅計画も施行されるかもしれない。


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